久しぶりのデートな件
なんだか、水晶に力を込めただけなのにやたらお外がキラキラしくなっている。
みなさん楽しそうだからいいけれど。
夜のお祭りだからか、辺りにいるのは大抵カップルだ。仲良きことは素晴らしきかな。
メインイベントは終わったけれど、別にそれでお祭り自体が終わるわけではない。着替えて城下町デートをしていると、タレの良い匂いがする。
「活気があって良いですね」
「うん。豊かで良いところだ。……まぁ、何もないと言うわけではないけどね」
屋台をやっているおばさんに怒鳴る男とかもいる。けど、メーティスが屋台の上あたりに魔法で小さく火花を散らせば、警備の人が飛んでくるあたりは流石である。人員とお金を投入しないとどうしても犯罪とか増えちゃうからね。
串に刺して焼いたお肉を二人分買い、ベンチに座って食べることにした。メーティスは私と離れるのを嫌がるので全部二人で。
「こんな食事久しぶり」
旅の最中で町に立ち寄った時など、こういった食べ物を口にする機会はあった。あれはあれで楽しいものだったと思う。お金を握りしめて、仲間と笑って食べるご飯も楽しかった。
約2名には裏切られましたけどね!!
女神の装身具シリーズがこの身に着くたびに彼らの目から見た私が、人間でない「何か」になっている気はしていた。
それはそれとして、裏切ったという事実だけは確かだ。殺してでも彼らが奪いたかったものは何か知らないけれど、私は心根まで聖女というわけではないから普通に不快だし、彼らに何が起こっていたとしても今後助ける気はない。
「やはり今の生活は窮屈かい?」
「そうでもないですよ。結構好き勝手やっています。全部あなたのおかげです」
「いや……なんだか楽しそうだから」
「安全さえ保障されていれば、普段と違う環境というのはそれなりに楽しいものですよ」
こっそり護衛が付いているので気が楽だ。メーティスを相手に警戒なんてしなくてもいいわけだし。
「何より、あなたと二人きりだなんて楽しいことしかないわ」
「ノエル……」
熱を帯びた瞳に見詰められると照れてしまう。そうか、愛されているのかと実感できるのでとても幸せ。
肉を齧る私ですら愛しいという顔をするので、それには苦笑してしまうけれど。齧ってるとこ見ないでほしいので。
「君は僕を喜ばせるのが殊の外上手だね。毎日のようにノエルへの愛しさが増していく。好きだよ」
クール系のイケメンの愛の言葉って破壊力高い。
「私も、あなたを愛しております」
だから、こんなに日々が楽しいのだ。
メーティスが一人いるだけでその他全てが色付いて見える。そして、愛の結晶だってできた。
だから、他の人の幸運や平和を願える。
不幸な人間がそれを願うことは難しいから、メーティスと出会えたのはこの世界にとっても幸運なことだったのかしら?




