夫の祖父が来た件
なんか知らない人来たなって思ったらこの国の公爵様だった。しかもメーティスのおじいちゃんなんだって。やっぱり高貴な人間の親類は高貴なんだなぁ。
というかガラテアの王様の正妃がこっちの公爵家から出てて、側妃二人が自国の令嬢だったのって一応バランス的なものを考えてたのかな。まぁ、あの人割と欲望に忠実な感じに見えたからそっちの理由かもしれない。
何にしても、あの国への感謝ってメーティスという「こんなにカッコいい男がいていいのか?」みたいな人間を生み出してくれたことにしかないからなぁ。
アレンもセドリックさんも良い人だったし、リナリアは可愛いので上があれでも捨てたもんじゃないなって思うけど、上がなぁ…。
「それで、怒ってはいないかい?」
「何をですか?」
少し居心地の悪そうな顔をしているので首をかしげる。不安そうな顔も可愛いと思えるのだから我ながらベタ惚れである。
「いや、親類がいるのならば頼った方が君のためだったかな、と」
「いやですわ、私が言ったのですよ?あなたと一緒ならばどんな場所でも、と。それにきっと理由もお有りなのでしょう?」
実際に「追い出された!助けておじいちゃん!!」しても助けてくれるわけないですしね。基本的には取るべき対応って「そちらの王子を預かってます」って送りつける事だろうし。そしたら処刑待ったなし。胴体バラバラ待ったなし。メーティスが聞いてきても多分「止めとこう」って必死に説得したよ。
これ移住できたのなんて基本的に私らが向こうで死人になってるからってだけだもんね。一部にバレたけどもうこっちの皇太子の庇護下に入ってるから簡単に引き渡されたりしないだろうし。この国もどうやら私がいたら魔物少なくなったりで恩恵があるのでそう簡単にどうこうされたりもない。ある程度協力は求めるけど基本放置。ありがたい話である。
「よかった。できればあの国にはまだ死んだと思っていて欲しかったんだ。であれば、母上の実家に頼るなんて一番やってはいけない事だろう?幸い、僕たちには手に職がある。やっていけないこともなかったしね」
これからも人生に関わって欲しくないんだけど、とボヤくメーティスに「そうですね」と頷く。
ところで貞操観念ゆるっゆるな花畑女の処遇はどうなってるのかなー、とその後ろのラティスフォード殿下を見た。
「安心して欲しい。約束通り、その令嬢たちは追い出している」
「泣き喚かれておりましたけどね」
「節操のない女の涙とか価値があるのか?」
何気に肉食系婚活令嬢(ただし既婚者も狙う節操なし)に対する発言が酷い。けれどごもっともである。
「城にあんなのが跋扈しているのもまずい。仕事場を漁り場と勘違いするようなのは男女共にいらん」
なぜ真面目に仕事ができんのだ、と言うラティスフォード殿下にエリオットさんも頷いていた。よほどなのね、と苦い顔をしてしまうのを許して欲しい。
「殿下、それが重要な案件であることは重々承知しているのですが、そろそろ私にお話しさせていただいても?」
「構わん」
メーティスのおじいちゃんがそう言っていかにも好々爺というように笑った。




