光が広がっていった件
教会へと足を踏み入れると私たちの周囲を金色の小さな玉が舞う。蛍みたい、と呟くとメーティスが怪訝そうな顔をしたので、発光する虫ですと説明しておいた。それ以外はわからない。テレビでしか見たことないしね。なんか綺麗な水場でないと生きられないんだったっけ?
女神様の歓迎かなぁ、なんて思いながら二人で奥に進むとその教会の人たちがずらっと首を垂れて並んでいた。正直ちょっと怖い。
これって王族とかなら普通なのかしら。
すいすい進んで行くメーティスに手を引かれながらそんなことを思う。
最奥にある水晶は昔の聖女が力を込めてくれた特別なものらしい。それをお祀りして、こういう特別なときにお祈りをしているそうだ。いつもは神官たちが一生懸命必死に力を込めてようやく効力を発揮しているらしい。効力っていうのは強い魔物の出現率が減るっていうもの。なお、私がこの国に来たことで効果が上乗せされた様子。よかったね。やっぱりあんなんで人が死ぬって嫌だし。
奥にある水晶に手を翳すと、結構な量の魔力を吸い取られた。この場合は聖なる力なんだろうけど、考えるの面倒なのでもう全部魔力だと思うことにしている。
そしてそれは光を溜めて、吐き出した。
金色の光が神殿に満ちて、やがてそこから外へも広がっていく。
これは全部終わって、後から知ったことだけれど、その光は国中に広がって土地を癒し、さまざまな植物が芽吹いたという。いや、もう秋じゃんって思ったけど。
何が起こっているかわからないけど綺麗だなぁ、とニコニコしながらメーティスを見れば彼も私が笑っているのが嬉しいからかにこにこと笑っていた。笑顔の旦那様可愛い。
「この後は窓から手を振るのでしたか?」
「そうだよ。こんなに綺麗な君を見せては何人がその美しさの虜になるか、わかったものではないけれど」
心の底から案じている顔である。
言っておくけど、生活基盤が整ってそれなりの地位で暮らしているためそれなりにはなっているけれど私はメーティスが言うほど美人ではない。……いやでもいつまでも私に夢は見ていてほしい。それこそ死ぬまで。
教会の人は厳かに窓辺へ案内すると、窓の外には多くの帝国民がいた。私が姿を見せると、その声は一層大きくなる。
高くから人を見下ろす立場になるとはなぁ、と苦笑したい気持ちを抑えて出来るだけ優雅に微笑みを作り、手を振る。
なんか、夜の暗がりに見えた子供達が怪我をしているようなので、治ります様にと願えば彼らは不思議そうな顔をして、次に嬉しそうにこちらに手を振った。
子供が元気なのは良いことだ。私もこの世界に来た時は確か17歳の子供だった。……まぁ、こちらの17歳って子供じゃないんだけど。
それにしても、首都でさえあんな子達がいるのね。暗がりとか危ないし、孤児院とかにちゃんと受け入れられればいいのだけど。




