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異世界召喚された聖女は穏便に幸せになりたい  作者: 雪菊
聖女、召喚されました
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勇者は第二王子が嫌いな件



「ノエル知ってる?俺たち以外の魔王討伐メンバー、クロード殿下とロイ・カーチェス伯爵令息とカミュ・クリスティ侯爵令息とレイト・モリアート伯爵令息だって!勇者と聖女と公爵令嬢取り巻きの愉快な仲間たちだよ。俺ら絶対旅の途中で死ぬわ」



そう教えてもらって絶句した。

名前は知っている。なぜなら私の教師前任者である。つまり、なんの役にも立たねぇと普通に切り捨ててもらったメンバーだ。

というか、アレは旅の仲間になる人間への態度じゃなかった。私に暴力沙汰起こさせたいかのような態度だった。ありのまま伝えると態度は非常にクソだった。

頭を抱えたかったが、それが許されないことは淑女教育で理解しているので、困ったわという顔を作った。



「あれは、旅の仲間への態度ではなかったように思うのですけど」

「俺もそう思う」



頷く勇者アレン。


そういえば、と思い出す。元友人が好きだったRPG+恋愛みたいなゲームにそんな名前のキャラクターがいたな。

そう、ヒロインの名前が「ノエル」であったため「アンタと名前が一緒ね!」と言って教えてくれた。キャラクターの人格とかは全く知らない。私はやっていないからだ。

悪役令嬢とやらの名前がルイーゼで、「魔王に魅入られたルイーゼがマジウザい」と愚痴を言っていた。確か、やたらと強かったらしい。



「フォリア公爵令嬢にずっと張り付いてるメンツだから爵位だけは高いんだよな」



嫌そうな顔をするアレンに「一緒に旅をすることが決まっているようですから、そのようなことを言うものではありませんよ」と嗜めてみる。中身はどうあれ今の私は清廉な少女であることを求められているのだ。簡単に猫は剥がせない。なのでそう言ってみると、つまらなさそうに溜息を吐いた。


その後、神殿からの使いが来たため着替えてから神殿へ向かうと、悲壮な表情の美しい女性と、痩せて棒切れのようになった青年がいた。



「聖女様、ようこそお越しくださいました」

「今日もご指導のほどよろしくお願いいたします。猊下」



大司教様に頭を下げると、彼はカラカラと笑う。いかにもといった好好爺だが、悪意蔓延る宗教団体の頂点に君臨する方である。

そんな方ともご縁のあるアリシア様マジやばい。真面目でよかった。


ところで、と神官と話している女性と青年について聞いてみると、あの二人は側妃様と第一王子だという。



「第一王子殿下はご病気なのですか?」

「それもありますが、どうやら呪いのようで……聖女様ならその闇を取り除けるかもしれませぬなぁ」

「まぁ。そうですの?では、まだ修行中の身ですが試してみても?」



王太子となるのは正妃腹の第二王子と聞く。そして、正妃には第二王子のすぐ下に第三王子と第一王女がいる。さらにもう一人の側妃に第四王子がいるらしい。側妃の一人から生まれた第一王子が王になる可能性は低いだろう。おまけに、おそらく健康であれば美丈夫になるであろうが、話を聞けば数年前の魔物討伐で呪いを受けて以来、あのような見窄らしい体だと聞く。ルイーゼとやらはイケメンにしか興味がないらしいし、彼は取り巻きでない可能性もある。もちろん、取り巻きである可能性もあるが。

だが、取り巻きの青年が呪いに倒れ、病をも得てしまったのならば普通は癒しの力を使うものじゃないのか?第一王子と第二王子は二ヶ月違いの兄弟だ。城に上がって第二王子の幼馴染をやっていたのなら第一王子との面識だってあっただろうし、話を聞く限りだとイケメンには粉をかけて回っている感じがしたので、治して恩を売っていても良いものだと思ったけど。


一応大司教様に渡りをつけてもらって、第一王子殿下セドリック様の治癒と浄化をさせてもらえることになった。側妃様は泣いてお願いしてきた。

申し訳ないんだけど、私は恩を売ることしか考えてない。本当に帰れない場合に向けて後ろ盾とか保護者とかそういうものになりそうなものには恩を売っておきたい。第二王子周りは信用できないのでダメだ。あれだけお前なんていらない感を派閥内の沢山の人にさせているようなところで私が良い扱いを受けられるとは思えない。



「それでは始めさせていただきますね」



そう言って微笑み、セドリック殿下の体に手を当てた。教えられた通りに治癒と浄化を交互にかけると、段々と呼吸が落ち着いてくる。黒い靄のようなものを体外にポイポーイと放り投げていくイメージで呪いを外しながら体に負担が出ないように治癒をかける。

異世界転移特典か何かは知らないけど、魔力量が非常に多く、治癒・浄化・結界術に優れている職業聖女な私だからできる芸当だと大司教様は言っていたけど。


30分ほど経った頃だろうか、体内にある呪いのようなものを取り終わり、おそらく毒物のようなもので傷んでいた体の修復を完了して、「終わりましたわ」と声をかけた。



「こんな奇跡があるだなんて……聖女様との出会いに感謝いたします」

「治せるだけ治してはおりますが、体が回復するまでは信頼のおける方の元へ身を寄せた方が良いかもしれません」



随分と顔色の良くなった息子に感動した側妃様は私の言葉に深く頷きながら涙を流していた。

大司教様に連れられて神話や、祈りの作法や、儀式の作法、治癒や浄化を習う。「先程の様子を見ていたら治癒や浄化の術は問題がなさそうですがな」と言われたが。


こう見えても努力しているのです!ドヤ顔するとイメージを損ねるので恥ずかしげに微笑むくらいしかできないんだけどね。

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