魔王誕生の理由を推察した件
メーティスは優れた魔法使いでもあるので連れて行ってもいいのかもしれないけど、正直なところ子供たちを守ってほしいというのが本音だ。そしてここが一番連れていけないポイントなのですが、メーティスは瘴気で体調を崩しやすい体質らしい。だから私といるとより元気だし、私がキラキラして見える一面もあるっぽい。
リナリアは連れて行ってと泣いたけれど、多分リナリアは力量が少し足りない。もう少し早くから魔法の練習ができていればよかったのだろうけど。こればかりは彼女の親に文句を言って欲しい。
結果、一応の護衛にクロウを連れてサクッとアレンと合流することにした。
アレンが私の居場所をなんとなく感知できるのと同様に、私は聖剣の場所をなんとなく感知できる。おそらく女神の力同士が反応し合うのだろう。
合流するのがアレン単独であっても、彼と一緒に戦うのが前提なら対魔物や魔王では物量関係なくこちらが有利だ。
なんとなく嫌な予感がする道を避けながら、聖剣の気配を辿る。
そして、ある村へと立ち寄った。
「意外と早く合流できたな」
そこで、アレンと合流した。
相変わらず重そうな聖剣を片手にRPGの主人公みたいな笑顔の方である。
「第三王子との結婚うまく行ってるらしいなー!よかったよ、本当に」
安心したような顔をして、アレンは私を見た。
どうやらアレンは一緒に逃げたお姫様と結婚したらしい。ちょっとした驚きである。アレンは優しいし、頼りになる勇者だけれど、割と女の子に厳しかった。
「それで、あの馬鹿女だがな」
近況を話してから今回の事件について話す。
どうやら、詳細はアニータの手紙と同じではあるようだ。なんというか、国からティアラ奪って行ったっていうのだけ初耳かなぁ!?強盗までやってるあたり女神様の怒り割増っぽい。そういえば女神の装身具的なパワーアイテムで私についてないの後はティアラだけだったなぁ、と思い出した。
「まさか、その結果魔王が生まれるなんて思わねぇからセドや元馬鹿王子もぽかーんとしてたわ」
「そりゃあ、魔王を倒したばかりでしたし仕方がないでしょう」
「奥様なんて、女神の装身具の事すっかり忘れてましたしねぇ」
クロウの言葉に頷く。
そもそも、そこまで興味がない。呪いのアイテムかって外せないのはどうにかしたほうがいいと思う。消しているとマジで存在忘れるんだよね。
「ということはおそらく、神罰と瘴気の濃い地域にいたことの相乗効果によって魔物化したと考えるべきか」
「神罰?あ、薄毛の呪いは私です!」
「うす……あのえっげつないのお前かよ!?」
命には支障ねぇけどよ、とぶつくさ言いながら彼はアイザックが聞いた女神の神罰内容を教えてくれた。アイザックは私が治した後から女神への信仰心がやばいくらい高まっていて、その結果女神のお言葉を賜われる程度の実力をつけてしまったようだ。知らないところで私は苛烈な信者を作ってしまったらしい。
「神罰はまぁ、不運と不妊だな。やることなす事裏目に出るっつーヤバい代物らしい。不妊は曰く、この娘に子ができるなど子が不幸であろう、だってさ」
「ど、どれだけ嫌われてるの!?」
女神様直々に不幸を願われるの怖いな。自分の運が悪くないだけに余計そう思う。私の場合、厄介なフラグを周囲が運良く片付けてくれているからおそらくこれでも何かしらの加護はついている。
「これは俺の予測だから合っているかはわからないが、この不運が脱獄と合わさって裏目に出た。まぁ、脱走しなきゃ死んでたからな。裏目に出るっつーなら死ぬよりも酷い状態にならなきゃなんねぇ。その結果が倒すべき魔王って事なんだろう。魔王なんて倒しても、塵一つ残らないからな」
そう言ってアレンは肩をすくめた。
いや、それが人類の害になっちゃダメじゃん女神様ぁ…!
でも私は女神様に助けられてる人間なので、責任は取らなきゃだよね。
めちゃくちゃ深い溜息が出た。多分今女神様あたふたしてる気がする。




