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拗らせ捻くれ少年の秋の茜と青い春  作者: 使い捨て系鉛玉
3/6

化け物生徒会長は融通が利かない

とりあえずここまで投稿します。


 

「どこから来たのー?」

「東北の方から」

「こんな変な時期に転校って珍しいね」

「ちょっと父の仕事の都合で」

「髪すっごい綺麗だね!」

「そうですか?ありがとうございます」


 ……隣がうるさくて眠れない。


 現在朝のホームルームを終え、一限目の前の休み時間。

 この曜日はいつも窓を眺めながら、一限の担任の授業(すうがく)が終わるまで惰眠を貪ると決めているのだが、これでは無理だ。


 担任ならば俺が寝ていようが授業中屋上へ行こうが、はたまた普通にノートを取っていようがどうせ欠席扱いにしかしない。

 テストさえまともに採点してくれないのだから、通知表の成績はいつも最低。

 まあ、他の教員も似たようなモンだが。


 ともあれ、眠れないのならば仕方ない。

 転校生からの視線なんて無視して屋上へGOだ。

 というかなんでこっち見てんだよ転校生。

 自他共に認めるボッチの俺でも、そのすぐ隣でクラス中の人間に囲まれてる人気者なんかに見つめられたら居た堪れなくなるだろうが。


 ◇


「うん。今日もいい天気だ」


 やはり屋上は素晴らしい。

 一般生徒が立ち入り禁止なお陰で俺の存在に迷惑する他人も居ないし、鍵も針金で開く。

 この時期は気温も丁度良く、隣が騒音の塊と化している教室より断然寝やすい。

 寝転んで目を瞑れば、ほらもう今にも夢の中。

 正にベスト・オブ・寝床。


 しかし実は、一つ問題点がある。


「何が『ベスト・オブ・寝床』だ」


 確率で俺の睡眠を意図的に妨害する存在がいる事だ。

 今日は運悪くエンカウントしてしまったらしい。


「人をRPGの敵みたいに言わないでくれるかな?

 というかさっきからわざと口に出してるよね?」

「ああうるさいうるさい。

 俺の自己完結されたこの安息を壊さないでくれ」


 目を開けると、頭上に少女が一人。

 あの転校生にも劣らないほどに美しい黒髪を靡かせながら腕組み偉そうに立っていた。

 その鷹揚にして不遜な態度に似合わず、背が低く声も可愛らしい。


 こいつは『哀原(あいはら) (かなで)』。

 まあ、どこにでもいる化け物生徒会長さんだ。

 全国模試は常に偏差値80をキープ。

 体育の教師から授業の参加を断られるレベルで身体能力が高く、この間太平洋を日本からアメリカまで横断したのだとか。

 領海はどうしたのかと聞いたら不穏な笑みを浮かべていたのでそれ以上は聞かなかった。

 ともあれ、こんな化け物が生徒会長として真面目に学校で働いてるもんだからあたりの不良はすっかりナリを潜めてしまった。

 そしてここ屋上は一般生徒立ち入り禁止。

 こいつが俺を取り締まるには絶好のシチュエーションな訳で。


「……はあ」

「やっと目を開けたね」

「……枕元に立ってるとスカートの中見えるぞ?」

「生憎、君に見られたところで困るような物をボクは履いていないさ」


 そういやなんでコイツの一人称って謙譲語なんだろうか。

 口調や態度は尊大なのに。口調や態度は尊大なのに!

 それとも自分が女であるという意識が低いのだろうか。

 だからスカートのまま男子の枕元に立てるのだろうか。

 ならば一応言っておこう。


「女子にとって基本下着は男子に見られて困るものだと思うぞ?」

「いやいや勝手に痴女の烙印を押さないで欲しい。

 そりゃあボクだってパンツを見られたら流石に恥ずかしいとも。ちゃんとスパッツを履いているさ。

それとも、ボクのパンツが見られると期待しちゃったかい?」


 意地の悪い笑みが、その幼さすら覚える顔に浮かぶ。

 こちらを揶揄おうとしているのが丸わかりだ。

 というか女子の癖にパンツパンツうるさい。


「悪かったな。こちとら健全な男子高校生なもので、ついうっかり妄想が捗ってしまうんだ。

 だから未だにお前のパンツが見える気がするし、スパッツなんか履いてるように見えない。

 これが妄想だってんだから恐ろしいよな」

「……?なにを」

「妄想で悪いが、縞柄のパンツなんて可愛らしいものが、中々どうしてよく似合っているぞ、哀原」

「まさか……」


 表情からみるみる余裕が失われていく哀原。

 そこに、突き落とすように言ってやる。


「パンツ丸見えだ。この痴女」

「なっ!?」


 哀原の顔がカッと赤く染まり、化け物染みた動きで後ろに跳ぶ。

 こちらに背を向け座り込むと、やがてこちらをゴミを見るような目つきで睨みつけた。

 その視線に対し、今度はこちらが意地の悪い笑みを浮かべる。


「あっはっはっは。全部ウソだバーカ。

 ちゃんと俺にはスパッツしか見えなかったし、縞柄のパンツなんてそれこそ俺の妄想だ。

 もしかして、パンツの柄が当たってたり?」

「……」


 不貞腐れたように黙り込んで返答がない。

 そうか、当たりか。それはちょっと悪い事をした。


「ま、まあ?俺は可愛らしいと思うぞ。なあ生徒会長さま?」

「……それ以上喋ると舞花にチクる」

「はっ?いや、ちょ……!」


 それはズルイだろう。いくら生徒会で接点があるとは言え、人の妹を盾にするのは卑怯というものだ。


「兄がセクハラをしてきたなんて言ったら、どんな反応をするだろうね」

「待て分かった良いだろう話を聞こうじゃないか」


 これが舞花に伝わるのはマズイ。

 セクハラ兄貴と妹様から軽蔑の視線を受けた日には生きていられる自信がない。


「何が望みだ。出来る限り要求を呑んでやろうじゃないか」

「出来る限り?『なんでも』だろう?」

「いくら脅されようと不可能なものは不可能だ。

 その条件だけは譲れない」


 絶対に『なんでも』とは言わない。どうせこういう時、あちらの目的はあくまでこちらを自分の命令に従わせる事であって、握った秘密を言い触らす事ではない。だからこんな風に強気に出ても譲歩するのはあちら側だ。

 

「……チッ、まあ良い。ならボクの奴隷になれ。

 これから命令する事に対して可能な限り努力するだけで良い。

 これならば可能だろう?」

「日本人として定められた法に違反する事は出来ない。

 よって不可」

「……そうか、違法は駄目か。なら校則を守ってもらおうかな。

 うん。それが良い。君はこれから校則を破らず真面目に授業を受けたまえ」

「うげ……」


 これはしてやられた。

 当たり前の事を言っている分不可能な点が見出せない。

 しかも弱みを握られている所為で穴がない。

 破った途端、舞花へ俺の悪評が伝達する。


「不可能とは言わせないぞ。ほら、早速ここから出て行き給え」

「お、横暴だーーー!」


 こうして俺は屋上を追い出された。

エタらなければ中間試験終了後に続きを投稿します。

気づいたらこれそのものが消えてるかも。

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