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タペス

こ、こんにちは、ダー村出身のジャン・ダーニング、です。

村が野盗に襲われて、なんとかここまで逃げてきて。

家族も隣の家のエマさんもみんな、みんな殺されて・・・僕ひとりだけ・・・。

やっと、やっとこれたんだ・・・。

ちょっと前の街道でどこかの村の人が三人も殺されてて、とっても怖くて、だから、だから・・・ひっく。


「坊主、大変だったな。ダー村が襲われた話は聞いてる。このタペスにも逃げられた人が何人か来ている。」


「そうだぞ、坊主。もしかしたら知り合いがいるかもしれない。この木版に逃げてきた人たちの名前がある。読んでやるから知ってる人がいたら教えてくれ。」


「ひっく、ひっく・・・わかった。」


「じゃあ、まずは・・・」


◆◆◆◆◆


はてさて、皆様ご機嫌麗しくジャン・ダーニングでございます。

太陽が中天にかかる頃合い、幼気な農民の子のふりをしつつ何とか町に入り込むところでございます。

知り合いの名前はあった、といっても元々大した人数のいる村落だったわけではないのでほとんど皆が知り合いみたいなものだ。

だが、ここで馬鹿正直に知り合いがいるというと間違いなく面倒なお荷物が付いてきてしまう為、親切なタペスの門番には、誰も知り合いがいない、孤児院でなんとか助けてもらう、どこに孤児院があるか、といい早々に町に入ることにする。


「じゃあな、坊主。お前の親もお前だけでも助かって、きっと安心して見守ってるよ」


「ありがとう、やさしい門番さん。頑張るよ!」


はぁ疲れた。

精神がすでに大人な私からすればこの愛らしい子供の真似というのが一番堪える。

はっきり言って私に演技の才能はない。

あまり長く子供の真似をし続けると簡単にボロが出る。

そうでなければ村での生活も家族の眼差しもう少しは平穏であったかもしれない。


まぁいまさら無くなった村のことなどどうでもいい。

大事なのはこれからの事だ。

そう、これからの事をどうするか、という喫緊の課題がある。

普通の子供であれば孤児院に潜り込み、成人まで衣食住を確保しつつ何かしらの技能を身に付ける。

運が良ければ丁稚なり下働きとしてどこかの店なりで住み込みを目指す。

運が悪いもしくは無能であればそこらのごろつきや浮浪者の仲間入りとなる。


しかし、前世の記憶がある私からすれば孤児院で得られる大した技能でもないものを成人までの五年を掛けて身に付けるなどあほらしい。

ましてや、孤児院を出てからの選択肢がろくでもない生活になるのは目に見えている。

では、私はこれからどうするべきか。


私のなけなしの知識から導き出す答えは、公務員だ!


あぁビバ安定、平和な日々よ!

あんな寒村にいたせいで未だにどんな規模の国があって、どんな街や都があるかは知らないが、人がいて集団で生活をしている上に統治機構の存在があるとなれば、国という最大の枠組みがあるのは間違いない。

であるのならば、国がつぶれるまでではあるが公務員つまりは統治側でいる限り食いっぱぐれることもなければ、多少のトラブルなど国という最大権力が下っ端だろうが多少の盾にもなってくれるだろう。


それに前世でいうなら中世ごろの発展具合。

ここが田舎なだけで実は他の町や都なんかはもっと時代が進んでいるかもしれないが、権力者側にいた方が圧倒的に有利であるのはどんな世の中でも確かだろう。


そこいらのどこぞの木っ端の商店など数年先、いや早ければ数日先には消えてなくなってる可能性が大いにある。

ボロ船に乗ったところで沈むのは自明の理、それがたとえ一流の船乗りであっても、だ。

元から立派な船に見習いでもいいから乗り込んでしまえば何もしなくても沈むことはないだろう。

それはいつの世、たとえ前世の日本であっても変わらない。

つまり、権力は偉大であるということだ。


さてさて、いまさら当たり前のことを考えるのは止めて早速行動に移るとしよう。

時間は有限である。


まずは、服屋に行かねばならない。

それはなぜか。

答えは単純、人は見た目が第一なのですよ。


今の私の恰好はどこからどう見ても、どこぞの村のいち農民の子ども。

知り合いと出くわすことを考えて、村では猫背気味に俯いて過ごしてきたのを一転、背筋をきれいに伸ばし、伸びっぱなしにした髪をできる限り清潔感のあるようにバッサリと切り、印象をガラリと変えたとは言え着ている服までは変える事はできない。

はっきり言って小汚い子供にしか見られない。


私が雇用者ないし店員だとして、身なりが汚い相手に不信感を抱くのは当然のこと。

それがまして子供となればまともに相手してもらえるはずもない。

だいたい人間の印象は最初の三秒から五秒ほどで判断されることがほとんどだが、その内の見た目つまりは視覚情報だけで約半分を占める部分が印象付けされる。

後は聴覚情報などにもなるが、まずは話を聞いてもらえないことには始まらない。

話は逸れたが見た目というものは馬鹿にできないということだ。


というわけで、服屋を探すことが第一目標となる。

では、いってきます。

タペス到着

子芝居、門番ちょろい

服屋へレッツラゴー

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