魔王討伐した件
魔王城に着いた私たちはひたすら頑張って浄化を繰り返す私、敵を切り刻むアレン・セドリックさん・アルトさん・ナージャさん、後ろからついてくるノーチェ王国二人組で攻略頑張った。
マジ国に帰って欲しい。無意味無駄無価値。
魔王はきっちり異形だった。申し訳ないけどホッとした。
戦いは熾烈を極めたけど、あまりにもきっちり異形だったので遠慮なく浄化マシマシで魔王城をキレイキレイしたら気の毒になるくらい弱ってしまった。
「ノエル、力また強くなってない?」
戸惑うようなナージャさんの問いに首を傾げた。最近ここ以外でパワーアップアイテム(という名の呪いか聖遺物かもよくわからないアイテム)もゲットしてないしなぁ。ちなみに魔王はイヤリングでした。此処こそティアラとかネックレスじゃないのかと思わなくもない。
「割と過酷な職場で常に魔法を使いながら生活してたので鍛えられてしまったのかもしれません」
護衛の皆様に「命は戻せないのですよ!!」と怒鳴ったりしていた日々を少しだけ思い出した。「腕はくっつきますが無くなったら再生はできませんからね!!」とかもよく怒った。
ずっと怒ってた気がする。
挙句、フォリア公爵領から雪崩れてきた被害者も治す羽目になってたし。
フォリア公爵たちがきっちり済ませてたらメーティス殿下苦しまなくて済んだのにな!
「あのような力、並の神官では出せませんわ。たしかに価値のある方のようね」
「役立たずが何言ってんだ?」
「貴様また姫様に!」
「おやめ、シオン」
「しかし…!」
「魔王がいなくなった今、役立たずになるのは誰か考えればわかるじゃないの」
ムカつく女だなぁ、としみじみ思う。
まぁ、正論ではある。
あの城に帰ったらどうなるのだろう、と考えると不安しかない。でも、もらうものはもらっておきたい。それに、今後この国の豊穣を願うか緩やかな滅びを願うかくらいは決まるだろう。滅べって思った場合、国民は皆様逃げていただきたい。
そうして魔王退治の旅は終わり、私たちは帰路についた。
ウィステル殿下はサクッと帰って行った。「では父を通じて婚約を打診致しますわ!」と力強く言って。
「あの女、真っ直ぐすぎて国を継いだら倒れそうだな」
「セド弟とお揃いじゃねぇか」
「クロードは女が関わらなければそこそこだよ」
ルイーゼさんダメじゃん。男ダメにしちゃ……あ、いや。扱いやすい王様の方がいいっていう野心的な意味合いなら悪くないのか。
帰りは馬を乗り継いで割と無茶な感じで帰った。
馬の疲れを私に癒させるという超無理な旅路だった。尚且つ、自分たちの疲労も私に回復させていたが、私自身だけは疲労困憊待ったなしだったからセドリックさんに抱かれての乗馬だった。
私は止めた。誰も忠告聞かなかった。
おかげで王城に着いた時、私だけ顔が真っ青だった。殺意が湧いた。
翌日に王様に召集されたが、なかなか酷かった。
アレンは第一王女との結婚を強制された。たぶんアレンは逃げる。顔が「褒賞じゃなくて罰ゲームじゃん」と雄弁に語っている。何も言わないだけ利口だった。
セドリックさんはガチで求婚してきたウィステル殿下のところへ婿入りに行けと言われた。お母さんが人質にされてたので拒否権はなかった。
アルトさんとナージャさんはまぁ…昇進。
国家公務員って得だなぁ、と思う。お前ら絶対旅の最中も陛下と繋がってただろ、みたいな気分になったのは許して欲しい。
この国クソだな、としみじみ考えていると、私にも褒美(笑)が言い渡された。
「ノエル。異世界より来たもう一人の聖女よ。そなたの働きには余も感心しておる。見事であった。褒美として、我が子メーティスとの婚姻を許す」
はー?
兄がダメだから弟ってなんだそれは。メーティス殿下が可哀想だろう。ぶん殴るぞ。できないけど。
「そしてメーティスには婚姻を以てここより南の辺境地を下賜し、夫婦でこれを治めよ」
めちゃくちゃ嫌な予感がして、ゴッと音がした方を見ればメーティス殿下が取り押さえられていた。
セドリックさんは唖然とした顔で「何ということを……」と呟く。
微笑みながらクロード殿下と寄り添うルイーゼさんの口元が厭らしく歪んだ。
あ。これたぶん罰ゲームだ。
やっぱこの国滅びるべきでは?




