欲しがりみーちゃん
初投稿です。
ふわふわの髪を右と左で結んだおすましみーちゃんはとっても欲しがりさん。
くーちゃんのクマさんのぬいぐるみ。
たーくんの変身ロボット。
しーちゃんのお花のポシェット。
ぷーくんのたくさんのお菓子。
アレコレ欲しい、わがままみーちゃん。
「ママ、あれ欲しいの」
「ダメよ」
「どうして?」
「みーはママの子、他の子とは違うの」
「……みーはママの特別?」
「うん、ママの特別」
「じゃあ買って欲しい!」
欲しがりみーちゃん、わがままみーちゃん。
「パパはみーのパパだよ!」
ママのパパも独り占めです。
次の日もみーちゃんは欲しがります。
「さーちゃんの持っているワンピースが欲しいの」
「ダーメ」
「どうしてダメなの?」
「他の子は他の子、みーは他の子になりたいの?」
そうママに問いかけられても、みーちゃんはうまく答えられません。
「みーにはたくさんの良いものがあるでしょう」
「でも新しいものも欲しい。みんな欲しい!」
「あんまりわがままばかり言うとママ知りませんよ」
みーちゃんのわがままを見過ごすことは出来ないママはみーちゃんにキツくものを言います。
「ともくんのママはとっても優しいよ! ともくんになんでも買ってくれるの。みー、ともくんのママが欲しい! ママなんて大嫌いよ!」
そういってみーちゃんは自分のお部屋に駆け込みました。
扉の向こうからはママの泣く声が少しだけ聞こえます。
みーちゃんはそれを聞こえないようにするため、お布団の中に潜り込んでしまいました。
「ねえ、起きて」
誰かがみーちゃんを起こします。
目を開けると、目の前に大きな蝶々がおりました。ざわざわと木ノ葉揺れる森の中。
いいえ、きっとここは夢の中。みーちゃんの夢の中。
「わあ、蝶々さん。こんにちは」
「どうも、人間のお子様」
「綺麗な羽ね、みー、それ欲しいわ!」
みーちゃんの欲しがりが始まります。
「あげられないよ」
「どうして?」
「これは蝶々が持てるものさ。それに君もとてもいいものを持っている」
「なぁに?」
「とても綺麗な髪さ、ふわふわで、いい匂い」
みーちゃんは初めて髪を褒められました。
なんだか胸の奥が暖かくなって、でも少しくすぐったいのです。
「ありがとう」
「君は君の持つものを大切にするといいよ」
そう言うと蝶々は森の奥に消えていきました。
「どうしたの?」
次に声をかけてきたのはカブトムシとクワガタです。
「わあ、大きなツノにハサミ。私、それが欲しいわ!」
「だめだめ、あげられないよ」と、カブトムシ。
「これは僕たちだけが持てるものさ!」と、クワガタ
「それに君は美しい瞳を持っているじゃないか」
またもやみーちゃんは褒められて嬉しくなりました。
「君には君の素敵なところがあるよ」
そう言うと、二匹は木の間を飛んで行きました。
みーちゃんが少し歩くと、目の前にとことこ歩く小鳥を見つけました。
「こんにちわ」
「あら、こんにちわ」
「白くて綺麗な翼ね、私も欲しいな」
「それは出来ませんことよ」
「うーん」
「知っているわよ、あなた、厳しくても頼りになるパパがいるのでしょう」
「うん」
「パパを誇りに思いなさい。それが一番なのよ」
そう言うと小鳥は少し急ぎ目に飛び立っていきました。
みーちゃんは急にパパに会いたくなりました。
パパのお膝の上に乗って、たくさんお話をしてもらいたくなりました。
でもここは夢の中。パパはいません。
みーちゃんは大きな池につきました。
「やあ、カワイイお嬢さん」
陽気な声と一緒に顔を出したのは、大きなお魚でした。
「こんにちは。あのね、帰り道を探しているの」
「帰りたいなら君の一番大切なものを思い出してごらん」
「一番……?」
「僕にはこの通り速く泳げるヒレがある。でも君には……優しくて、暖かい、ママがいるだろう」
お魚に言われて、みーちゃんは大切なことを思い出しました。
みーちゃんはママが大好きだということ。
そのママに大嫌いと行ってしまったこと。
そしてまだ、ごめんなさいをしていないこと。
謝らないと!!
みーちゃんは駆け出します。
かけっこでは幼稚園で一番に速いみーちゃん。
しかし運動会のかけっこよりも、もっともっと速く走りました。
みーちゃんはママの暖かい手で頬を撫でてもらうのが好きです。
ママの優しい声が大好きなのです。
みーちゃんのママは、自慢のママなのです。
ママに会いたい!
「おはよう、みーちゃん」
みーちゃんは優しい声で目を覚ましました。
「ママ……」
「みーちゃん」
「ママ、みーね、言わないとならないことがたくさんあるの」
「うん、ゆっくりでいいから、お話してごらん」
「みーね、ママが大好きなのよ、ママが……一番なのよ」
そこまで話すと、みーちゃんは泣き出しました。
たくさん言わないとならないことがあるのに、お話が出来ません。
しかし、みーちゃんのママはみーちゃんを抱き上げると、そっと頬を撫でてくれました。
「みーちゃんは、ママの宝物。自慢の可愛い娘よ」
ほしがりみーちゃん、一番欲しいものが、ちゃんと手に入りました。
「みーのママは、世界で一番なの!」
あらあらみーちゃん、今度は自慢話を始めました。
かわいいみーちゃん。
ママの特別みーちゃん。
ゆっくり大きくなってね。