少し不安な件
「聖女を身内に取り込むべきという意見はあるんだが、基本的に聖女というのは、好いた人間と一緒の時が一番効力が強いというだろう?だから放っておけと言っておいたんだがなぁ」
面倒くさそうにそう言うラティスフォード殿下に、レイナード殿下が「そういうことは早く言ってもらわねば困ります兄上!」と言ってラティスフォード殿下に拳骨を落とされていた。「最初に言っておるわ、たわけ!」だそうである。
「この国は王位の争いが活発なのですか?」
「いや、別にそうでもないのだが、我々は考える方向性が違ってな。私は割と穏健派、コイツは何も考えておらず、リチャードは少し過激派というか」
要するに、穏便に私たちを取り込みたいラティスフォード殿下と、皇族に聖女を取り込んで支配下に置いた方がいいとするリチャード殿下という対立関係なのかな?それと、王位争いをしているわけではないというのならば、それでも一応は後継はラティスフォード殿下ということで兄弟内では納得しているのかもしれない。
「リチャードはちょっと過保護というか、過干渉というかな…」
「うむ!リチャード兄上はラティス兄上の地位が少しでも揺るぎかねないと過激な反応を取るのだ!!エグい!!」
それは元気に言っていいことなのかしら、とメーティスを見ると「盲目さが兄上と被ってちょっと殺したくなってきた」と物騒発言をしていたので精神安定のために頭を抱きしめておいた。
「まぁ、そういう事だ。メイから奥方を取り上げようなんて俺が生きているうちはない。さっさと子どもでも作ってしまえ」
「え」
マジで、という気持ちが表面に出てしまって視線がこちらに向いた。目を逸らすと、「ノエル」と名前を呼ばれる。
「まさかとは思うけれど、黙って薬で避妊してたりするのかい?」
「いいえ、しておりませんわ。ただ、そこまで早く子どもができることを望まれているとは思ってもみなくって」
「僕の子どもを望んでいないわけではないんだね?」
まぁ、将来的には欲しいかなって頷くと嬉しそうに笑った。えっ、でも私精神的に普通に子どもの自覚があるんだけれど、子どもに子どもが育てられるのかな?いや本当にわかんない。だいたい大人でもまともに育てられない人だっているのに不安すぎない?
そう考えるとこの世界の人たち若いうちに子ども産んで父親と母親になるのすごいな。尊敬する。
「けれど、こればかりはいつできるかわかるものでもありませんし……」
「そうだね。それに、子どもができなくとも君が愛しいことに変わりがないし」
メーティスってば単純に二人の子どもが早く欲しいらしくって張り切ってるんだけれど、私は不安度そこそこ高いんだよなぁ!
「悠長なことを言わないで欲しいのだが」
「ノエルの心と身体が一番大事だからね。あと、夫婦生活に口を出される煩わしさをもう少ししたら知ることになるから覚悟しておけよ」
それはそう。
……ところで私たち逃げてきたし、死んだことになってるけど、私たちの子どもってガラテアの王位継承権あったりするの?いや流石に死人の子どもにはないよねぇ。考えすぎかな。




