再開
「単刀直入に言います。」
アヴィーが腹を括り、決死の面持ちで勇迅を見る。
流石にその瞬間はお茶を堪能していたリーフィルも、カップに口をつけながらチラッと勇迅を見ていた。
勇迅はと言うと…
(…その話からか…)
と、少しバツの悪い顔になる。
そんな勇迅の様子を知らず、アヴィー続ける。
「ユウジン様!!この国を!!この世界を救って下さい!!」
座った状態ではあるが、深々と頭を下げるアヴィー。
言い訳などの余計な言葉の飾りを付けない懇願。
どこの馬の骨ともしれない外様に救いを求め、救ってもらわなければならない悔しさや情けなさも滲む懇願。
それだけ状況が切迫しているのが解る。
それでも…
「そ…それは無理です…」
勇迅はこう答えるしかなかった。
アヴィーの気持ちは痛いほど伝わってきた。
だがそれとこれとは別。
勇迅は小説に出てくる様な超人高校生ではない。
現代の地球の便利な技術ももたらせられない。
自分達ではどうにも出来ず、外から『何か』を期待し、打開してくれる事を望む者。
突然見知らぬ場所に召喚され、期待されている『何か』を持たず、何も出来ない者。
どちらが辛いか…
顔を上げ、今にも泣き出してしまいそうなアヴィー。
アヴィーの顔を見れず、目を背ける勇迅。
再びお茶に口をつけるリーフィル。
三者三様、異なる反応を見せる。
場の空気が重く暗くなる。
しかし、勇迅はそれ以外にも確認しなければならない事がある。
なので、空気が固まってどうしようもなくなる前に、口を開く。
「自分はただの高校生です…力も知識も技術もありません。それでも、不本意ですが今、ここにいます。そして、自分としては元の世界に帰りたいです。」
アヴィーから目を背けていた勇迅は意を決し、アヴィーを見据え言葉を続ける。
「それは…帰る事は可能なのでしょうか?…それをまず確認出来ないと、自分としては話を前に進められません。」
その勇迅の言葉にリーフィルが即座に反応した。
「あ〜それはすぐにってのは無理だね〜『呼ぶ』事すら可能かすら疑わしかった位だしね〜」
リーフィルはカップを置きながら、勇迅を見ながら相変わらずの軽い口調で語る。
「その疑わしい荒唐無稽な事にすら、縋らないといけない位にはこの世界は危ない状態にあるんだよ〜でも『呼ぶ』事が出来たなら『戻す』事も出来るはずだよ〜」
勇迅にとって一番重要な話をしているのに、あくまで軽く語るリーフィルにカチンときた。
「はずってなんだよ!!そんな無責任な事あるのかよ!!仮にもこの国のお偉いさんがそんなんでいいのかよ!!」
声を荒げる勇迅にアヴィーは体をビクッと震わせ(声だけではなく言葉に対しても)、あくまで飄々とした態度を貫くリーフィル。
「耳が痛いね〜アヴィーに至っては心も痛いね〜まぁ〜ユウジン君にはこっちの事情は関係ないもんね〜」
睨みつける勇迅を横目に、リーフィルはさらに続ける。
「はず、と言ったのは【召喚の儀】は本来、この世界になかったものをあたしが真似て使っただけだからだよ〜」
勇迅の視線を受けつつリーフィルは語る。
「【召喚の儀】は今この世界を脅かしている敵対勢力のものなんだよ〜」