洞窟にはドラゴンが棲んでいる件
2話更新してます。
聞き込みをしたところ、その洞窟にはドラゴンが棲むらしい。
もうなんか「ふぅん」という感想しか持てない。割と隠しているんだけれど、そんな感じの私のことを理解してきているのがセドリックさんとアレンである。
和やかに晩御飯を食べながら「あ。これ不味いな」と思ってたやつとか次に買おうとしたら「お前、これは嫌いだろう?」と別のものに変えてくれたりする。
そこまでわかりやすい顔してたかな?
二人曰く「慣れ」とのことだ。
私に対する慣れってなんだ。
そういう感じで私が隠してる感情をなんとなくわかるようになってしまった二人はしっかり聞き込みをしている私に「これもある意味対人能力が高いということか」という謎の理解をしていた。
「ドラゴン、というのはこの世界でもやはり強くて危険だったりするのですか?」
「騎士団が隊列を組んで倒しに行く生物だよ。洞窟の中ならまだ向こうも動きにくいだろうし、マシか」
「水脈への影響は看過できんしな」
「水がダメになると一気に人が死ぬからな」
飲み水がなくなり、川などから魚は消え、作物は枯れる。
水への影響はそのまま人間の生死に直結するということだ。
「あの蛇でも攻撃が通らなかったのに、竜種に攻撃が通るかしら?」
不安そうにするナージャさんにアルトさんは「騎士団でも討伐することのある魔物ですので」と安心させるように話した。
この二人はちょいちょい自分たちの世界を作る。付き合ってるのかもしれない。
ナージャさんの姿が見えず、アルトさんの付き添いがある時は人質に取られていると考えて動かねばならないかもしれない。
そんなことを考えていると、自分の影が少し揺れた。
大丈夫よ、と笑顔を作った。
数日前、あのお化け屋敷から出た少しあとのことだ。
偶然、自分の影がパンを吸い込んでいくのを目撃した私は、隠れて影に光魔法を打ち込んだ。影からはちょっと焦げた弟激似の子が出てきた。
「いきなり攻撃魔法打ち込むってどういうこと…!?」
「小声で怒鳴るのって器用ねぇ」
「感心してんじゃねぇっつーの!」
それにしても弟に似ている。
どうやら彼はこっそりと勝手に私を救って貸し借り無しにしたかったらしい。なんともまぁ可愛いことだ。そういうところが弟にも似ていてほっこりしてしまう。
まぁ、うちの弟は血がダメなのであんな出血してたら気が遠くなってしまって死んでいただろうから別人だということはわかるけど。
「そのうち、嫌でもそういう場面がくるわ。私、国元では嫌われているの」
そう言って笑うと、不服そうな顔で影に沈んでいった。名前は、と聞いても「勝手に好きな名で呼べば?」と苛立たしげにいうのでクロウと呼んでいる。なんか全身真っ黒だし、綺麗な黒髪と黒目なので。確か、カラスの羽が水に濡れたような艶のある黒を烏の濡れ羽色というそうだ。そういう感じの美しい髪なので、怒らないで欲しい。
まぁ、そんなわけで旅も少しだけ楽しい気分になっていたりする。
洞窟に入ると私とナージャさんで光を灯す。
それを目掛けてやってくる魔物はアレンが聖剣に灯した炎で焼き払っていた。
ドラゴンが棲む洞窟とかもうすでに帰りたいし瘴気薄いから別に原因ありそうで嫌だなぁ。




