世界のおわり
目覚めると学習机に伏せたまま、俺は眠ってしまっていた。
伸びをすると関節がぱきぱきと鳴り、節々が痛む。
「いい天気だ」
背もたれに寄りかかり、窓を眺める。
絶好の出航日和、メイが大宇宙の海原へ旅立つ日にお天道様は華々しく凱旋していた。
強大ななにかに翻弄され、引き裂かれる若者たち。
今までにどれほどの男女がこんなベタな恋愛をしたか知る由もない。
さようならをする前に、メイへ感謝を述べておけばよかった。
人嫌いなメイを守っているつもりが、人を遠ざけようとした俺を彼女は守ってくれていた。こんな重要なことを都合良く忘れてしまっていたなんて、つくづく俺は阿呆だ。
ぐううと腹の虫が喚きだす。
思い返せば昨晩からなにも食べていない。
「ヘコんでても腹は減るのか」
笑いが抑えられなかった。
人間なんて所詮は遺伝子に操られる肉塊でしかなく、栄養が足りなくなれば腹も減る。
心なんて複雑な機関を搭載したばかりにややこしくなるのだ。
「飯作るの面倒だな。弁当でも買ってくるか」
俺は立ち上がり、のそのそと灰色のパーーカーを着て、ジーパンを履く。
群青色のマフラーを巻いて部屋のドアノブを捻る。