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異世界召喚された聖女は穏便に幸せになりたい  作者: 雪菊
聖女、召喚されました
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第一王子と手を結んだ件




「このような姿で申し訳ない。本来、こちらから出向くべきところを聖女様にご足労いただけたことにも感謝を」



第一王子セドリック殿下はベッドの上で、微かに笑顔を作った。

優しい微笑みを作って「お元気そうでよかったです」と伝える。これを恩に感じていただければ私の将来的に役立ちそうなので、どうぞ恩を感じておいてくれ。



「それで、君はどうして私を助けたんだ?この部屋には防音魔法をかけてもらっている。君の本音を知りたい。君のお優しい聖女様ぶりは聞いているが、私は人を善意だけで見られるほど人が良くないし…恨まれても仕方がないと思っている」

「まぁ。酷いことを仰るのね。……ですが、ええ。目的はございます。聖女としては外部には中々漏らせはしませんが」



そう言って苦笑すると、彼は眉間に皺を寄せた。



「まず最初に。私はこの見た目でございますでしょう?昔からゆるふわキャラ……そうですね、ほんわかした優しい、柔らかい人間性を期待されて、そのように生きてきましたからいきなり家族以外の方に本性をお出しするのは難しいのです。そこはご了承くださいませ」

「……なるほど。こちらの貴族の子女でも似たようなことはある。理解した。では、目的を聞けるか?」



とりあえずの了承を得られたことは幸いだ。うっかり別の人間に自分の割と良くない人間性を見られるのはできる限り避けたい。

自分の見た目がそういうふうに見えるのも幸いした。私は普通程度の地味な女の子だ。友達の彼氏曰く「普通よりちょっと可愛いよ」くらいのものらしい。弟は美少年なのになぁ。それでも、ある程度は少し癖のある柔らかい髪と垂れ目気味の目は大人しくて愛らしい女の子に見せることができることを知っている。そしてそれ故にお母さんはそういう言動を求めてきたし、そうすると誉めてきた。逆に私が泥だらけで遊んだものなら一気に裏切られたという顔をする。うるせぇって気持ちしかない。こんな地味系に何を求めてるんだお前らは。



「無事に魔王討伐が終わった際、まともな後ろ盾が欲しいのです」

「クロードがいるだろう」

「あら、あの方には愛する方がいらっしゃるでしょう?それに周囲も私よりフォリア公爵令嬢を聖女だと考え、他を蔑ろにする方達のようですので、正直に言うと後ろ盾として考えるには心許ないのです」

「そこで、なぜ私だ」

「恩を売っておけば少しくらい私のお願いを聞いてくださるかなと思ったのですわ」



恩を売っておけば、と言った段階でセドリック殿下の顔は少し引き攣っていた。

ついでに今の状況を説明すれば、「あのクソ女……」と高貴な生まれとは思えないセリフを吐いた。



「陛下は童話のような、我が国にとっての幸せな最後をお望みか?」

「それは私にはなんとも」

「クロードもそうだが、フォリア公爵も愛娘可愛さに異世界の人間の召喚に踏み切ることに賛同するなどどうかしている。この世界の人間ならまだしも常識も文化も違う異世界の人間を無理やり攫ってくるなど……私が呪いなぞにかからなければ」



とてもお怒りの様子である。常識っつーもんを知らんのか、というオーラが出ている。いや、そっちでもこの感じめちゃくちゃダメなやつだったのか。この世界的には聖女召喚OKなんだと思ってたわ。



「それで、後ろ盾だったか。私の母は側妃ではあるが侯爵家の出身だ。そちらから力になれるかもしれない。私が王位に無関心であることや、こんな体になってしまったことから継承権も4位と今いる王子の中では一番低い。私との婚約が嫌でなければ、娘を王妃に据えたい公爵家からの刺客を遠ざけられる可能性もある。ついでに王家に聖女の血を入れるという陛下の望みも叶わなくはない」



それはそちらがお嫌では。あと、公爵家えげつないな。勝手に呼んでおいて、勝手に殺してくる可能性あるのか。不幸な事故とかにされそう。




「魔王討伐の選抜メンバーについては動いてみるが、こちらで選ぶぞ」

「マシになるのでしたら構いません。いずれにしてもクロード殿下は同行されるのでしょうか?」

「……あとひと月あるのだったな。それについてはあなたにも協力をしてもらうかもしれないが良いか?」



ついてこないならそのほうがいいなと思って頷いた。

勇者との婚姻も民は喜びそうだけれど、それ王家側には益がないから邪魔されそうなんだよな。……だったらセドリック殿下にかけたほうがまだ自由があるかもしれない。


それにしてもルイーゼ様何者なんだろうなー。みんな「会うな」「会わなくていい」「目が腐る」「お前までああなったら聖女を信じられない」とか言うんだけど。私に当たりのきつい人たちは「ルイーゼ様こそ至高の聖女」「王妃になる尊きお方」とか言うのでマジわからん。


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