結婚した件
人質くらいでセドリックさんを引き止められると思ってた陛下たちほんとアホ。
かっちり母親の側妃様連れて逃げたセドリックさんマジ「いつかやると思っていました」としか言いようがない。そんなに嫌か。
……めちゃくちゃ嫌そうな顔してたものなぁ。
探せと怒鳴る陛下のことを教会で私を辺境送りにしたことに超キレてる大司教様に聞きながら、しっかり女神様に祈っておいた。
セドリックさんがスッパリ解放されて生きられますように!金色の光が散ったところを見るに聞き取られた可能性はそこそこである。
アレンは王様の庶子の姫様と逃げたらしく第一王女ガチギレである。
面白すぎて、女神様の加護ぞあれと祈ってしまった。やっぱり光が散った。
庶子の姫様、メイド扱いされて虐げられてたらしいのでとっても幸せになってほしい。私がされるのは嫌だけど、ザマァって見るのは楽しいもんね。私がされるのは嫌だけど。
まぁ、こうやってお祈りできるのって二人とも「逃げないか」と誘いに来てくれたからなんだけど。メーティス殿下が王族なのに善良だから酷い目に遭うの可哀想で残ることにした。
メーティス殿下が出ていくなら私もしっかり逃げるけど。
そのメーティス殿下といえば、自分のせいじゃないのに守れなかったとかでめちゃくちゃ後悔して「許さないでくれ」とか言い出したんだけど何これ困る。
立ち直ってもらわないと私が困るので「代わりに幸せにしてください」みたいなこと言ったら酷く感動されてしまった。謎。
いやもう信仰みたいなものは女神様に捧げてくれればいいから私のことは単純に一人間として幸せにしてくれ頼む。
私は大体の土地でお役に立てるから。
正直、食物の種とかがあれば私普通に浄化後、成長促進でびっくりするほどスローライフできるから安心して欲しい。
まぁ、ここでそんな特技披露したら逃してもらえないのわかってるから何も言わないけど。
そういえばあまりにもムカつくのでハゲの呪いを一部に本気でかけてみたら、朝イチで野太い悲鳴が聞こえたんだが誰だったんだろうなぁー。すっとぼけんなって?やだ、ほんとに誰かわかんないだけなのですよ!数人にかけたからね。
まぁ、そういう状況だから今私めちゃくちゃ見張られてる。超ウケる。
リナリアは怒っているけど、怒ったってしゃーないのである。そして宥めていると私の株が上がる。リナリアの中の私像どうなってるのか知りたいような知りたくないような。
そして二週間の後、王太子(にいつの間にかなってたクロード殿下)の結婚式をやっている裏で地味婚した私とメーティス様は翌日にはもう領地への旅に出ることにされていた。ちなみに本人達に自覚があるかわからないけれど前髪が少し後退していた。
二人と聖女派の人だけの結婚式は王族の結婚式なのにめちゃくちゃ地味でした。
むしろちょっとありがたい。
初夜もまぁなんとかやった。高校生が異世界で処女捧げることになるとは思わなかった。
日記読んでたからなんとなく予想はついてたけど、処女じゃなくなった程度では聖女リタイアできないっぽい。普通に浄化も治癒も使える。
あと、さてはメーティス様私のこと結構好きなのでは?
リナリアのおかげで食料問題はほぼなんとかなった。野菜とか穀物の種を持ち込んでくれたのだ。ありがたやー。
女神の加護舐めないで欲しい。どんな土地でも必ずやなんとかしてやる。
「ノエル、身体は大丈夫かい?辛くなったらすぐに言うんだよ」
「ふふ。大丈夫ですよ。心配症ですね、メーティス様」
基本的に結構厳しい旅してた時そこまで気遣いされなかったので普通に女の子扱いされてるみたいで嬉しいな。アルトさんは基本ナージャさんにデレデレしてたし、セドリックさんとアレンは慣れればなんとかなるとか言ってきたので。いや、普通ならブチギレ案件なんだけど。それなりに友情築いててよかったな!?
というわけで、自分のことが大好きっぽい美形との旅は至れり尽くせりで魔王討伐と比べれば最高である。
できれば私の地味さとかほかに可愛い女子いるだろう事には一生目を曇らせたままでいてほしい。
「……っ、僕はあなたの夫、だからね」
顔が真っ赤な旦那様は初々しくてとても可愛いので追放してくれた方々に感謝しなくちゃいけないかも?
いやまぁ、普通に腹立つからその前に神罰でもくらって欲しいけど。とりあえず前髪もう少し後退して焦ればいい。今の状況、女神様に感謝すればいいのかぶん殴ればいいのか判別つかないから、そろそろ何も考えなくていいくらい楽な暮らしさせて欲しい。
でも神罰って言ったって私の願いで死なれると楽しいも何もないしなぁ。後味悪いだけでしょ?うーん、いやちょっと死ねとは思っちゃうけど実際にそうなると…。
どこかで自業自得で痛い目見てくれる程度がいいんだけどなぁ。
とりあえずルイーゼさん。私とっても元気なのでそっちは勝手に、できれば自滅してください。罪悪感持ちたくないので。
領地着いたら祈るところあったほうがいいかなぁ。生活落ち着けるのが先ではあるけど。
最近女神像の前に行くとなんだかほわーと嬉しそうな気配を感じるんだけど、女神様って意外と近くにいるものなのかもしれない。
え、メーティス様小さい女神像持ってるの?精巧すぎてビビる。
「荷物に気がつけば入っていた」
驚く私に困惑の表情で言うメーティス様。
女神様、やっぱり近くにいる……?




