ホラーハウスは地雷な件
足跡があったので取り敢えずお屋敷の敷地に入ると、途端に扉を叩きながらちょっと諦めた顔で「魔物由来の怪異の単独撃破はちょっと自信がねぇなぁ」って言ってるアルトさんがいた。
「第二騎士団副団長ともあろうものが弱気な発言をするな?」
「殿下!…なんでこんなところへ入ってきてしまったんです?」
「聖女が陰湿な悪意の気配がする、というのだ。解決するしかあるまい」
楽しそうだなーと後ろでニコニコ笑って立っている。
少しも楽しくない。ホラーは与太話だから楽しいのであって実際に怪異に会うとか苦痛にも程がある。
私は絶対にこんな空間を作ったやつ許せない。
「ノエルがいれば怪異なんて可愛いものですね。騎士団に一人いて欲しいものです」
「……言っておきますが」
釘を刺しておかなければ絶対に連れて行こうとするだろうな、と思って口を開く。
「この理不尽な行軍の後に私を戦場やこの手の怪異に連れて行こうものならば、私は国ごとそれらを呪いますよ」
その言葉に笑うアレン。頷くナージャさん。苦笑するセドリックさん。
そして、青くなるアルトさん。
「私だってこの手の怪異は好きではありません。それに私は平穏で何不自由ない生活が望みです。ご理解頂けますようよろしくお願いいたしますわ」
優しく微笑んでそう言うと、とても良い勢いで彼は頷いた。
そんな問答をしながら屋敷の中へ入る。
ナージャさん曰く、魔物由来の怪異は解決しないと外に出られない事が多いらしい。
もう敷地内入っちゃったからぶん殴って帰るしかないとのことだ。
舌打ちでもしてやりたいところだけれど、私は素直に浄化をし、結界を作る。アレンは「聖剣ってゴースト系も斬れるのか。便利だな」と言いながら進んでいた。
「聖女の力を付与してもらった武器であればゴースト系も斬れる。ふむ、発見だな」
「ノエルが幽霊がダメなのが悔しい程です」
「そんなこと言ってたら呪われちゃうわよ」
茶化してそう言われているのはわかっているけれど、これだけはガチなのでちゃんと頭に入れておいて欲しい。ガチなので。
出てきた魔石をそろっと回収していく。生活魔法の書とやらは大変便利である。異世界人だからかはわからないけれど、収納魔法における量はそれなりなので割とだしたところで片付けられないレベルの量が収納してある。役に立つかは知らないけれど。
蜘蛛みたいなのが近づいてきたので容赦なく燃やす。私、蜘蛛も好きじゃないので。好きじゃないものだらけの屋敷だから最初から燃やせばよかったのでは?失敗した。
探索を続けるうちに大きな扉の前に出る。巨大化幽霊みたいな腹立たしい感じのやつの後だし、RPG系ゲームだとこの辺りでボス戦だろう。
扉を開くと、ピンクのゴテゴテしたドレスを着たアンティーク人形が踊っていた。
やはり入る前に燃やせばよかった。
人形とか普通に怖いでしょ。
ちょっとビビっているとこちらを向いて、人形の顔がニタァと笑った。
「ひっ……」
髪の伸びる人形も暗い中で見るアンティークドールも私の中では悪です!!




