聖地を取り戻した件
周囲を水に囲まれた神殿は、ダンジョン化していると言われてもとても美しい。
これがダンジョン化していなかったらさぞや有名な観光名所だっただろう。
最初に足を踏み入れたダンジョンのように瘴気があからさまではない。私が先頭を歩かなくても行動はできそうだ。何もないのに戦闘能力の低い聖女が先を歩くのもお邪魔なので今回は真ん中に挟まれての移動だ。
なお、魔法の先生は攻撃魔法に向いてないと言っていたが、おそらく「そっちの方が向いている」と私は考えている。
覚えるのもそちらの方がスムーズだったし。
王の意見だろうか?
どうも「自力で生きていける能力を持たれると困る」「強い力を持たれると困る」という意思を感じる。
だからあまりこの国が信用できないというものなのだが。
私を強制的にセドリックさんや他の王族、貴族に嫁がせて利用しようとしているか、教会に閉じ込めて国の平穏だけを祈らせようとしているのか、はたまた邪魔になれば殺そうと思っているか。
どれにしても、情勢がわからない。
旅に出てからおひとり様でも大丈夫系女子になりつつあるけれど。
狩った後の獣の血抜きとかの仕方も覚えた。アレンと一緒に買い物に出てるおかげで金銭の価値なんかもだいぶ把握している。
……なんか多分最終的にお金さえなんとかできれば私、生活できるようになると思う。
大人しく聖女らしくと過ごしてきたために王様のガードが甘くなったのは良かったことだろう。だってここでガッチガチに守られて浄化しかできない聖女であったなら私どう足掻いても一生籠の鳥である。
そんなことを撃ち漏らしがあった魔物を結界で弾きながら考えつつ、回復も行う。
だいぶ楽をさせていただいているが、これがチェンジ前のメンバーであれば私今頃過労死してそう。というか技能追いつかず死んでた可能性ある。
まぁ、第二王子以外の彼らにとっては私はいない方が都合が良いものね。
背後から迫るゴブリン系の魔物からナージャさんを守ると、弾かれたそれをアルトさんが斬った。
「ありがとう!」と言われたので手を振ろうとすれば「仲間だから当然だ!」とアルトさんが返した。いや、たしかに斬ったのはアルトさんだけど守ったの私……。
まぁいっか、と引き続きバフを乗せて援護をする。
神殿の奥に進む際に光が消えていた。
「灯よ」と声を出すと、壁についたランプのようなものに火がついていく。なるほど、聖女がいるべき場所って感じだ。
その道を越えると重そうな扉があった。
なんかセオリー通りだとここはボス部屋な気がする。
押しても引いても開かないので、みんなに手招きされ、私が扉に手を当てると自動的に開いた。
どんなシステムなのか。
その中には、一体の大きな蛇がいた。
黒い鱗は光を阻む闇のように美しい。
ナディアさんの放った魔法は散り、アルトさんが隙を見て加えた一撃も金属音がして弾かれている。
仕方ないので五人で結界の中で作戦会議である。
「何か案はあるか?」
「私はその手のことに詳しくありませんからね……。普通の蛇系の魔物は何に弱いのです?」
「寒い日とかは動きが鈍かったりするが、それでもあの硬い鱗がな」
「……皮膚に攻撃が通らないのであれば目や、口の中を狙う必要がありそうですね」
そう言うと、セドリックさんに「よくそんな残虐な方法が思い浮かんだな。いや、確かに正攻法だが」と言われ、アレンに「攻略法ありがと!」と言われた。何が残虐だ。こっちはいつ死んでもいいわけじゃないんだぞ!幸せな人生を送るまでは何がなんでも生きるんだから巻き込んだそっちは必死になって私と生き抜いてくれ。
そして、私とナージャさんで辺り一面氷で囲み、動きが鈍くなった蛇を全員で討伐した。
案の定出てきた聖遺物は次は私の指へ絡まり指輪になった。
「また外れない……!」
「あまり手荒に扱うな。聖遺物だぞ……!?」
セドリックさんはそう言うけど、外れないアクセサリーとか普通に考えて呪いのブツだから!!




