お披露目パーティーをした件
メーティスに手を引かれるとそれだけでお姫様になったような気分になる。見上げた視線に蕩けるような瞳が重なって、嬉しくって笑ってしまう。変な顔をしているかもしれない。
二人で広間に姿を現すと、なんだか一気に注目が集まった。思わずメーティスの腕を強く握ってしまう。貴族に良い思い出があまりないせいもあるかもしれない。もちろん、ロージア家やスペード家みたいに良い人もいるけれど。
遠目にアーロンさんや、エリオットさんに手を引かれたマリアンヌちゃんが見えた。エリオットさんいるって事はラティスフォード殿下いるな、これ。
そしてそのマリアンヌちゃんをギリギリとハンカチでも噛みそうな顔で見るキャヴァリアさんだったけど、もうこの二人婚約しちゃったのです。私個人としてはマリアンヌちゃんがクズに引っ掛からなくてよかったなって思います!
本当は招待したくなかったんだけど、ほら、侯爵家だからね。一応。親も結構アレらしいけど。顔見せはしとかないといけないらしい。
二人で挨拶をして回ると、めっちゃイヤイヤながら頭下げてたので、もう少し貴族っぽく感情隠した方がいいぞって思っちゃった。
「ノエル、疲れてはいないかい?」
「少しだけ…。でも、もう少し隣に居たいのです。許してくださる?」
「もちろんだよ」
気遣うような言葉に正直に返答すると、負けを認めたような視線をいくつか感じる。氷のプリンスにやられた人だと思う。私に対しては溺愛王子様だからギャップがすごいだろうなぁ。これで諦めてくれるならその方がいいです。私だって不用意にちょっと考えただけで他人呪いたくないし。でもメーティスだけじゃなくって既婚者に手を出すのはやめろ。他人の人生を狂わすんじゃない。
やっぱりメーティス的に「私に会わせたくない」人ってどうしてもいるっぽい。それとなく、少し休んでおいでって言われたので侍女を連れて本当に少しだけ下がる事にした。
「お部屋に着きましたらお飲み物を用意させていただきますね」
「お願い」
それにしても、パーティー会場の食べ物の匂いがキッツかった。しょんぼり。多分美味しそうな匂いする。
何でこんな風になっちゃったんだろう。
やっぱりメーティスに相談してお医者さん紹介してもらう方がいいな。だって、何でか治癒魔法あんまり効かないんだもん。一瞬は楽になるんだけどなぁ。
そんなことを考えていると、いきなり腕を掴まれた。そして、部屋に連れ込まれると、ガチャリと音がした。
「こんばんは。良い夜ですね、聖女様?」
青い髪にワインレッドの眼鏡の青年。
レンズの奥の夏の空のような青い瞳がどこか印象的だ。
壁に身体を押し付けられた意味がわからず、私は「えっ、どなた…」と間抜けな言葉を吐いた。
あと、あの侍女どこに行ったのかしら。




