第二話
なんか今、すっげぇいい声が聞こえたんだけど?
いや、さっきまで誰もいなかったし…
「あの〜すいません」
どうやら、俺の幻聴じゃなかったみたいだ
マズイ…
即座に「僕」という仮面を自分に張り付けた。
「はい、どちらさまです…かっ!?」
そこにはこの世のものとは思えないほど造形の整った美女がいた。
(というか、恐らくここはあの世なのでこの世のものなわけないが…)
その美女はまさに純白という感じだ。
白く長い絹の糸のような髪。
雪のように白い肌。
服も恐ろしく白いドレスだ。
そして、その美女は口を開いた。
「あっ、やっと気づいてくれました!」
嬉しそうにそう言った。
「どうも、初めまして。白の間を管理する女神ブランシュといいます。」
「どうも、尾形 健二と申します。」
こんな美女を前にして緊張せずに喋れるのは普通は不可能だ。
しかし、俺はそんな感情を握りつぶしてちゃんと喋ることが出来た。
ところで、気になることがある。彼女が女神というのも、もちろん気にはなるがそれ以上に納得できる。それよりも…
「白の間ですか?」
なんだそれは?
「はい。もうお気付きのようですので、言いますが、あなたはお亡くなりになりました…」
非常に言いづらそうに彼女は言った。
「大丈夫ですよ。元々、僕は長くなかったので、覚悟はしてました。」
また自分に嘘をついて、彼女を安心させようとした。
死を覚悟なんてそんなこと、まだ若い俺には無理決まっている。
「そう言って頂けると、私も少し助かります。」
彼女の表情に明るさが戻ると、俺はもう一度疑問を投げかける。
「それで白の間とは何ですか?」
「はい。ここは死んでしまった人が一時的に送られる、まぁ言わば留置所みたいなものです。」
例えがあまりにも白というにはイメージが悪い気がする。
突如、彼女は驚いた顔をし、こう言った。
「驚きました…あなたはすごく暖かい魂をお持ちですね。」
え?この部屋が暖かいんじゃ?
「よく分かっていないような顔してますね…」
「すいません…」
いや、分かれというのが酷だろう。
魂と言われても意味は分かるが理解は出来ない。
「極々稀にいるんですよ…あなたみたいな、人間には余りある生命力を持って、それを溢れさせている人が」
ん?余りある生命力?
「でも、僕は病気に罹りましたよ?」
そもそも、それが俺の死因なのに余りある生命力とはおかしくないか?
すると、彼女はおもむろに何かを取り出した。
なんか報告書みたいなものだ。
「ふむふむ…はぁ…」
すっごいなんか失礼な雰囲気の溜息をつかれた。
「人間には余りあるって、言いましたよね?」
「はい。」
何が言いたいんだろ?
「これのどこが人間の範疇にあるんですか…」
そして、彼女は俺に報告書みたいなものを突きつけた。
その報告書のようなものには、俺の行動なんかが書いてあった。
「食事と睡眠とあと……ごにょごにょ…をしてなさすぎでしょう…三大欲求完全に否定してるじゃないですか…」
途中、聞き取れなかったが、彼女が呆れた顔でそう言った。
今、振り返れば何故生きていたかよく分からないスケジュールだった。
こりゃ人間には無理だわ…
「いるんですよ…偶にこういうことしてせっかくの超上質な魂を使い切らずに死んでしまうバカな方が」
あれ?女神様の言葉に若干トゲがあった気が?
「しかし、本当に綺麗で、汚れがなく、優しく、暖かい魂ですね…そうだ!!」
すると、彼女が悪戯を思い浮かべたような子供みたいな顔をした。
「どうです?異世界なんて?」
おおよそ、女神がしていいとは思えない悪い顔をしていた。