扉の外は修羅場な件
よく考えると、誘拐されて身寄りのない私がよく王子様なんて捕まえられたなって感じする。そしてよく子供引き取ろうと思ったなって感じもする。いやまぁ、この子が不幸になるのとか寝覚悪いので健やかに穏やかに生きて欲しい。変な野望とか持たずに優しい子に育って欲しいし、できるなら不幸な目には遭わないで欲しい。
そんなことを思いながら起きたリーリアに絵本を読む。まだ話さないんだけど、何とはなしに楽しそうだ。意外と話はわかっているのかもしれない。子供の成長は早いって聞くし。
そうしていると、メーティスが帰ってきたようだ。なんだか騒がしいなぁと思いながら「お父様をお迎えしましょうね」とリーリアを抱き上げる。
メイドが「私が抱きます」と言ってきたのだけれど、先日の一件があるのでリナリアともう一人にしか任せない事にしている。にっこり笑って「結構よ」とリーリアの背を撫でると、嬉しそうに笑った。
玄関まで向かうと、メーティスが不快そうに「扉の向こうの連中は追い返しておけ。言うことを聞かぬなら衛兵を呼んでも構わん」と命じていた。こうして見るとやっぱり上に立つ人間として教育されてきた人だなぁと思う。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「ただいま、僕のノエル」
近づくと、リーリアに気付いて彼女にも「ただいま」と微笑んだ。私の旦那様、父性まであるのか。最高すぎる。
リーリアの目をそっと覆って頬に口付けたメーティスは愛しげに「会いたかったよ」と私に告げて手を離した。毎日これなので心臓がバクバクする。
「騒がせてごめんね。なんだか騒々しい連中が僕達の間に入り込もうと躍起になっているらしくって。僕に言い寄っても、公爵家はこの子のものなのだけどねぇ」
小声で、「脳味噌詰まってないのかなぁ」と辛辣な発言をしたメーティスに苦笑する。
「公爵夫人になりたいと願う人は一定数いらっしゃると思いますわ。わたくしのような元平民がそばに居るのなら尚更、社交用の第二夫人の座ならと思う方もいるでしょう」
そんなことを言っていると、外で修羅場が起こっていた。
あんまりうるさいので少し覗くとガチギレで「お前は俺の婚約者だろう!!」、「縁談が決まっているのに何をしている愚か者!!」とか言われてギャン泣きしながら引き摺って行かれる令嬢数名がいた。残った令嬢は衛兵に馬車へ放り込まれている。
「……ありがとうございます、女神様」
毎日お祈りしてるからサービスしてくれてるのかもしれない。でも婚約者いたり縁談来てるのに別の男に言い寄ってたらたぶん修道院行きじゃないかなぁ。あ、これが不貞への裁き?




