原因が分かった件
「私の正体がそんなに重要なことかな?」
重要でしょう!?
そう思っていると次は無駄に端正な顔が近づいてくる。その瞬間、ふわりとオリエンタル系の甘やかな香りがして口内に酸っぱい臭いが広がる。思わず手を口で覆うと、彼は怪訝そうな顔で体勢を変えて背を摩ってくれる。
「……体調が悪いのか?」
「元々会場の匂いに吐き気がして離れたのですが、気分の良くないところに香水の匂いが……」
そう言ってえずいていると、部屋にあったゴミ箱を手渡されて、扉の鍵を開け、扉を開いた。誰かと話してから扉を開けたままで私に近づこうとして、一旦立ち止まる。
ふと魔力の気配を感じると、香水の匂いは消えていた。
「今、夫君と医者を呼んでいる。少し待つといい」
素直にお礼を言うと、ふっかーい溜め息を吐かれた。
そして、眼鏡を押し上げる。レンズの奥にある瞳は少しだけ申し訳なさそうに揺れる。
メーティスの後ろでサフィールが無の顔で医者を担いで走ってきた。そして、さらにそれを追いかけるようにめちゃくちゃキレたリナリアがいる。
私を見たメーティスがすぐに別室で診察を受けさせた。
そして、医者に告げられた言葉とその診断に私は絶句した。いや、やる事やってるのでおかしくはないけれど。
告知はどうするか聞かれたので自分で言うと告げて、元いた部屋へ戻ると、ラティスフォード殿下があの青年を正座させて説教していた。
「やあ、どうだった?聖女殿」
「反省をしろ!リチャード!!」
その名前に聞き覚えがあって、ポンと手を打った。
「ラティスフォード殿下過激派の弟君」
私のその発言に、普段は表情を変えないエリオットさんが少しだけ表情を変えた。笑うのを我慢しているらしい。
「ああ。その認識は間違っていない。私はリチャード・ツヴァイ・ラビニアだ」
むしろ誇るようにそう言われて、見た目より知性派でない可能性を察した。
ラティスフォード殿下、そろそろ頭の血管切れるんじゃないと思う感じの笑顔である。
ラティスフォード殿下とエリオットさんに連れていかれるリチャード殿下を見送りながら、メーティスの腕を引く。一番に伝えたくって。
「あの……ね、メーティス」
いやちょっと恥ずかしい。
もじもじしてしまう。
「妊娠、してるって…」
大きく目を見開き、視線が私の腹部へと向かう。
震える声で、「僕たちの子が……」と呟くメーティスに頷いた。
すると、私を抱きしめて「ありがとう」と耳元で言った。
一方その後、王家に取り込もうと迫ったら尊敬するお兄ちゃんにしこたまキレられて謹慎を申しつけられた上に、部屋にあった「兄上のカッコいい肖像画コレクション」を全て没収された過激派ブラコン筆頭兄上の治世に邪魔なものは全てお片付けしたい系リチャード。




