あの子の様子が違う件
こういうとこ来ると碌なことがないらしい。
背に庇われながら、来ていたらしいガラテアの王太子夫妻を眺めていると、私を見てルイーゼさんが「その子があなたを誑かしたのね!」とかやってて首を傾げた。
え。夫にしたのはそちらの王だが。
「他所の王族の誕生日パーティーでこれって一体どんな教育を受けているのかしら」
扇を口元で広げて小声で思わず口に出す。メーティスはしれっと「そもそもそこまで良い教育を受けていないんじゃないかな。彼女は努力が嫌いだからね」とこちらも小声ではあるが刺々しく言い放った。
後ろのクロード殿下はむしろルイーゼさんにキレている。
あれ?様子が違うぞ?
「ロイ、下がらせろ」
「だが!」
「お前の主人は私とルイーゼ、どちらだ」
これ、おそらくロイとやらにもキレている。そこそこ冷静な分なんか怖いなぁ。
メーティスの腕を静かに引くと、大丈夫だよ、というように私の手を握ってくれる。メーティスも少し困惑していた。ルイーゼさんにやたらめったと甘いクロード殿下が無理矢理に下がらせたのだ。今までにはなかったことである。
「すまなかった。ノインシュタイン公爵、公爵夫人。あれは今錯乱していてな」
「構いません。ですが、しっかりと教育をさせた方がよろしいのでは?」
「ああ。今回の件もあるしな」
クロード殿下の表情は吹っ切れたようなものになっている。
というか、ルイーゼさんってば思ったより前髪キテるっぽいな。髪が長いから隠せてるみたいだけど。意外とハゲの呪いエッグい。まぁ、私行動改めたら直るようにも願ってたからあれ自業自得なんじゃないかなぁ。クロード殿下は多分鬘被ってるからわかんないけど。
「話をする時間はあるか」
この人ちゃんとそういうお伺いできたのか、と変な方向に納得していると「夫人も一緒で構わないし、護衛をつけてもいい」なんて言い出した。
そこまで言われると逆に怖いんだけど。
「私も同席しても構わないだろうか、クロード殿」
とてもいい笑顔のラティスフォード殿下が現れて、そう問うと少し嫌そうな顔をしながらも「わかった」と告げた。それならばラティスフォード殿下の護衛もつくしとメーティスが了承する。
何はともあれ、挨拶回り終わってからですね。
「ところで奥方は良かったのか?クロード殿」
「戦争をするつもりはないからな。このまま静かにしていてくれれば良い」
思いの外冷たい言葉に、千年の恋も冷めるようなことがあったのかしらなんて思った。浮気がバレたとか?
流石にそれはないかー!王太子妃が浮気とかさいっあくじゃん。こっちの世界のルール的に王族の血筋謀るとか一族郎党処刑すらあるよ?
流石にお勉強してなくても貴族として生活してたら察するもんでしょ。わかってなかったら流石に頭が常春すぎる。
そのまさかである。




