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ならず者

クソったれな皆様ごきげんよう。

ジャン・ダーニングです。

皆様ご存知の通り、私は平和を愛してやまない人間です。

ん?ご存じない?おかしいですね。

まぁいいでしょう。


はてさて、いつの世も旅というものはすんなりいくことはほとんどありません。

人生の旅路などの言葉がある通り、苦もあるし楽もあると、どこぞのご老公もおっしゃっていられました。

今は一昨日に村が野盗に襲われ燃やされてしまったので止む無くタペスという近隣の町に避難しに行く道中でごさいます。

昨日は特に大きな問題もなく順調に進んでいたのですが、町まであと半日というところでクソったれな皆様とお会いした、という次第でございます。


「なにブツブツ言ってやがんだ、このガキは?」


「これは失礼、あまりの不幸続きに少しばかり落ち込んでいたのです。」


「はぁ?何ワケのわかんねぇこと言ってやがる!気色の悪いガキだぜ!!まぁお前が不幸になるってのはあってるがな!ガハハハ」


はぁ、やはりこの手の輩は品性というものが欠如している。

大方この辺の村からはみ出たならず者だろう。

たった三人な上、うす汚れた服に粗末な薪割り斧や鉈を持ってるところからして予想がつく。


しかして、ゴブリンとは比べるべくもなく面倒な相手である。

何しろ人間。

考える知恵もあれば協力して事に当たるという団体行動が可能だ。

とても厄介なものである、普通であれば。


こいつらバカ・カス・ゴミの三馬鹿トリオはならず者だが、そこらの農民よりしっかりとした体格をしている。

それでも食うに困ってか、痩せ気味なのは当然か。

こんな汚いナリじゃあどこの村もまともに相手してくれないし、まともな奴らだとは到底思えない。

こうやって私のような格好の獲物を探して食いつないできたゴロツキだろう。


ともあれ私からすれば余裕を持って対処できる相手だろう。

モンスター狩りのおかげで私は村では大人も含めて上位の膂力を有していたし、前世の素人知識ではあるが人体の構造など普通の農民が知っていない事を理解しているからこそアドバンテージは私に大きくある。

それに、どうみてもこいつらの構えや態度からして、今まで抵抗される相手と事を構えたことは無さそうだからこそ落ち着けるというものだ。


「おい、気色の悪いガキ!とっととその身包み全部置いてお家へ帰んな!痛い目にはあいたかねぇーだろ?」


「えぇそうですね。ではまずこの荷物から下ろしますね」


やはりバカだ、こいつら。

わざわざ声を掛けて近くに寄ってきて、殺さずに物だけ奪おうとするなんて物盗りとして素人もいいところだ。

ゆっくりと周りを見渡しながら重荷になりそうなバックパックを下ろすが、潔く荷物を手放すことに疑問を持っていない。

周りに伏してる仲間も居なさそうだし、武器になるマチェットを腰に佩いたままにしていることに注意すらしない。

所詮、村落出のならず者などこんなものか。

では、身軽になったところでさっそく。


「あん?まだ全部置い「シィッ!」て・・・」


「あっ兄貴!?」


「な、なんだ?なんだ!?」


まずはリーダー格のバカから。

小さい体だからこそ懐に入りやすかったのもあるが、馬鹿みたいに踏ん反り返っていたから首が狙いやすかった。


続いて兄貴とか叫んでたカスに向かって目の前にあるバカの影から飛び出し、柔らかい腹を薙ぐ。


「えっ?あっ!アァアアアアー!!!」


「こいつ、なんだ!?なんなんだよー!?」


おっと、腹からはみ出る腸をかき集めてるカスを見て、さっきからなんだかんだとうるさいゴミが逃げようとしている。

落ちている石を拾って顔を狙って投げよう。


「な、なんだ!?あぶねっ!!」


「さようなら」


顔面に飛んできた石を避けるのにしゃがんで体勢が崩れて動きが止まった隙を逃さず、すかさず近寄りついでに拾った大きめの石で頭をかち割る。


「念のためこいつでトドメっと」


ゴミが持ってた薪割り斧を延髄に叩き込んで、ついでに今だに腸をかき集めてるカスの脳天にも叩き込む。

どうせボロボロの斧だったし、脳天に刺したまま放置でいいだろう。

カスの服でマチェットに付いた血糊を拭き、予備としてバカが持ってた鉈を貰っておこう。


さて、こいつら大した物も持ってなかったことだし野犬なりが寄って来る前にさっさと進みますか。


ただこいつらのせいで余計な手間をとったせいで今日は町まで行けそうにもないな。

まぁいい、昨日と同じように目立たない場所で野宿してから余裕をもって向かえばいいだろう。


まったく平和な日々を心から愛する私がこんな暴力だらけの世界で生きていくなど哀しくなるね。

町まであと半日の距離で出くわすならず者

泣く泣く撃退

平和を愛する男、ジャン・ダーニング

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