戦いへ向かわなければいけない件
女神様から一方通行なメッセージをいただいた。新しい魔王が生まれたらしい。
ちなみにルイーゼさんのことである。マジで?人間も魔王になるの?
ちなみに女神様はルイーゼさんをぶっ殺すために勇者もこっちに呼んでいるようだ。
えぇ…人間殺すとか嫌だな。もう魔物らしいし、そこら辺どう思うかはわかんないけど浄化でサクッと溶けてくれないかなぁ。
そんな事を思いながらメーティスや皇帝一家に知らせを出し、家の地下室の一つをガチガチの結界魔法で覆い、さらに幻惑魔法も発動するようにした。そしてその起動方法をエレナとセラへ伝えておく。
もしもの時は子供たちを連れて隠れてもらうためだ。狙われているのはあくまで私。けれど、その悪意はもしかすると家族に向くかもしれない。
メーティスに伝えると確実に私も放り込まれて出してもらえないと思うのでやめている。相手が魔王と女神様が言うのであれば、聖女は必要だ。
そうやって急いで準備をしていれば、お城に呼ばれた。
やっぱり、ガラテア方面から段々こちらに瘴気の塊が近づいているらしい。
何故か男の人を従えながら。なぜ?
魔物の雄、人間の雄を従えてやってくるあたりどれだけ男が好きなのかと少し呆れてしまう。お腹が空くと食べちゃうらしいけど。その食べちゃうってどう言う感じなの?カマキリとか蜘蛛みたいな生態なのだろうか。やめてほしい。旅では我慢していたけど私は虫も嫌いだ。
「メーティス」
「ダメだよ」
言う前に固い表情で制止された。けれどこればかりは止められてあげられないのだ。お役目だもの。
「私、魔王退治をしてきます」
そう言うと、彼の表情が悲しげに歪んだ。
行くな、と動きかけた唇に唇を重ねて笑顔を作った。
「必ず戻って参ります。私の居場所はあなたの隣です。それに我が子の成長を見るのを諦めたりはしません」
「それでも、それでも僕はもう君に傷ついてほしくない。だから僕は……!」
「大丈夫よ。大丈夫。私、頑張れるわ。メーティスが待っていてくれるなら」
彼の頬を両手で包んで、「ね?」と首を傾げる。
彼が私に傷ついてほしくないと願うように、私も家族に傷ついてほしくないと思うのだ。戦いはいつだって怖いけれど、もし負けてしまった際に彼らは死んでしまう可能性が高い。元になったのがルイーゼさんだというのなら、私の愛する家族たちを見逃してくれはしないだろう。
好きで、愛していて、傷ついてほしくなくて。
だから戦わなければいけないのだ。
「私の可愛い子供たちをよろしくお願いいたします」
「どうして、どうして君が聖女なんだろう。そうでなければ、戦いになんて」
「けれど、そうでなければ私たちは出会えませんでした。それはとても、寂しい事だわ」
痛いくらいに抱き締めて、メーティスは私に見えないように袖で目を拭った。
「僕も、君のためにできる事を。僕の愛する、君たちのために」
そう言って私を見つめる彼に私はまた惚れ直すのだ。
旦那様はこの後守護のための魔道具しこたま押し付ける。メーティスはそこまで戦いに向いてないし、瘴気に弱いので行くなって止められている。




