プロローグ3
突如として耳元に響いた中性的な声は、落ち着きはらった調子で
某RPGの主人公を引き合いに出し、太一をたしなめた。
部屋には自分以外誰もいないと思っていた太一は、
ギギギと音が鳴りそうな動きで振り返ったがそこには誰もいなかった。
そこにあったのは先ほどみた光の珠が浮いているだけで、
目を擦って確かめるが、変化したのは珠の色だけだった。
「光の・・・精霊?」
浮かんだ言葉をそのまま口に出すと、声の主は体を震わすように点滅した。
「偶然だろうけど、その表現は言い得て妙かもしれないね。
僕が存在できるのは確かにそこにある光のお陰なんだから。
光の精霊・・・うん。悪くないよ太一君」
「何であんたは俺の名前を知ってるんだ?」
何やら一人納得していた様子だったが、
太一にとって重要なのは名前が知られているという事だった。
名前を知られている以上、噂を耳にしている可能性が高いのだから。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。
僕は君の事を知っているけれど忌避したりはしない。
むしろ申し訳なく思っているからここに招待したんだ」
「質問に答えて欲しいんだけど!」
「・・・信じてはもらえないだろうけど君の質問への答えは私は神だからという答えに終結する」
拗ねぎみな太一に自称神は申し訳なさそうに言った。
「でも君は僕が神だってことを信じてくれないだろう?」
「信じられないな。本当に神なんてものがいるなら俺は・・・」
自称神の問いに即答した太一だったが、その言葉はすぐさま勢いを失った。
「あんな目には遭わなかった、だよね。
その点については僕も不甲斐なさを感じているよ。
ある意味では、君があんな目にあったのは僕のせいだからね」
「あんたのせい?」
簡単に言う自称神に太一はわずかな怒りを感じたが、
その一方で質問に真摯に答えた自称神に対して一定の好意を抱いていた。
そもそも家族以外と会話をする事がほとんどなかった太一にとって
会話のできる存在は、それだけで好意を覚えるほど貴重なものだったからだ。
太一は怒りを抑えて続きを促した。
「僕の責任について話すためにはまず、
世界と僕のつながりについてを話さなくてはいけないんだけど。
まず僕の名前から話させてもらうよ。
いつまでも自称と呼ばれるのには少しばかり傷つくからね。」
「私の名前はミライア。親しい人にはライラと呼ばれているよ」
一呼吸おいて自称神ことライラは自分と世界について語り始めた。