聖女滞在がバレた件
たっぷり浄化の魔法を込めた宝石は無事に辺境地のお役に立ったらしい。よかったよかった。
まぁ、魔物の数を結構少なくする程度らしいんだけど、長い間聖女をガラテア王国が独占してきていたから魔物と戦って勝つってやり方が主流なのでそれだけでも大助かりなんだって。
「それはよかったが、僕がいるのにノエルに求婚してくるヤツらは何なんだ?社会的に消えたいのか?」
そんなことがあったもんだから、私が聖女なのが上層部にバレたんだって。…むしろ今までよく情報統制できてたな。
一個ずつに「私にはもう最愛の夫がいるので、お受けできません」というのと、「夫に何かあったら国を出ます」というのを送りつけている。有象無象が私のメーティスを越えられるはずがない。
「私が好きなのはあなただけですよ」
「僕にも、生涯君だけだよ。ノエル」
私の王子様は今日も私だけに優しいのだった。
それはともかくとしてだけれど、聖女だってバレたので教会に所属して欲しいとかも手紙来るんだけど、大半が結婚しちゃダメな派閥なのでこっちもお断り入れてる。だいたいもうやることやってるのに今更である。子供はまぁ、然るべき時にってお祈りしてるのでまだできないってことはまだそういうタイミングじゃないんだろーなって。
「そういえば、ガラテア王国はルイーゼさんがいるはずなのに何で辺境がそんなに瘴気塗れになっていたのでしょうか?あの方は一応、聖女と呼ばれるだけの能力を持っていたのでしょう?」
首を傾げると、メーティスの目がスッと細められた。
「フォリア公爵令嬢にあった能力は君ほど強いものではないよ。聖女なんて呼ばれていたが、その本性は男を誑かす魔性だ。兄上も何で、あんなに嫌っていたタイプの女に心酔してしまったのだか」
「聖女と似た能力は、異性との契りで消える事もあるそうです。あの程度の能力なら消えている可能性もありますね」
へぇー、本当に純潔でなくなることで能力消えるパターンあるんだ。女神に選ばれた有資格者(異世界転移者)と現地人では力の仕組みが違うのかも。
……まぁ、女神がキレるくらいやらかしたって可能性もあるよねー!!
そんなことを考えていたら大きな音がして、「お帰りください!!」「荒らすな!!」というリナリアとクロウの怒鳴る声がした。
えっ何事?何事なの?
「聖女ノエル、我が国にいるつもりであれば私の妻として仕えよ。これは命令だ」
高圧的な水色の髪の青年が現れた。
何なんだコイツという思いとともに言葉がポロッと漏れた。
「メーティスと別れる気ないので、お言葉通りこの国を出ます。さようなら。
ぶん殴って良いよ、クロウ」
「了解、マスター」
多分我慢してるんだろうな、と思って許可を出すと、思いっきりぶん殴って窓から放り出していた。
顔は良かったけどクソなセリフ吐きやがったから何の呪いをかけてやろうかな、とちょっぴり物騒なことを考えていると、下で「何を愚かな真似をしているこの馬鹿!!!」というラティスフォード殿下の声が聞こえた。
「メーティス様、ノエル様。この度はレイナード殿下が馬鹿なことをして申し訳ございませんでした。国を出るのは何卒留まっていただきたく…」
「殿下?」
は?という顔になっていたと思う。
ラティスフォード殿下の前にドヤ顔で立った彼は自慢げに胸を張る。
「そう!俺はレイナード・ドライ・ラビニアである!!」
そんな彼を見ながらメーティスは「ラティス」と名を呼んだ。
「弟を何とかしておけ」




