お披露目準備を始めた件
リーリアに懐かれた。
物心つく前で母親代わりが見つかったとノインシュタイン公がホッとしてたけど人の心の中には悪魔が住み着く場合もあるということはもう少し考慮した方がいいと思うんだよな、私。
何度も言うんだけど私の子供が産まれて大きくなった頃とか怖くない?だって、今はどうあれ実の子でも格差をつける親っていないわけじゃないのにそれが他人の子と実子とかだとあからさまになる可能性あるじゃん。
……いや本当にそこ気にしてるのが私だけなのが怖いわぁ。
メーティスは「それを気にしている時点で信用できるからじゃないかな」と言っていたけれど。
そんなわけで何故か歓迎される形でメーティスは公爵家の養子に入り、お披露目が1ヶ月後の公爵家主催の夜会でされることになった。今からドレス作るとかでお針子さんに囲まれたんだけど、間に合うのかしら。不安だったので聞いてみたら「人数を確保してローテーションで過密スケジュールですわ!!」ととても良い笑顔で言われてしまった。
やめて!!無理は身体を壊すわ!!
私の声は届かぬまま楽しそうなお針子さんは帰っていった。
「楽しそうだったので良いのではありませんか?」
「……うん。まぁ、楽しいというか嬉しいだろうな」
そっと目を逸らしたサフィール曰く、私も知ってる某侯爵令息が、愛人のドレスを踏み倒したりだとかして経営がヤバかったところを今回の急ぎでのドレス制作を頼まれたらしい。そして、前金で給金を払うことができる上に達成報酬でお店の状態がだいぶマシになるそうだ。
サフィールは商会の息子なのでなんやかんやそこらの情報が入ってくるらしい。
「マリアンヌさん、こういう事言ってはいけないと思うのだけれど離れられて良かったわね」
うん。綺麗なお顔に怪我をしたので良かったって言っちゃいけないと思うんだけどあれと結婚せずに済んだのは不幸中の幸いって感じする。
複雑に思っていると、メイドさんがリーリアを抱っこして連れてきた。
なんかわからないんだけれど、一旦ぐずると私の抱っこでしか寝ないらしい。申し訳なさそうにする彼女にそっと微笑みかけて受け取る。
よしよしと背中をさすりながらゆっくりと揺すると気持ちよさそうに寝息をたてだした。
「奥様、いつお子ができても大丈夫な気がしますね」
サフィールがそう呟くと、部屋の外から「クロウ!そこはこうですぞ!!」と大きな声がした。クロウは今公爵家の筆頭執事によって鍛えられているところである。
まぁ、それは良いんだけれど子供のお昼寝時間に大きな声はどうなのかしら。
「セバスチャンにこの時間に大きな声を出すのなら離れに行きなさいと伝えてきてくれるかしら」
そうメイドに伝言を頼むと、「かしこまりました」と速やかに去って行った。
「他人に任せて大丈夫なの!?」と言う本人が一番気にしてまめに世話を焼いているものだから生暖かい目で見られているノエル。




