魔王(2回目)を退治した件
ルイーゼさんが潜伏している近辺まで来た。
なんというか、ここって瘴気溜まりである。こんなところが平気とかマジで人間辞めてるなぁ。
私もアレンもわりと耐性があるけれど、クロウはそこら辺は普通の子なのでしっかりお守り持たせておいた。無理はするなよという気持ちである。
目があったアレンは無言で頷いた。
それで女神様の装身具を身につける形で出した。今所持している全てを表出させて全部に力を注ぐと、着ている服さえも白いドレスのようなものへと変わっていく。少しばかりゴテゴテとしているが、それが放つ力は大きい。
そのことで私たちがいることに気がついた魔物たちは襲ってきた。
「雑魚は引っ込んでろ!」
聖剣の一振りで弱い魔物の一団は消えていくけれど、その多さには目を見張るものがある。
クロウも大きな手裏剣みたいな武器とか暗器で応戦していた。
その間に私は力を溜める。
幸いにも、先日の収穫祭のおかげでこの土地には私の力が行き届いているし、大規模な術を使うだけの基盤ができていた。
それ故にこそ、瘴気の汚染は目で見えるよりかは大きなものではない。
ガラテアは一度、浄化をやり直す必要がありそうだけど。その辺りは、メーティスと相談だ。今回は我慢しているけれど、毎日夫に甘やかされて生きているので数日会えないだけでテンションがイマイチ上がらない。ストレスゲージはゴンゴン上昇していく。辛い。
女神様の与えてくれた力を使ってしっかりと祈ると、黒い雲を切り裂いて金色の光が上空から差す。
ゆっくりと瞳を開いて、あの水晶に力を注いだ時の感覚を思い出す。そして、周囲へと行き渡るように思い切り浄化の力を解放した。
それに対抗するかのように黒いものがこちらへと押し寄せてきた。
その先頭にいる存在を確認してアレンは聖剣を握り直す。
浄化の光、その一部が星の輝きのように聖剣へと集まっていく。
きらきらと舞うその光は、1度目も見たけれどやはり美しい。
光を纏う剣が、魔物たちを消しとばしていく。引き止めようと向かう者たちを払うようにクロウは影を操り、魔物を縫いとめた。
その奥に、ルイーゼさんが見えた。
浄化の光から逃げるように駆け出す彼女。
それを守るように飛び出したのは馬のような顔をした魔物だった。その服は確かガラテアの軍服であった気がする。
力をそちらに向けると、その魔物は彼女を守るように抱きしめようとしたが、ルイーゼさんはそれをそのまま突き飛ばした。
「素直に守られてりゃ、初撃くらいは耐えれたのにな」
アレンの手にある聖剣が纏う光が炎のように揺らめいて、それを振りかぶると彼女たちを飲み込んだ。
そこには、焼かれたとは思えないティアラだけが美しいままで残っていた。
「ノエル」
「うん」
アレンからティアラを受け取ると、それは今までのものと同じように私に装着された。
複雑な気持ちだけれど、私はそれにも力を注いで自分のものとする。
そして、ちゃんとこの世界の人のために祈るのだ。
瘴気が、この世界からなくなりますように、と。
だって、未来の子供たちが巻き込まれて行くなんてもう嫌だものね。
ルイーゼを守ろうとした魔物は元はロイ。報われない。
チートアイテムを使った聖女とその祝福を受けた勇者はサクッと倒して、握手してサクッと分かれた。




