帝国の守護に力を貸した件
本気でメーティスいたら生活水準が上がるな。QO…なんだっけ。テレビで前に見た生活の質?ってやつ。アレがメーティスがいるといないとでは段違いだ。そんなのなくたって好きだけれど。
そんな事を考えながら買ったパンをテーブルに置いた。
ガラテア王国のパンは全部硬かったけれど、ラビニア帝国のパンはふわっふわの白いパンもある。感動した。けれど、毎日食べようと思ったら結構お高い。かと言って、私には料理チートは不可能なので安価なふわふわパンの開発を待つしかないのである。だって料理とかが趣味じゃない普通の女子高生ってパン買うものじゃない?捏ねなくない?
塩とかだってそりゃあ、海水を火にかけたらできるって知ってはいるけどそれだけじゃお料理に使える塩になるのかは分かんない。
教養が身を助けるっていうのはこういう時かもって思うといろんなことにもっと興味を持っておくべきだったなって思う。
「ノエル!帰ったよ」
「おかえりなさい。今日は少し奮発しちゃった」
やっぱりいつも豪華な食事とかじゃ旅とかする時に慣れるのが大変だったりするから普段は安価な硬い黒パンを出している。メーティスは「好きな方を買っていいんだよ」と言うけれど、黒パンだってスープにつければそれなりにいけるし、よく噛めばダイエットになるのでそこまで我慢もしているつもりはない。
「相変わらず仲が良いな」
呆れたような声音でラティスフォード殿下が入ってきた。その後ろにエリオットさんも付いている。
「ラティスフォード殿下、レイズ様。いらっしゃいませ」
「世話になる」
「なるな。出て行け」
「すまんが、今回は奥方に用事がある故無理だな」
「やはり早急に出て行け」
こらこら、お友達とはいえ皇太子にそんな態度を取るな。そう思いながら宥めるように名前を呼ぶと、優しい顔で私を見る。メーティスってば変わり身めっちゃ早い。そういうところも可愛いけど。
「話だけでも聞かなければどうして良いかわからないわ」
「厄介ごとに決まっているから聞かなくてもいいよ」
「けれど、お世話になっているもの。危険でないのなら受けてもいいでしょう?」
そう言うと、渋々といった風に彼らを招き入れた。エリオットさんは疲れた顔でお礼を言ってきた。うん。メーティスってば私のこと大好きだから苦労したと思う。
お茶を用意してもらって席に着くと、ガラテア王国との国境付近に瘴気溜まりが発生している事を聞いた。
そこで、神官を派遣しているものの一向に消える気配がなく、このままでは被害が増える一方だということで私に白羽の矢がたったらしい。
「ほらノエル。危険だったからやめとこう?」
「メイお前ちょっと奥方好きすぎるぞ……。まぁ、こちらも無理を言っている自覚はある。無理ならば無理で構わない」
無理ではないんだけれど、ガラテア王国の側かぁ。
「私たちってば死んだと思われてるはずだけれど、基本的には追われる身なんですよね」
いやぁ。だって殺されたくないから普通は逃げるでしょ。なのであの国の近くって言われるとだいぶ抵抗はある。
とはいえ、この国の人たちは悪くないし、私たちってば保護してもらってる身でもあるからなぁ。
ブランに念話で話しかけて見る。良い方法はない?と尋ねると、「出来るだけ良い宝石に浄化の力をたくさん込めれば、とても良い浄化石ができるよ」と教えてくれた。
それを伝えると、「至急手配しよう」と真剣な顔で頷かれてしまった。
「夫人が現地に赴かずに済み、平穏に過ごせるのであればその方が良いでしょう」
「そうだな。こちらとしても危険な場所に稀有な力を持つ聖女を送りたくはなかったしな」
代わりにお金はかかるけど、と思っていたらメーティス曰く「貴人の警護にはノエルが思っているよりお金がかかるものだからあまり気にしなくて良いと思うよ」とのことだった。じゃあ、いっか!




