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異世界召喚された聖女は穏便に幸せになりたい  作者: 雪菊
聖女、召喚されました

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聖女、教育されている件



王子から教師が送られてきた。マナー講師とかもいるんだけど、これは本当なら後に回したいところだ。今必要なのは生き残るための技術だし。

とはいえ、どこでコネが生きるかわからないのでやたら厳しいおばさんだけれど必死に授業を受けている。割と気に入られたためか、質問にも答えてくれるようになってきた。収穫は大きい。マナーを身につけているだけで貴族の家庭教師として雇って頂けるかもしれないらしい。


それに、このマナーの教師アリシア様は偉い人らしくって、困った顔で王子から頼まれてきたらしい教師がクソなんですという言葉を相当柔らかくして伝えたらお怒りMAXでまともな教師を用意してくれたので、やたら厳しいけど好感度は高い。地位の高いアリシア様最高である。


ただ内心でこういうことを考えていると知ったら卒倒しそうである。私は可愛い猫ちゃんをたくさん被っているけど中身はただの性格ブス子なので。名前で相当揶揄われて生きているので性格が歪んでも仕方がないのである。名乗るとだいたい「え?ノエル?」という嘲笑混じりの反応になる。住んでた地域が悪いのかもしれない。少なくとも私の周りはそんなだった。改名してくれと頼んだけど、「男の子は可愛い名前をつけられないけど女の子なんだから」と母親に言われた。うるせぇ、いじめが発生しやすいのはどう考えても私だろ。お父さんもお母さんの機嫌が悪くなる方が面倒らしく叩いても響かなかった。成人したら絶対改名してやる。友人には「のえるん、性格そんなに悪くはないと思うけどーちょっと歪んでるのは確かかも?」と言われた。


その前に帰れない可能性高いし、こちらではノエルなんて名前ありふれているから逆に楽だけれど。



「聖女様は真面目に授業を受けてくださるので教えがいがありますわ」

「いえ、私こそ何も知らぬまま放り出されそうだったところを色々と教えていただき、大変感謝しております」



柔く微笑んで頭を下げる。淑女としての動作にも少しは慣れた。

まぁ、来月には旅立たねばならないのでこれが役に立つかどうかはわからないけど。

これと並行して騎士団に身の護り方を教えてもらっているし、魔術師団に魔法を教えてもらっているし、神殿で治癒魔法なども教えてもらっている。

全て最初はやたら嫌悪感マシマシで寄ってくるイケメンたちが教師としてきていたがめちゃくちゃ邪魔だったので教師をとっかえてもらった。

やたらと厳しい教師に代わったけれどこっちには生死がかかっているので必死になってやりましたとも。何故だか皆様大変満足そうな顔で帰っていくのは謎だけれど。


「アイツらどうだった?」

「教師としては合わなかったみたいだけど、仲間としてはどう?」


そう聞いてきた新教師に、


「教える気がないどころか一緒に戦うことになれば私は死んでしまいそうです」

「アレと背中合わせで戦うくらいならソロで戦ったほうがおそらくマシです」


と答えると双方「わかった」と言っていた。何の問答だったんだ。


ちなみに騎士団長さんに剣術教えてもらってる時に勇者のアレンと知り合った。まともだった。

どうやら、ルイーゼ・フォリア公爵令嬢に絡まれているようだけど、「あの男好きにコロッと騙される王子とその取り巻きって図ヤバいよね!クロード殿下がアレを正妃に王太子目指してるらしいけど、あんなん奥さんにしたら誰の子産むかわかったもんじゃねぇよ!」と笑っていた。

ちなみに勇者になったからってやはり第二王子に城に無理やり連れてこられたらしく、クロード殿下が嫌いなようだ。騎士団長はこれから勇者やるために必要なこととか準備を教えてくれるのでまぁまぁ信用しているらしい。



「ルイーゼ様もあなたほど素直に言うことを聞いてくだされば、王子妃も難しくはないでしょうに」

「ルイーゼ様、ですか?そういえばお名前はよくお聞きしますが、お姿を拝見したことはありませんわね。どのような方なのですか?」



純粋な私を演じ続けているためか、アリシア様は言葉につまった。



「クロード殿下の思い人ですわ」

「まぁ!公爵令嬢様なのですよね?王子様とお姫様の恋なんて素敵!」



そう言うと、緊張が解けたように微笑んだ。

本当のことを言うと、この城は「クロード殿下と聖女ルイーゼ様の恋を応援してます!」な人と「あの売女に群がってる男共ヤベーな!」な人に分かれている。

私とアリシア様はおそらく後者だ。でも、前者は過激派が多いので私がクロード殿下に興味がない発言をしたことで緊張が解けたのだろう。顔だけはいいからね、クロード殿下。


そのルイーゼ様。聖女とか言われているらしく、治癒魔法や結界魔法に秀でているが、フォリア公爵が娘可愛さに聖女の役目につけたがらなかったせいで私が呼ばれたと言うことは調べがついている。意外にもリナリアが憤慨しながら教えてくれた。

優しく穏やかに丁寧に。リナリアに接し続けたら「清らかなる我が聖女様」みたいな扱いになってしまった。ジーザス。そこまで思ってもらうつもりじゃなかった。リナリアの話を聞くに、周りの貴族がクソすぎたようだ。上が腐ったら革命とか起こりそうで怖いな。


リナリアは貧乏男爵家の出身らしいが、覚えも良いし、なんかわからんけど私のこと大好きだし、一緒にアリシア様の授業受けてくれるし、私もリナリアのことは好きである。復習まで一緒にやってくれてるので高評価は半分くらい彼女のおかげなので王子にはちょっと感謝した。掌くるっくる回しちゃう。リナリアと会わせてくれたことだけは褒めたい。それしか褒めるとこない。あ、嘘。アリシア様の件も褒めちゃう。本人は放りっぱなしなのでなんとも言えない。世話できないなら帰還させてくれ。



「勇者殿にも近づこうとしていると聞きますが、勇者殿は真の聖女たるノエル様の輝きに魅せられておられるので平気でしょう」

「アレン様はどちらかというと友人として気安く話しかけてくださるだけですわ。リナリアさんも、あまりそういうことを言ってはダメですよ?」



ふふ、と笑うと彼女は頬を染めて頷いた。とても可愛らしい。


とりあえずルイーゼ様とやらの悪口を言うのは得策ではないだろう。過激派とどうこうするつもりないし。

でも、正直聖女名乗るなら私が召喚されないように努力してほしいもんである。

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