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久しぶりのラーメン

時計を見ると12時を指していた。

朝から何も食べていないからかお腹がすいている。走っていた車を路肩に留め、近くのコンビニを探すためカバンから携帯を取り出す。


いつも通りコンビニ弁当で済まそうと考えながら携帯の電源を入れた。今使っている携帯は数世代前なので起動に時間がかかってしまう。待っている間に外の景色を見ると水平線が広がっていた。


運転に集中し目が凝ったので眉間を指でグリグリすること数分、おかげでましになった。ましになった目で辺りを見回してみると、ふと離れた所にラーメン屋を見つけた。


携帯の起動を待たず、久しぶりのラーメンに心を躍らせながらすぐに向かった。





そのラーメン屋は如何にも昭和を言う外見だった。暖簾があり、半分より下は木で上はガラスの扉で出来ていた。さらに提灯までかかっている。


ランプで照らされた看板に『らーめん 中本』と書かれているの横目に扉を開けた。ガラガラといい音を立てたと同時に、


「らっしゃい」


と静かに聞こえた。


店には年配の男性が一人で働いていた。客は誰もいなかったので奥の方の席に座り、壁に貼ってあるメニューを眺める。席に座ると同時にビールジョッキ程あるコップにお茶を注ぎ、持ってきてくれた。


ラーメン、塩ラーメン、チャーハン。メニューにはこれだけしか書かれていなかったけど、どれも値段は250円。安いな。安い分量は少ないのだろうか。


量のことが気になりつつも取り合えずラーメンとチャーハンを頼んだ。少なければお代わりをすればいいし、多少不味くても安いから仕方ない。


お茶を飲むと乾いていた喉がすぐに潤う。おいしい。程よい甘みに、爽快な茶葉の香り。そして渋味。苦いのではなく渋い。


いいお茶だと思う。


お茶は好きだけど紅茶は好きにはなれないな。煎茶もほうじ茶も抹茶もコーヒーも飲むけど、紅茶は好きじゃない。香りが強くて味があまり分からなかったり、味は分からないのに苦く感じる。紅茶の場合は渋いじゃなくて苦い。


だから、最近流行というタピオカミルクティーとやらのおいしさも分からない。ミルクティーも余おいしくないし、タピオカに味がしない。もちもちした食感だけだ。タピオカミルクティーが大好きな友達においしさを聞いても、味はしない、食感を楽しむと言われた。食感を楽しみたいなら普通に食べればいいと思う。

それに、勢いよく飲めば喉に詰まってゴホッとなるし。

…友達にお茶は好きなのに紅茶は嫌いなお前は珍しい、と言われてからお茶を見るとふと思い出してしまうな。数年も前なのに。


「へい、お待ち」


目の前に置かれたラーメンを見て軽く絶望した。


…多すぎる。


何人前だ。まず器が普通のそれじゃない、鍋ぐらいある。そして山のようなもやし。麺が見えない。トッピングにはもやし、チャーシュー、半熟味玉とシンプルだがどれも量がおかしい。

とりあえず、山盛りのもやしを食べ進めながら、少し黒いスープを蓮華で掬う。


熱い。

もう一度、蓮華でスープを掬いフーッと冷ましてから飲む。醤油味だ。少し濃いが、魚介だしとの相性は抜群だ。磯の香りと体がポカポカする生姜のおかげで濃いが食べやすい味にまとまっている。


半分スープに沈んでいる分厚く切られたチャーシューにかぶりつく。中までだしが染みており柔らかく、肉ッした食感でますます食欲が上がる。


醤油色に染まっている麺を勢いよくすする。少しドロッとしたスープとよく絡んでる。すするたびに香る磯、これは多分しじみだ。

おいしくて、熱いのを気にすることなく次々とすすってしまう。


どんどんすすっていくうちに濃くなった口をリセットするためにチャーハンを食べる。ラーメンの異常な量に比べてこちらは普通だ。


皿を持ち上げて勢いよく掻き込んでいく。先にラーメンを食べたからか、丁度いいくらいの温かさだ。


食っては飲み込みを繰り返していくうちにトッピングで乗ってあった半熟味玉が目についた。


ラーメンから味玉を取り出して黄身の部分をチャーハンの上に乗せ、食べる。やっぱりおいしい。




スープを飲み、チャーシューを齧り、麺をすすり、チャーハンを食べる。これを繰り返していると、食べきれないと思っていた量でも難なく食べきれた。



食べきり、最後にお茶を一杯だけ飲みお代を払って店を出た。


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