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魔法の力

どうも、ジャンです。

すこぶる機嫌が悪いです。

悪魔と名乗る、訳の分からない存在に理不尽な契約を迫られ、気がつけばナイフは喉元に。


平和を愛する私がなぜこんな仕打ちを受けなければならないのか。

なんとか無事だったから良かったものの平和なあの世界が恋しくなりますよ。


刺してきた男はどうなったか、ですか?

そこの地べたで、へしゃげた両手足を使って全身で踊り狂ってますよ。

汚い格好とのたうち回る動きがウジ虫そっくりです。

周りはそれを見て迷惑そうにしているので少し黙らせよう。

憂さ晴らしも兼ねて。


「があああああー!!いでぇーーー!!!あああぁぁーガッ!?」


おっと黙らせる為に口を狙ったが顎に蹴りが入ってしまった。

まぁ綺麗に気絶してくれたから結果オーライでしょう。

皆さんも静かになって喜んでくれるでしょう。


あれ?何故私をそんな目で見るのですか?

私にご用件がおありで?

ふむ、気のせいだったようですね。


と、そんなことより今の状態です。

間一髪間に合いましたが、口が割と酷い状態です。


謎の黒いモヤモヤから解放されたと思った瞬間、喉元に迫るナイフの切っ先を噛むことで何とか事なきを得ました。

その代償として口の中は鉄の味でいっぱいです。


口の中はナイフの錆びた破片がまだ残っているし、口元の右側が切れて未だに血が出ている。

お陰で生肉を齧ったゾンビみたいな見た目になっていると言うのは誇張気味か。


しかし、このまま放置すれば破傷風や化膿などで本当にゾンビの仲間入りしそうだ。

ともかく近場の水場へ行って洗い流すついでに眠気覚ましと兼ねて頭を冷やしに行こう。

荷物も忘れずに、いってきます!



◆◆◆



ふぅー、スッキリしましたジャンです。

今は井戸の近くで休憩中です。


かなりの激痛でしたがなんとか水で口をゆすぎ、傷口をできる限り洗いました。

その後は持っていた炎症止めとして村でよく使われていた薬草を煎じた塗り薬で手当てしたところでやっと血が止まってくれました。


落ち着いたところで、とりあえず身体の調子の確認がてら『魔法』について考えてみましょうか。


まず身体は、悪魔のせいで寝不足なのと口の怪我で身体は熱っぽいが、口以外に外傷や打ち身もなさそうです。

むしろ普段よりも調子が良い気がします。

興奮して脳内麻薬でも分泌されているのでしょうか。

とりあえず傷のこともあるのでできる限り安静に落ち着いて行動するべきですね。


さて、となると肝心の『魔法』ですね。

ぶっちゃけると、よくわからんというのが正直なところですね。

情報が少な過ぎる事と何らかの代償があるという事が問題ですね。


先程、ウジ虫野郎に刺される時に恐らく魔法だと思われる何かを使ったような感覚がありました。

流石にあの距離まで迫ったナイフを口で受け止めるなんて人外的行動が過去にできたことなんて一度もありません。


だが、あの時に見える景色は何故かスローモーションのようにゆっくりとハッキリ見え、歯で受け止める事さえ容易でした。

噛んでナイフを止めるなど普段なら不可能。

口内まで突き刺さって御陀仏が当たり前なのに驚くほど力が入り、これが魔法の力かと否応無く理解した。


己が世界を変革する力、でしたか。

素直に解釈するなら、自分の世界、つまり私自身を変化ないし、向上させる能力と考えた方がいいでしょうか。


遠くを把握できたり、重いものを持てたり、より俊敏に走れたりと、自分を増強するには勝手の良い力というわけですね。

他にも色々できそうですが、試して把握していくにしても悪魔のあの言葉。


『使うたびに我々に少し近くなる』


嫌な予感しかしない。

この力、かなり便利な力ではあるが恐らく多用すると取り返しのつかない事態になりかねない。

ならば、今回のように危急の事態にのみ使用するべきですね。


どうも使い方自体は腕を動かしたり歩いたりする自然な動きの延長のようなものらしい。

少し意識してやれば簡単に発動するようです。

これだけの手軽さなら咄嗟にでも使えます。

それだけに何も考えずに使ってしまう機会が増えそうで怖いですね。

ある意味でこのお手軽さはデメリットになります。


だいたいこんなところですかね。

まったく余計なモノを押し売りされた気分ですね。

もっと欲しがる人に渡せば良いものを、ありがた迷惑とはこの事ですね。


さて、薄暗かった朝も日が昇ってすっかり明るくなってきたので休憩は止めにして、行く予定をしていた神殿に向かいますか。

寝不足やら傷で体調は良くないが、生活に余裕があるわけでもないので仕方がないが多少無理しても行動しなければいけない。


あぁ、平和な日々が送りたい。

神殿で悪魔の呪いが、と言えばお祓いでもしてもらえないものか。

地べたにウジ虫。

血だらけジャン。

魔法ってなんぞ。

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