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精神の蜘蛛  作者: 歌い鳥
1/3

蜘蛛

二作品目!

どうぞご覧ください!


【蜘蛛】


それは一般的にいえば『独自の世界(蜘蛛の巣)』を張り獲物を捕らえ、捕食する蛛形類の生物である。

だが言葉だけではかんたんだろうが実際はそれぞれの種類によってより正確に、確実に網に掛ける工夫が施されていたりする。


これはこの高校に潜む人間(蜘蛛)の話である。





蛛波糸織(もなみしおり)


足羽高校(あしばこうこう)2年A組、出席番号32番。教室の窓側一番後ろの席にて外を見ている。」


教室の前側の扉から顔を少しだけ出している、見るからに根暗な男子が言う。


「はぁ。今日も糸織さまは可憐だ…!」


隣で報告を受けたもう一人の男子が呟いている。、こちらは髪を染め、耳にピアスもある。かなり目立つヤンチャそうな男子だ。顔も悪くはないだろう。


「その意見には賛成だけど…なんで糸織さんはいっつも1人なんだろう」


先ほど報告をした根暗そうな男子、頼倉明道(よりくらあけみち)が疑問そうに言う。


「女子も全然話しかけたりしねーもんなー。たぶんあの美貌に嫉妬してんだな。」


ヤンチャそうな男子、上野大貴(かみやだいき)は口を大きく横に広げニッとした顔で笑っている。


「男子にいたっては迂闊に近づける雰囲気じゃないもんね。話しかけたら『話しかけないでくれる?』って言われそうな雰囲気。」


「あはは!言われそう言われそう。まぁ俺はな!毎日あの美しいお姿をこの目に焼き付けられればいいんだ!そうすればなにも問題はない」


苦笑いして話す明道に対し、大笑いしながら恥ずかしいことを口にする大貴。周りの視線としてはもちろん氷点下。こんなことをいつもしているおかげで2人とも高校に入ってから彼女ができたことは一度も無い。(明道にいたっては『いままで生きてきて』だが。)


「あ。てかそろそろ授業始まるな!もどんねーと。」


大貴が時計を見て言った。


「では!糸織様!また次の時間うかがいますんで!」


大貴が手を合わせ神を敬うかのように礼をして急いで走って行く。


「よし、僕も戻んないと。」


明道も彼女を一目見てから急いで自分の教室に向かって走った。






(はぁ、うるさい。)


蛛波糸織が思う。


(全部聞こえてんのよあのバカ2人…あんなやつら名前も知らないわよ。てかそもそもほかの奴らもなんでいちいち休み時間のたびに騒ぐのかしら。ほかにすることないの。暇なの?___わたしも外見てるだけなのだけどあいつらよりは有意義よ!)


糸織は心の中で葛藤する。が、けっして顔には出さない。いつもの大人びた美しい顔のままだ。


(とりあえず、次の休み時間はトイレにでもいってようかしら。流石にあれは私にも視線が来ちゃうわ。)


糸織は考え事が決着し、落ち着きを取り戻したところでノートを写してないことに気づき急いで写し始めた。



___「じゃあ。今日はここまで!終わりの挨拶頼む!」


『「起立。ありがとうございましたー。」』


先生が授業を切り上げ、日直の生徒が号令を掛ける。

そして挨拶が終わりみんなが着席する中糸織はそのまま座らずに廊下へ出てトイレへと向かっていった。


まだ廊下にもあまり人が出ていない中、小走りでトイレに入り個室に入ってスカートをおろし、用を足しながら携帯をいじっていた。


(はぁ。ここならまぁだれにも邪魔されないでしょ。)


糸織は携帯をいじりながらため息をついて思った。しかし平穏は直ぐに過ぎる。

そのとき個室の外から別の女子達の声が聞こえたのだ。

それは糸織にとってあまり聞きたくない声であった。


糸織がいつも教室で1人でいる理由。それは男子としては声を掛けずらい、話しかけられる雰囲気ではない、などがある。しかし女子としてはもう一つ大きな心境があった。それは『関わりたくない』というもの。実は糸織は学校のカースト制度の上位の人間に良く思われていなかった。基本的な理由は自分よりも美しいこと、いつものあまりにも大人びた態度。つまり簡単にいえば嫉妬だ。だがほかの女子にとって理由などどうでもいい。ただ巻き込まれたくないのだ。そんな環境で糸織はいつしか孤立していた。もともと別の地域に住んでいたた糸織は高校では知っている人間がいなかったのもあり、それがさらに拍車をかけた。


そして今外で話している声、それがカースト制度上位の女子達のものなのだ。


糸織は心の中で悪態をつきながら携帯をいじって静かにしていた。さっさとどっか行けと心で願いながら…


が、そのとき。個室の上から水が降ってくる。そして後にはバケツも投げ込まれそれは頭に当たり地面に転がった。


糸織は外から逃げるような足音が耳に入っていたがそれもどうでもいいほど呆然と地面を見ていた。少しして状況を把握した糸織はゆっくりと顔を上げ個室の壁に拳をうちつけた。目を押さえ、歯を食いしばり、涙を堪えながら。





