爵位を譲られるかもしれない件
なんでも、メーティスのおじいちゃん曰くメーティスの叔父夫婦と従兄弟夫婦が事故とか盗賊に襲われたりだとかで死んじゃって、お家がヤバいらしい。
次期公爵は今のところ従兄弟夫婦の一人娘なのだけれど、この1歳の女の子を取り込んで乗っ取りを考える人も出てきて大変なんだって。親族はその筆頭とか権力とか財力で人間って狂うもんなんだなぁ、としみじみ思う。
「つきましては、私の養子となって公爵家を継いでいただきたいのです」
「メイは一応血も繋がっているしな。あのアホ共には生存はバレるが、すでにその才能からうちの従姉妹やら高位令嬢がその妻の座を狙っている。身辺を探っていることも確実だ」
どうせバレるからもう正式に迎えて堂々としとけって事かしら。うーんでも公爵の嫁が平民ってどうなんだろう?
いえ、別れるつもりかけらもないし、正式に貴族の妻迎えて欲しいって言われたら女神様に祟って欲しいって訴えちゃうけど。メーティスが信用できなければ何も信用できない。
「聖女殿に関してはその肩書きだけで王族の伴侶すら望めるのだから、心配は要らんぞ」
そういうものなのね、とほっとする。
別になると決まったわけではないけれど、その心配があるとないとでは私の対応が変わってくるし。
「それではメーティス様の選択についていきますわ」
「ノエル、愛しい君に苦労をかけるなんて僕には……」
「メーティス、私は貴方がいればどんな場所でもそこが生きる場所ですわ」
「ノエル……」
「メーティス……」
「いちゃつくな」
ラティスフォード殿下が丸めた書類でメーティスの頭を叩いた。不服そうに私から視線を外すメーティスも可愛い。
「あの国の強い干渉を避けるためにも、後継者は本人が望む限り直系であるメーティスの従姪とする。お前たちの子供には男であろうが継承権はない。それを不服とするならばこちらで爵位を渡せるだけの力をお前たちは持っている。だが、その場合には高位貴族の横槍は大きいものとなるだろう」
「別に爵位にそこまで興味はないんだけどノエルを守るための力は欲しいな」
メーティスの判断基準がそこなの信頼感が増して最高。クロウが「奥様も大概旦那様のこと好きだよな」とボヤいた。夫が好きで何が悪いのよ。夫婦仲が冷え込むとどっちかが夜遊びとか不倫とかしてやばいことになるケースもあるんだから。
「そのメーティスの親戚の子は私たちの娘になるかもしれないのでしょう?その子との相性を見てからでもいいのではないかしら」
よく考えると私知らない子のお母さんになるんだよな、ということに思い至りそう聞くと、メーティスも頷いた。
「ノエルと子供の相性を見て決めたいと思います」
自分の子供の方が可愛いとか言って虐待しないという確証もないので、少しだけでも見ておくのって重要だと思います。よく聞くんだよね、この手の話。
聖女だからって人間性ができているとは限らないので。相性が良ければ考えないかもしれないし。




