奥山さんの合コン。
奥山さんはモテたい。
「星がない……金もない」
アルバイトの帰り、コンビニの袋を右手でぶらせ下げながら立ち尽くす奥山さんは汚れた空気で淀む夜空を見上げた。
「あ、奥山さん」
「あかりちゃん」
ふわふわしたスカートをふわふわさせて、揺る巻きの長い髪の毛を揺らしながら手を振り近づいてくるあかりちゃんに目を移す。
「電気代払った?あ、払ってないね」
「なぜわかる?」
わかるよ、奥山さん絶望した顔で空を見上げていたもんね、あかりちゃんは奥山さんにそんな止めは刺さない人だ。
「私だってさ、あかりちゃんみたいになんかふわふわした可愛い感じになりたいよ」
「奥山さんはふわふわしているよ」
「え?そう?」
「うん、地に足が確実に着いていないその日暮らしもままならない感じ」
奥山さんの右手にあるコンビニの袋を指差しながら言うあかりちゃんは、とても可愛いらしい女の子に見えた。
「タバコとビール買ってこの世の終わりを噛み締めるなんて相当ふわふわ、超ふわふわのプロだよ」
「ごめん、あかりちゃん、ちょっと黙って」
少しはわかってはいるんだ、本当は電気代を払って電気のある人道的な暮らしをすべきだと。だけど電気がなくても昔の人は生きていたんだから死なないじゃないという真実。
「だって昔の人は電気なくても死んでないじゃない!」
「タバコとビールがなくても死んでないけどね」
「タバコは空気かもしれないしビールは水かもしれないし、ないと私は死んじゃうかもしれないんだから、ない生活は試せないよ」
この人はどうしょうもない人みたいだな、とあかりちゃんは奥山さんと話す度に思っている。
「あ、そうだ。タダでビール飲みたい?奥山さん」
「飲む」
「合コンなんだけど、女の子タダでいいって話あるんだよね」
「合コン?」
奥山さんは考えるのが苦手だ。だから合コンと聞いてもピンと来なかった。来なかったけどイケメン達に囲まれてちやほやされながらタダでビールを飲んでいる姿を想像した。
「私モテ期?」
「すごく飛躍しちゃったね」
奥山さんはモテたい。