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異世界召喚された聖女は穏便に幸せになりたい  作者: 雪菊
聖女、結婚しました

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35/112

妻を愛する公爵と聖女についた暗殺者




「第三王子様は意外とちょろくていらっしゃる」



呆れたようにそう言った黒髪の青年を睨みつける。


まぁ、確かに妻の持っていた絵の男に似ていたし、笑った時の目元が少し似ている。だがあくまで似ているだけの他人の男だ。


故郷や家族を懐かしがる最愛の妻には申し訳ないが、もう少し言い聞かせなくてはいけない。



「僕がノエルに甘いのは認めよう。けれど、それとお前を認めるかどうかは話が別だ」

「おー怖。そういう目をずっとしていてくれれば、あの聖女様も安心安全だろうよ」

「お前こそ、随分僕の妻に執心じゃないか。何かしてみろ、殺すだけでは済まさない」



そう言って、剣に指をかけるとクロウと呼ばれる青年は「それはない。絶対ない。死んでもない」と失礼な事を言い出す。



「ノエルが俺を弟に似てる、なんてアホな事言ってたが、あっちだって俺の姉と同じ面なんだよ。まぁ、こっちは5年も前に死んでいるがな」

「……三本足の烏が殊勝な理由で聖女に付き従っているものだな」



三本足の烏を印とした暗殺者集団がある。それは全員が際立って美しい容貌を持ち、誰にも仕えないとされる。

「俺の姉は容貌がアレだったし、鈍臭かったから死んじまったけど」というクロウの瞳の翳りは何を思い出しているのか。



「ま、ノエルは主人にしても害がなさそうだしな。結局のところ、俺たちが誰かに仕えないっつーのは、俺らの身を守るための手段なんだよ。顔が綺麗なやつをどうこうするのが好きな変態はお前らが思うより多いんだぜ?」



そんな事は知っている。王子という身分だったからこそ厳重な警備で育てられ、被害には遭っていないが下位貴族の子どもなどにはそういった被害に遭う人間がいる。

城は皆が思うような美しい夢の場所ではないのだ。弱いものを食い殺し、強いものの足を引っ張って引き摺り下ろそうと誰もが画策する魔境。


そんな場所から逃げたがったノエルはやはり勘がいいのだろう。

いや、本来は国そのものから逃げたいと思っているかもしれない。



「俺は聖女個人についてるからこの国なんざどうでもいいんだが、そろそろ勇者達と同じく逃げる事も前提でいた方がいいぜ。聖女は薄々気がついてるみたいだが、お前らの王はお前ら夫婦を殺したがってるみたいだからな」

「……ああ。あの男は権力を愛しているからな」



ノエルが勘づいている事に心を痛める。優しい彼女をこれ以上傷つける事などあってはならないというのに、忌々しい事に血縁者が邪魔をする。


逃げるとすれば第一候補はこの領地を南へと更に行ったところにあるラビニア帝国だろう。あの国とは国交がないが、実力主義だということと、冒険者活動が盛んだという事は以前留学した際に聞き及んでいる。


聖女を殺せば、聖女の持つ女神の装飾具が手に入るなどという世迷言を我が父は本気で信じているようだった。

だが、王都に居られては殺した時の民の反応が気になる。だからこんな辺境の土地に追いやった。


クロード、陛下、母上。

そしてフォリア公爵にルイーゼ嬢。


そうなった時の破滅の覚悟はあるのだろうか?


そこまでして聖女を害するものを女神が許すはずもない。



「ノエルの安寧を得るために何がより重要か。もう少し調べる時間が欲しいところだな」



猶予はそうないだろう。

…だが、国は捨てなくてはならないかもしれない。


もしそうなれば聖女を攫っていく僕を国民は許さないだろう。

だが、そうさせるのは紛れもなく父…国の長だ。国か妻かであれば、僕は妻を取るだろう。


…殺すつもりで辺境に送っただろう人間が治める国を、妻よりも優先する筋合いはない筈だ。



「その前にお前ら一回きっちり話をした方がいいと思うぞ、俺」

「そうは思うんだが、ノエルを目の前にすると彼女が愛しいと思う気持ちが先行して愛を捧げてしまう」



勘づいているとはいえ、命を狙われることを平気には思っていないだろう。なんとか穏便に、彼女を守りながら生活していければそれが一番いいのだけれどね。

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[良い点] お姉さんにそっくり?あれ?
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