異文化衝突、のち晴れ
謎の転校生物を書きました。もはやテーマとして王道ですよね。
■謎の転校生
「ファ○ンジャパニーーーーズ!!!とりあえずよろしくなモンキーども」
シンディが私の通う粕高校にやってきたのは、激しい雨の降る日だった。
開口一番シンディは英語とエックスワード交じりに自己紹介をした。
いや、日本語しゃべれよ、ここは日本だぜ?
「それじゃあシンディさんにはあけびさんの横の席に座ってもらいましょう」
「よろしくな、メスジャップ」
それ、差別表現だからな?
シンディはそういうとガムを噛みながら、古くなったガムをPow!と私の机に吐き捨てたかと思うと、新たなガムをポケットから出して噛み始めた。
今日一番の授業は私たちの担任である佐々木先生(34歳新婚女性)が受け持つ英語の授業だった。
「damn!テキスト忘れた」
「あけびさん見せてあげて」
私はこの失礼な留学生に教科書を見せたくはなかったがおとなしく従った。
机をシンディの席とひっつけて教科書を開くと、シンディはへへへわりぃなと言いながら、全然悪びれもせずに私の教科書を自分の机のほうへ引き寄せた。
おいおい、普通は5:5の割合で教科書を共有する物だろ。なんでお前のほうに10割持って行ってんだよ。
私は、完全に持ってかれた教科書を無言で自分の席へ6:4の割合になるように引き寄せた。
シンディは舌打ちすると「なんて強引なやつなんだ。カミカゼスティールか。」と悪態をついた。
いや、それこっちのセリフだから。
やがて授業が始まるとあからさまにシンディが大声で言い放った。
「こんな役立たずのレッスンなんか無意味!!むだ!」
佐々木先生は絶句していた。
「こんなの無限回繰り返してもぜってー、can't speak Englishだから」
さらにシンディは追い打ちをかける。
「ササキ!お前英語話せるか?お前らみたいな無能を飼うために日本のtax使われてるとかマジでお笑い種」
メンタルの弱い佐々木先生はすでに涙ぐんでいる。
同じく英語の授業なんて無意味だと思っていた私は、心の中でシンディに賛意を示しながらも、やはりシンディの態度が気に食わない。
そこで私はシンディにそれは言い過ぎだと指摘する。いくらなんでもシンディは物の言い方がひどすぎる。
人を無神経に傷つけるシンディに我慢できなかった。
私がシンディへさらに注意をしようと、二の句を継ごうとしたその瞬間
「ファッ○ンジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアップ!!!!」
あろうことかシンディは暴力に訴えてきたのだ。
シンディは私の頬を平手でしたたか打ち続ける。
私も負けじと「ファッキンジャップくらいわかるよバカヤロー」とシンディの頬を持てる力をすべて振り絞り、打つ。
もはや、脳のリミッターははずれていた。もう、この先の人生で腕が使い物にならなくてもいい。
今、この瞬間自分の全てを平手に込める。
踏ん張り、体をひねり、肩をスイングさせる。
ただ一点、シンディの頬へのインパクト時に最大の運動エネルギーを私の平手が持つようにすることだけ。
それだけを私は考えていた。
やがて音が消える。視界から色が消える。クラスメートの視線も忘れる。あぁ、静かだ。
脳が、体が、不要な情報処理を停止していた。
打つ、打たれる、打つ、打つ、打つ、打たれる、打たれる
互いに一歩も譲らない。譲れない。
策略も謀略も戦略もない。
お互いのリソースは平手打ちにすべて注がれていた。
シンディの眼から余計な感情が消えていることに気付く。
ただ、目の前の相手を打ち負かしたい。そんな顔だ。
きっと私もそうなのだろう。今すごく、空っぽなんだ、私。
力への意思。純粋なパワーと力のぶつかり合い。
「リメンバーパールハーバー!!!!!」
「ノーモアヒロシマ!!!」
■エピローグ
一度激しく争ったものが無二の親友になる。
そんなことはフィクションの世界だけだと思っていた。
シンディが転校してきてから二か月がたとうとしていた。
「あけび!こんどうちのホームパーティに来てよ!」
「え~どうせクリスマスだから七面鳥だらけなんでしょ?」
「おいしいじゃん鶏肉!ワタシスキダヨ」
「でもホームパーティなんて本当に存在するんだね。」
「う~ん、うちもあまりやらないほうなんだけど、日本の友達をママとパパに連れてきなさいって言われたからさあ…」
「わかった、行くよ。誘ってくれてありがとうね。」
「わーお、今宵は宴だ。」
「まだ、日本語少しおかしいよ?(笑)」
HAHAHAと二人で笑いあう。
生まれた環境が違うから好き嫌いは否めない。
正直、まだシンディの強引なところに私はなじめないと時々感じる。
でも、屈託なく笑うシンディが、私はとても好きだ。それでいいんだと思う。
いかがでしたでしょうか。




