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酒場

更新遅くて失礼。

やあやあ皆さん、こんばんは!

ジャンです!

私は今陽気なおっちゃんと呑みながらこの町のことを教えてもらっています。

え?なぜ酒場に来たのかですって。

それはやはりここに集う知識人の方々にご教授願いたいことがいっぱいあったからですよ。


私がいたあんなしみったれた寒村よりこんな素晴らしい町では知りたかった情報がたくさんありますね。

今となりで酔いつぶれて寝込んでいるおじさんから聞いた話は特にありがたかったですよ。


いわく、


『ここタペスはファラン王国の東端の町であり、ここから西に歩いて一週間ほど進むとリーアンという大きな街に行ける。そして首都ツァーリはリーアンから更に西へ行ってラモールという街の北へ向かった先にあるらしい。』


『現国王のフレデリック四世はとても端正な顔つきをなさっているそうだ。

そしてとても慈悲深く、荒れたこのファラン王国を慈愛で優しく支えてくださっている。

その逞しく麗しいその御姿から世間では端麗王と呼ばれている。』


『死の病で近くの町が猛威をふるっていて、すでに町の住人の四分の一が病気になっている。

おかげでここタペスまで流れてくる人が増え、ここいら近辺も治安が悪くなってる。

そのせいか最近ゴロツキ連中が増えて困ってる。』


『こないだ屋根の修理の時に足を怪我した友人が神殿で治してもらった。

たまたま居られた神官長様が治療してくださって、折れた足が治ったようだ。

持ち金すべて寄付したらしいが、命には代えられんからな。

折れた足では食ってはいけないとなると行きつく先は野垂れ死によ。』


と、まぁ有益そうな情報としてはこんなものである。

他の情報はどこぞの店がうまいエールを置いてるだの、最近の若者は神殿の教えを守らないだの、大して糧になりそうな情報はなかった。

とまれ、公務員になりたい私からすればとても有益な情報が手に入った。


今後の予定としては路銀をある程度稼ぎ、西にあるリーアンを目指そう。

東側の中では一番大きい街らしいから公務員登用試験なるものも募集している可能性は高い。

もしリーアンでなくとも、そのまま首都に向かって大きな街を渡り歩けばどこかしらで見つかるだろう。

なに、私はまだ十五歳、時間は充分にあるのだ。

焦る必要はない。


では、程よく腹もくちくなったところで今日はここの酒屋で泊まらせてもらおうか。

明日は金策の為に動かなくてはいけないが、その前に朝から神殿へ向かいたいと思う。

私は敬虔な教徒ではないが、ほとんどの人は神殿の教えを信じているからこそ知らねばならない。


残念ながら村の神父も私に協力的でなく教義など碌に教えてはくれなかった。

今後、上司や同僚とそういった常識をしらないとなると軽んじられることになる。

逆に知っていればそこを糸口に人間関係を円滑にできるようになるはずだ。

知識は力なりというやつだ。


それに知らないより知っていた方がいい、それが国に次ぐ大きな権力を持つのが神殿だからだ。

この世界思った以上に信心深い者が多い。

治癒の魔法、と呼ぶことにするがそんな呪いじみたことができるのは神殿のみ。

実際に足の骨折を治せるぐらいだ、本当にご利益があるかもしれない。

そのあたりのことも含め明日は神殿に行かねばならない。


というわけなので明日は早い。

さっそく酒屋の人間に二階の大部屋で宿泊する旨を伝えて三カパーを渡す。

こんな雑魚寝部屋で寝るのは初めてなのでちゃんと寝れるかわかりませんが、皆様おやすみなさい。


◆◆◆


皆さまは明晰夢と言われる自分が夢を見ていると自覚するときはないだろうか。


夢の中からこんにちは、ジャンです。

どうやら私は今、夢の中で不思議な空間にいるようです。

何もない部屋の一室にたたずんでおります。

見渡す限り何もなく、目の前にドアが一つあるだけ。


夢は脳が見せる情報処理かつ整理をしている時に行われると言われているので、これまで色々起きた事態を自分なりに消化しようとしているのでしょう。

何もない部屋にドアがひとつという状況がなんの情報を表しているのか謎ですが、夢など脈絡も意味も不明なものなので気にすることでもないでしょう。


それにしても思ったより思考がはっきりしてますね。

たしか、今はあの粗末な雑魚寝部屋でイビキの合唱がある中無理やり眠った気がするのですが、そのせいでいまいち寝つきが悪かったのでしょうか。


「やあ!」


「っ!!」


びっくりしました。

先ほどまで何もなかった部屋でドアに向かって進むか考えていたところに、いきなり背後から声を掛けられて心臓が止まるかと思いました。

ですが、それよりも当然気になる何者かという疑問に、振り返るとそこにはスーツに身を包んだ三十前後で、とても見慣れた愛嬌の欠片をどこかに落としてきたような顔した男性。

かつての私がそこにいた。


「おや、びっくりさせてしまいましたか。これは申し訳ない事をいたしました。」


「い、いえ、こちらこそご無礼を。」


「ご丁寧にどうも、どうも。早速なのですが、時間がないので端的にお伝えいたします。」


「何でしょう?」


「私と契約いたしませんか?」


「契約内容の詳細を希望する」


何言ってんだこいつ、と言いたい言葉を飲み込み得体の知れないかつての私に続きを促すことにした。

今晩の宿は情緒あふれる酒場。

酒場といえば情報、情報と言えば酒場。

夢の中?

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