『転』(砂礫零担当)
※新たな使用ワード
『バイオリン』『ダイス』
※スペシャルワード
色(紅・黒・白)
手の描写
喜怒哀楽の『怒』
「どっしぇぇぇぇぇぇっ!」
俺は驚きのあまり、ヘンな声を上げた。
変態神が膨れ上がったブーメランパンツと共に、ムキマッチョをテカテカと輝かせ、くるくると回りながら現れたからである!
ギラギラとした超新星が高速回転しているかのようだ。
言い換えるのならば、まさに……
アルティメイトオーガニックサンバイザーアルティメイトイラストレーターっっ!
「どっしぇぇぇぇぇえっ!」
変態神も驚きの声を上げた。
なんとなれば、膨れ上がったブーメランパンツの中から、あの2人が現れたからだっ……
1人は織田信長。
そしてもう1人は。
森蘭丸。こちらも、一目で分かる。
深淵のように暗く揺らめく瞳と、蠱惑的に微笑む、薄く紅を引いた唇。
ポニーテールのように一纏めにした艶やかな黒髪がサラサラと風に流れる。
透き通るような……
「マジに透き通ってるっ!?」
「あなたもでございましょう」
若干、棘を含んだ表情がまたオツである。
声も良い。滑らかに紡がれるバイオリンのD線だなっ
と、同じく透き通った織田信長が俺と少年の間に立ちはだかった。
「こら、お蘭に見惚れるでないっ!」
「ムチャ言うなっ!これが見ずにいられるかっ!」
なにしろ、いかにもセーラー服にルーズソックスが似合いそうな美貌である。
パラパラ廚の俺には垂涎の的なのだっ!
「ダメだ!」
「いや、俺にこそあの子は必要だ!」
「なにをぅっ!許さぬぞキンカンめっ!成敗してくれるっ!」
「俺のどこがキンカンだっ!しかも俺たちはもう死んでいる!」
俺の発言に、織田信長は憤怒の形相で幸若を舞いだした。
『人間50年、下天のうちを比ぶれば……』
扇を翻す手つきが堂に入っているな。さすがだ!
「くそぉぉぉっ後1年……後1年あればっ!天下統一できたのにぃぃっ!」
歌に被さって内心の叫びもダダ漏れ。
気持ち分かるなぁ……、と思った途端、俺の内心の叫びも勝手に出てきた。
「俺だってなぁっ!パラパラで天下統一したかったわっ!」
俺の唯一の趣味のパラパラ!
だが、コンテストに参加しても、おっさんな見た目でトップを取れない……この理不尽な悔しさっ!
「わ、私とて……!」蘭丸の内心の叫びもダダ漏れになっている。
「得技は、お色気と閨房術だけではございませぬ!後世の者どもに好き勝手言われたままでは死んでも死にきれぬぅぅぅっ!」
……うわー……確かに理不尽だな。
俺も、そう思ってたしな。
……悪かったよ、お蘭……
「さて、で、そんなお主らに提案なのじゃが」それぞれの理不尽な人生をリークしまくっている俺らに、変態マッチョ神がニコやかな顔を向ける。
「同じ志を持つ者どうし、協力しあって、より良き次の生を送るのじゃ!」
「「「協力の意味ってナニ」」」
「なんでも良いじゃろ!もう決めたんじゃ!ほれ、そこのダイスを振ってみよ!」
出た目を見れば、そこには『合体』とあった。
にやぁり、と楽しそうに笑う変態神。
「「「合体……!?」」」
うっかり、またハモってしまう俺ら。
「そうじゃ!ではお主!あの呪文を唱えてみるのじゃ!」
「……イヤだ」
「断るならこのブーメランパンツ脱ぐぞよ」
そんなモノは見たくないっ!
くそぉぉぉっ!
俺はヤケクソで叫ぶ。
「光秀ダイナマイトぉぉぉぉっ!」
ぴっっかぁぁぁんっ!
あたりに白い光が満ちる!
強烈な、太陽のプロミネンス!
「「「うぐぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」
俺たちは悲鳴を上げてのたうち……
やがて、闇が落ちて、何も分からなくなった。
目が覚めると、そこは。
俺が子猫の大群にひかれて死んだはずの駅前だった。
ラジカセから流れるパラパラの曲に合わせて、手を素早く振り上げ回し交差させている、途中。
「…………!?」
俺はセーラー服を着ている。
スカートからのぞくのは、ルーズソックスの似合う、しなやかな足。
「…………!!!」
思わず探したミラーに映る顔は……
森蘭丸だ!
薄い唇が勝手に微笑んだ。
「私は今度こそ、私として生きる」
俺の胸の奥からは、途方もないエネルギーと意志が沸き上がる!
『天 下 統 一 !!!』
その叫びに、俺は俺の渇望をのせる。
「憧れのパラパラマスターに!絶対になってやるぅぅぅっ!」
こうして俺たちは、それぞれの野望を果たすべく、驚異の合体転生を成し遂げたのであった―――
砂礫零さん
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