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異世界召喚された聖女は穏便に幸せになりたい  作者: 雪菊
聖女、結婚しました

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34/112

孵化した件



クロウはそのままうちに住み着くことになった。護衛の云々というよりも単純に人手が足りなかったし、クロウが「聖女の力なしで無事に戻れる段階は過ぎたんだよな」と瘴気が戻ってきた街道を見つめながら言うので。

メーティスはすごく渋ったが。

ちょっと夫婦仲はぎくしゃくしちゃったが。

でもメーティスはそれでも私の事好きっぽいので申し訳ないです。本当に。

隠してたっていうよりかは言うの忘れてたって感じなんだけど言い訳になっちゃうよね。


ぎくしゃくついでにドラゴンの卵を育て始めた。なんかもう怖いものないので。拾ってきたといえばサフィールにドンびかれた。

クロウは「お前、ちょっと心強過ぎない?」と言っていた。じゃないと召喚されてちょっとくらいで自殺してたって。


卵を抱えながら畑に魔法をかけ、捕まえてきた鶏っぽいものの世話をする。

山に家畜っぽいものが放されているのは、豊かな農耕地区だった頃の名残らしい。



「卵も採れるし、これでほぼ食物は問題なさそうね」

「奥様が倒れられたら、この地域は再び瘴気に包まれます。ご自愛くださいませ」



正論過ぎて頷く。

ここはそういう土地だ。


いっそのこと、旅で行った神殿並みに思い切って浄化してしまえばいいんだろうけど、この間の事を思うと残しておかないと殺されそうなんだよなぁ。

浄化して住める土地にしたところで私たちを全員ぶっ殺し、豊かになった土地を頂こうという算段だったのかもって今少し頭をよぎったんだけど、まさかね?

そうだったらこの国悪質過ぎてびっくりするんだけど。



(とはいえ、メーティスって王子様だしなぁ。できるならやって欲しい、王族として義務を果たしたいって言う可能性を考えると私から案を出すのはね)



疑う事で命を守ってきているためか、なかなか人を信じきれない自分がいるのはわかる。性格が良くないことは理解してるけど、心底信じ切れるほどの信頼も国からもらっていないし。

それでも彼だけは、という気持ちもある。


卵が動いて、少し立ち止まる。

慰めてくれているようなタイミングに苦笑する。



「ありがとう」



卵をそっと撫でると、罅がいきなり入ってくる。驚いているとその間に「ぴきぃっ!」と元気よく小さなドラゴンが顔を出した。



「ノエル様っ!」

「大丈夫よ。ね?」



肩に登って、きゅいきゅいと頬擦りしてくるドラゴン。爬虫類育てられるか不安だったけどこの可愛さなら問題……あそこにいたドラゴンの大きさにまでなったら流石にキツいかしら。



「名前をつけなくてはいけないかしら」

「ドラゴンにまで愛されるなんてさすが奥様です!」



キラキラと瞳を輝かせるリナリアにそう来るか、と苦笑する。普通はドン引きすると思うんだけれど、リナリアの私への信仰心はどこから来ているのだろう。

刷り込みというものだろう、と口を開こうとすると頭の中に声が響いた。



(刷り込みじゃないよ。あなたは女神様が選んだ聖女様。あなたを守るために私は産まれたんだよ)



驚いて白いドラゴンを見ると、嬉しそうに「ぴきゅ!」と鳴いている。


メーティスに話してみるしかないな、と思って連れて行くと、彼は白いドラゴンを見て目をまんまるにした。卵の件はサフィールから話が行っていた。



「白いドラゴンなんて神話でしか例がないぞ」

「あの、メーティス様。白いドラゴンというのは珍しいのですか?」

「あ、ああ…。伝記に曰く、女神の御使であるとも言われている。本当に存在したとは」



偶然罪悪感から拾った卵がそれってどんな偶然よ。

思わず真顔になってしまう。



(これはあなたの番だったよね!私、この人間があなたをとても愛しているって知っているよ!)

「ドラゴンさん、ドラゴンさん。今のタイミングでそれは本当にやめて……」



なんで知ってるんだ、そんなこと。しかも一発で番扱いって一体どこでそれを知ったの?卵状態とはいえドラゴン怖い。どこで見てたの?女神様どこからどこまで見てるの?



「もしかして、ノエルはドラゴンと意思疎通が可能なのか!?」

「は、はい…思念が飛んでくる感じで……」

「何と言っているのか教えてくれるだろうか」



えっ、これ言うの?

真剣な瞳に根負けして、口を開く。



「メーティス様は私の番だったよね、と……」

「なっ!?」

「この人間は聖女…私のことを愛しているって知っている、と……」



一瞬真っ赤になったメーティスだったけど、真剣な表情で私に向き直った。



「僕は、確かにあなたを愛している。その気持ちは誰にも…兄上にだって負けない。結婚式の日、何があろうとあなただけを思うと誓った。例えあなたに愛されずとも仕方がないと思っていた。けれど、側にいてあなたと日々を過ごしていると段々と我が儘になっていく。もっと、もっとと思ってしまう」



私の手を取って口付けるメーティスの瞳には確かに抑えきれない欲のようなものが見える。



「こんなに自分が独占欲を持っていたなんて知らなかった。王子でなくなった僕はもはやあなただけのものだ。僕の愛しい人」

「わ、私……私だって、あなたのことが……」



すきです、と小さく呟くと嬉しそうに彼は私を抱き寄せた。

その間で、生まれてそう経たないドラゴンは嬉しそうに「きゅいきゅい」と鳴いていた。

うっかりお話し前後してたので前話と前々話を入れ替えてます。

すみません…。

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