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拗らせ捻くれ少年の秋の茜と青い春  作者: 使い捨て系鉛玉
2/6

転校生

2話目投稿。

今週中に3話を投稿し、しばらくストックを書き始めます。

しかしやはりメインはこちらでは無いので、遅くなるかと。

 

「転校生?」

「そうなんだよ。それも女子」

「マジか。可愛いのか?」

「いやあそこまでは」

「なんだよ〜。あ、そういや数学の課題やった?」

「え、アレ今日まで?」

「いいや明日」

「なんだよ〜」


「ねえ、今日カラオケ行かない?」

「あ、いいね。空けとくよ。サッちゃんどんな奴歌うの?」

「『Heat Heart Beat Hard』とか、あ、『叫歌(きょうか)』とかも結構歌う、かな?」

「そりゃ『叫歌』は女子みんな歌うでしょ」

「むしろ歌えないと気まずくなるわ」

「アレめっちゃ流行ってるよねー。私達と同い年とか思えないわー」

「だよねー。大人びてるっていうかさあ」

「そうそう!」

「あ、そういえばさあーーー」


 ああ、今日も賑やかだ。

 教室の端っこ、窓際最後列から全体を見回し、まるで他人事のようにそんな感想を浮かべる。


 ふと左手にある窓を覗けば、もう九月下旬だというのに未だ青空には雄大な入道雲が佇んでいる。

 ただ、窓より入り込んでくる風は少しづつ涼しくなっているように感じた。


「平和だ」


 こんな風に人と関わらず景色をゆっくりと眺める事が出来るのだから、存外孤独とは素晴らしい。


 窓際の最後列にて、俺はいつもの通りそんな馬鹿な事を馬鹿みたいに独り考えていた。

 ボッチの遠吠えにしか聞こえないかもしれないが、実際周りに人が居ないというのは本当に気楽でいい。

 衝突も無ければ気遣いも必要ないし、他者や自身の肯定否定に苦悩することもない。

 まあ、そんな考えだから右隣が空席だったり前方が不登校だったりするのかもしれないが。

 いやほんとこの席には何かの因果を感じる。

 四方に誰も居ないとか、俺はイカサマなどした覚えがないのだが親切な人でも居たのだろうか。


「席に着けー」


 おっと担任様のお出ましだ。

 立っていた者は皆席に着き、教室が静まり返る。

 そんな中俺はと言えば、机に突っ伏した。

 しかしそんな俺など視界の端にも入らないらしい担任は、構うことなく話を始める。


「さて、今日の予定の連絡だが、その前に今日から転校生がやってくる。

 ほら、入って来なさい」


 教室の扉が開く音がいやに教室中に響き渡り、直後、辺りが、まるで押さえつけられたかのような不自然な沈黙に包まれた。


 流石に違和感を覚え、顔を上げると、その人物が目に入った。

 黒板の前に立つそれは、少女。

 但し、決して普通の部類には属さないような特異。


 言い表すならば、白。

 そのたった一文字が、どこまでも実に的を得ていた。

 透き通るような肌や髪の色などの見た目はもちろん、その雰囲気もまた清廉潔白な、やはり白のイメージを醸し出していた。強いてそうでないものを挙げるとするなら、その真っ赤な瞳があるけれど、決してこのことは彼女の『白』を損ねていない。むしろコントラストとなって引き立てているほどだ。

 と、随分長々と語った訳だが、要するにめっちゃ美人。

 いや、浮かべている笑顔から純粋さや幼さの類を感じる為、美少女と形容するのが適しているかもしれない。


 さて、そんな彼女を見た者の反応は様々だった。

 見惚れる者、我に返って必死に無表情を繕おうとする者、ある者は自身の身嗜みさえ整え始める。

 いずれにしろ、全員が全員、一度は転校生に意識を奪われてしまっていた。


 俺は……まあ例外という事で。

 その辺はちょっと複雑な事情が絡んでくるのでまた今度話すとして、兎にも角にも担任含む教室中がその少女によって沈黙に沈められてしまった。


 俺はそんな教室をグルリと見渡すと、しかし直ぐに興味が失われ、再び窓へと視線を戻した。

 単純に、転校生なんえいうものがどうでも良かったからだ。

 確かにこの視線独り占め系転校生をあんな詩的に表現し、美しいだの素敵だのと評価したものの、それは客観的に見ようと思えばの話であって、主観的な意見を述べさせてもらうならば出てくる言葉は全然違う。

 例えば先程散々褒めちぎった真っ白な髪。

 それに対して俺が思うのは、変に目立って大変だなーとか、小さい頃それが原因でイジメられたりしたんだろーなーとか、後ろ向きで禄でもない事ばかり。

 そしてその程度の感想なんて数秒もすれば忘れるし、その原因への興味も失せる。

 つまり、言い換えればどうでも良いのだ。窓から見える雲の一つがアインシュタインの写真と酷似している事の方がよっぽど重要だった。

 というか本当にそっくりだな。凹凸や影まで使って再現が為されている。


 ふとそこで、教室の沈黙が妙に長い事に気がつく。

 転校生が入ってきたからかれこれ五分。先程自己紹介も終えていた気がする。

 三分前に既に我に返っていた者も居たはずなので、そろそろどよめきの一つでも起こって然るべきではないだろうか?

 気にしなければいいのに、結局好奇心に負けてクラスの様子をこっそり伺う。


 すると、なんという事だろう。教室中の人間の視線がこちらに集中していたのだ。

 一応前置きしておくが、俺はあまり注目を集めるタイプの人間ではない。

 むしろ可能な限り接触することや関わることを避けられるような真性のボッチだ。

 だのにここまで容赦なく視線を浴びるなんて、いや、視線は俺から少し外れているような……?

 と思ったが、やはり俺に向いているものもあった。

 俺をよく知らないという共通点を持つ人間、担任含む男子複数名は確かに俺を睨みつけている。

 だが、それ以外のほとんどはその直ぐ横を見つめていた。

 つまり俺とその隣を見つめる二種類の視線がある。

 担任に至っては俺を睨んでは視線を横にずらして鼻の下を伸ばしてとを器用に繰り返していた。

 どんな怪人百面相だよ全く。


 さてそれにしても、本当にどうしたと言うのだろう。


 結局思考だけでは状況は掴めず、仕方なく俺を見ていない方の視線を追って右を向くとーー


「あの、君が隣の人、だよね?よろしく」


 ーー真白の転校生が、空席であった筈の隣の椅子に堂々と腰掛け、笑顔でこちらを見つめていた。



捻くれ主人公の一人称視点って面倒くさい。

文才が欲しい……。

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