アクセサリーを購入した件
こちらの公爵夫人になるために教師を充てがわれたけれど、だいたい「問題ないでしょう」という感じだった。アリシア様に感謝である。
それよりも最近少し疲れやすくなっているのが気にかかる。少し熱っぽいかなぁ、って感じもするし、すごく眠い。
メーティスが気にするのであまり体調が悪いとは言わないけれど。
メーティスは公爵家の親類で継ぐことになったと明らかになってから急激に近づいてくる人たちが増えて呆れている。
他人の夫だと分かって近づく女はその熱量に応じて不幸になって欲しい。うっかりとそんなことを考えていると金色の光が散った。あ、やば。
「……いや、普通に考えて常識に欠けてるからいっか」
既婚者に恋をするなと言うのなら強火すぎる可能性があるけれど、私の願いは「浮気、不貞。ダメ。ゼッタイ」なので頭悪い女以外は神罰(?)食らわないと思う。
そんなことを考えていたら、リナリアが「奥様、シルヴィー商会の者が来ております」と知らせてくれた。
今日はアクセサリーを揃えるのだったかしら、と応接間へと向かった。
応接間に向かうと、ストロベリーブロンドの髪を持つおじ様がいた。落ち着いた佇まいのその人は、スタイルが良い。とてもサフィールより年上の子供がいるとは思えない若々しさだ。彼と同じ青い瞳が細められ、私に頭を下げた。
「お初にお目にかかります。我らが女神の愛し子、眩き光の君である聖女様」
「初めまして、サフィールにはいつも世話になっています。お顔を上げてくださる?」
びっくりするくらい顔が良くって思わずサフィールの顔を思い出した。あっちは男前って感じだけど、お父さんは綺麗系なんだなぁ。妹さんの方がお父さんに似ている感じする。
「私はシルヴィー商会、会長を務めておりますロバートと申します」
再び深々と下げられた頭にどうしたのかと思っていると、震える声で「我が娘、マリエッタの病を治して頂けたこと、感謝の念にたえませぬ」と言われて、そういえば私ってばサフィールの妹治したんだった、と思い出した。いやだって、いちいち治した相手のこととか覚えてないじゃん……。こっちだって修行だったり、お勤めだったりするから。
とはいえ、治してもらった方はそうではないようだ。まぁ、お礼を言われること自体は悪くない気分。
「この度は、夜会に使う装飾品の購入をご希望されているとお伺いしております。最高品質の品ばかりをご用意させていただきました。ぜひ私からお贈りさせていただきたく」
「まぁ。そういうことはいけないわ。わたくし、夫以外からの贈り物は受け取らない事にしているの」
メーティスは心配性だしちょっとヤキモチ妬いちゃうタイプなので。冷静に見える分そういうところがなんだか可愛らしく思える。
「だから、お気持ちだけ受け取っておきますわ。もし、それでもというのであれば、わたくしたちに子供が産まれて、その子が困っていたら助けてあげてちょうだい」
現状、欲しいものはないしなぁ。
私関連はメーティスに頼んだ方が喜ばれるしね。
そんなことを思っていると、「お幸せそうで何よりでございます」とロバートさんは嬉しそうに微笑んだ。