「あれ?糸織様いない。どこいっちゃったんだろ。」


大貴が糸織の席を見ながら呟く。


「ほんとだ。どこにいっちゃったんだろ。他の男子に聞いてみようかなー」


「あー!わりぃ!俺もそーしたいとこだけど宿題まだだからもうもどんねーと!」


聞きに行こうと教室に入っていく明道に大貴はそう言いながら片手を顔の前に出してごめんのポーズをして自分の教室に向かって走って行く後ろ姿を見ながら明道は糸織のクラスに入っていった。


「そっかー。しょーがないし僕一人で探そっかな」



―――――――――――――――――――――――――――――――




靴をぐちょぐちょとならして個室から糸織がでてくる。もうすでにチャイムは鳴り授業ははじまっていたのだが糸織はこんな姿を見られるのは嫌なのでずっと人がいなくなるのを待っていた。それにもしあいつらが待機していて笑いものにされたらもはや我慢などできないだろう。


「私がっ! 何をしたっ!」 


とりあえず保健室に行こうと考え歩き出そうとしたとき再び怒りがこみ上げ叫んでしまった。すると外から突然「うわぁ!」という声が耳に入る。


(いまの…人の声!? 今は授業中なのになんで…ど、どうすれば…)


糸織が突然の事態にどうすればいいのか困り果てていたそのとき。


「…糸織さん?」


トイレの外から自分を呼ぶ声が聞こえた。そしてそれは聞いたことのある、よく聞き覚えのある声だった。

いつもドアの裏でバレてないと思いながら話してるあの声。


「そうだけど。君はいつもドアの裏から私を見ている人…だよね?」 


名前を知らなかった糸織はどのように確認すればいいのかわからずしょうがなく一番印象の強い出来事を使って確認する。


「やっぱり糸織さん!そうです!頼倉明道っていいます! …っていうか覗き見してたの知ってたんですか!?」


「…ほんとにバレてないと思ってたの。まぁその話はいいわ。頼倉くん?だよね。もう授業はじまってるのにこんなとこでなにしてんのよ。」


糸織が明道に質問する。


「僕、糸織さんの教室に行ったんですけど糸織さんいなくて…それで時間ギリギリまでいろんな場所探して…でもいなかったので教室へ戻ろうとしたんですがまだ糸織さんかえってきてなかったからそれからずっと探してました」


「あんたストーカーなの…?私が保健室に行ったとか、早退したとかは考えなかったわけ?」


明道の発言に完全に糸織は引いていた。


「だって糸織さんいままで学校に来なかったり授業にでなかったりしたことないじゃないですか。それで何かあったのかと…」


「わかってると思うけど私完全に引いてるわよ?」


「ですよね…」


明道は糸織の言葉が相当心をえぐり肩を落とす。

たが明道は切り替えて質問する。


「それで糸織さん、どーしたんですか?」


「それは…」


ここでいじめで水をかぶせられて出られないなどといえるわけもない。そこで糸織は嘘をついた。


「実はさっき急に蛇口の水が吹き出てきて服からなにまでべちょべちょなのよ」


咄嗟についた嘘だったので誤魔化せるかどうか心配だったがそんな心配は無用だった。


「え!?そんなことが!?

ど、どーすればいいですかね!?

そうだ!着替えとか!持ってきますよ!」


「え、え?いや流石にそこまでしてもらう義理はな…」


「今日ジャージとかもってきてます!?」


焦る明道に言葉を掛けようとするが全く耳に入らない。明道としては自分にできることがないかと一生懸命考えているだけなのだが。


「持ってきてるけど私の教室よ?」


「わかりました!とってきます!」


「いや、ちょっとまっ…」


明道は場所を聞くと糸織の制止も聞かずダッシュで行ってしまう。


「なんなの、あの人…」


トイレでのこされた糸織は驚きと呆れの声でつぶやいた。




___ガラガラッ


教室のドアを開けるとともにダッシュで入ってきて糸織の机へ。そして横にかかっているジャージの入っている手提げ袋を持つとふたたびダッシュで教室を出ようとする。が、そこに先生の制止が入る。


「おまえ!隣の組の頼倉だろう!こんな時間に何してる!しかも蛛波のジャージをどうする気だ!」


「先生っ!俺には今日このときが生きている中で1番大切なんですっ!」


明道は走って行った。

そしてのこった教室は生徒全員が唖然とし先生はなんともいえない表情とともにため息をついた。



「糸織さん!ジャージ!もってきたよ!」


息を切らしながら明道がトイレに向かって叫ぶ。


「あんたほんとにもってきたの!?」


「そりゃね!糸織さんの一大事を見逃せる分けないじゃない!」


(なんなのよこいつ、ほんとに何考えてるかわかんないわ。)


糸織は話を聞きながらずっとそんなことを思った。 






「ふぅ。やっとトイレから出られたわ。」


トイレからジャージ姿の糸織が現れる。

そしてその姿に見惚れる明道。


「じゃ、じゃあ!僕はそろそろ戻りますね」


「あっ!頼倉くん。その、ありがとね。一応助かったわ」


もう戻ろうとする明道に糸織はぎこちなくはあるが感謝の言葉を述べる。そしてそれに対して明道は気持ち悪いほどの満面の笑みであった。


「はぁ、いつぶりかしらね。人に感謝を言ったのなんて…」


明道が戻っていった後に糸織はぼそっとつぶやいた。








二作目ご覧いただきありがとうございます!


いろいろなジャンルに挑戦していこうとおもってます。わからないところが多々ありますので指摘などがあるとうれしいです!


まだまだわからないことだらけなのでアドバイスとうとういただけるとありがたいです!

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