第四章約束された始まり、――そして終わり ぱあと1
お待たせしました。
新キャラ登場です。そして、操女に関わる話ですよ。
楽しんで読んでもらえると、嬉しいです。
第四章約束された始まり、――そして終わり
☆1月14日 夜中家 PM 11:34
レイヤとの戦いを終えた後に惨い目にあったのはもちろんだったがそれはもう思い返したくない。
というか意図的に忘れた。
まあ、精々覚えているのはウイルスに乗って色々と不思議ことがあったということだけだ。
科学者向けかもしれない。論文書いても誰も信じてくれないだろうけど。
さて、最終的に廃人状態となってなんとか1回目の冬休み課題を終わらせて、正賀三箇日に旅行と父方の家の帰りをして冬休みが1月9日の金曜日に終わった。
その間にゼウスに会ったり、クトゥグアに焼き焦がされたり、ポセイドンの三又槍で貫かれたり、能力者の『邪夢音』にトラウマものの悪夢を見せられたりしたけど……まあいつものことだった。
そうだったんだ……。自分にそう言い聞かせろ。
もう考えないと決めたんだ……!
「おい、僻実。1週間前のことなんだけど……」
兄が声をかけてきた。
1週間前?
ああ、――
「うぎゃあああああああああああ!!!」
「うおっ!? どうした!? おい!」
「もうヤダ! やめてくれ! お願い! 謝るから!」
死にたくない! 死にたくないんだ!
「どうしたんだよ!? うるさいから、叫ぶなって!」
「もうqp□ご△☆ぐ○♪死☆p0殺さgoTm許しさbz□●うぐああああ!」
(……ごめん主人公。設定上仕方がなかったんだ…)
「…………」冷めた目で兄が僕を見つめる。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。……」
「うっるさい!」母に怒鳴られた。
冬休みから、5日後のことでした。
☆1月17日土曜日、本郷駅近くのマンションの一室 AM 11:10
「お邪魔します」
1月17日土曜日、僕はとある友人の家を訪ねる。
「まあ、入って。別に親いないし」
「一応言っておくべきかなって……」
玄関で靴を脱いで奥へ進む。
僕の友人、大山優の部屋。と言っても別に大山はここに住んでいる訳ではなく、学校が休みの日にのんびりするためだけに親に頼んで借りさせてもらっているらしい。
くそう。ブルジョアめ。
まあ、とりあえず、
「情報提供はすげぇ役に立った。本当にありがとう」
「前にも聞いたけど」
「まあ、学校ではこんなにかしこまった感じにはできなかったし……」
「うーん。まあ、どういたしまして」
大山は能力所有者である。僕もそれを知ったの冬休み直後だが。
『侵入者』
簡単に言えばスーパーハッカーになるという能力である。
具体的に言えばファル○ンさんより格上。
まあ、レイヤと戦う前に大山と連絡してできる限りの情報を集めて何とか勝ったという訳。
「でも、オレは別に、月無さんだっけ?その人が殺した人たちの場所だって時間をかければ調べられたんだけど……」
大山が不思議そうな顔で聞いてきた。
「うーん。まあ多少は自分の力で何とかしないとダメかなって思ったからだけど……」
流石に全部友達に頼るのは恥ずかしいし、プライドもクォークの質量の1000分の1くらいあるのだ。
「まあ、いいか。別に大してオレとは関係なかったし」
そう言いながら大山はテーブルの上に置いてあるパソコンの前の椅子に腰をかける。
この部屋には薄型テレビやエアコン、大きいベッド、冷蔵庫、台所まである。……中学生がそんな環境持っていいのか。
僕の家には、エアコンの暖気が全く届かないクソ寒い部屋にショぼい電気ストーブだぞ。それをさらにお兄と取り合いしているのだぞ。
それだけじゃなく、夏になると多治見はムチャクチャ暑い。というか蒸し暑いのだ。エアコンの冷気は届かない、というか、全部冷やしたらエアコンが故障しかねないので、そもそもリビングしか冷やさない。つまり兄と扇風機の取り合いなのだ。……体を張っての。
それなのにコイツは……。
「おい。螺旋? 顔が怖いぞ? 」
「黙れ、ブルジョワ」
「えぇ!?何でさっきまで感謝していたヤツに罵倒されてるの、オレ!?」
別に罵倒表現じゃないのだが…。
「ところで、ポチ」
ポチというのは大山のあだ名である。由来不明。
「ん?」
「DS貸して。遊ぶから」
「……ああ。いいよ」
大山はパソコンを閉じ、置いてあった鞄の中からDSを2台取り出す。
「はいよ」
そのうち1台を僕に向けて出す。
「ん。ありがとう」
僕はそれを受け取り、灰色のカセットを差し込む。
大山もDSにカセットを差し込んだ。
「それじゃ、これでいきますか」
「よーし、OK」
お互い準備が整う。
「「決闘!」」
唐突に僕と大山でポ○モンバトルが開始された。
☆大山の家 PM 1:27
「クソッ! レック○ザが何で特性が加速で聖なる炎を出せるのだ…!」
僕は大山に突っ込む。レッ○ウザはそんな技覚えないのに!
ああ、カグロ(ムク〇ーク♂)火傷で瀕死に…。ごめんよ…。
「お前だって改造しているだろう?プ○ラ、両刃の頭突き」
「やっているけど、それは個体値オールマックスだけだよ!一応存在することができるだろうが! よし、よく耐えた、ヒョウカ(グレイ○ア♀)。吹雪!」行っけえええ!
「ちっ! 気合のタスキか!流石氷タイプ最強の特攻130だけあるか……。○ックウザが一撃で瀕死か……。プテ○も3分の1まで体力が減った上に氷状態に……! オレだって能力値オール999にはしてないぞ!」
「よっしゃ! 続けてホムラ(ゴウ○ザル♂)! フレアドレライブ! そんなことしたらバトルにならないだろうが!」
「フッ、甘いな。オレのレジギ○スにそんな技は通用しない! ゴッドバード! 特性力持ちにパワフルハーブ付き。だからオレはまだマシ」
「そのポケ○ンのどこに翼があるんだああああ!」
以上ポケ○ンファンサービスでした。
☆大山の家 PM 1:41
戦績。10戦1勝9敗。
誰のとか聞かなくてもチート最強と言えば分かるだろう?
1勝できただけでも褒めて頂きたい。
現在休憩中。
「――ってまあとりあえず、ポチに頼みたいことがあるんだけど……」
僕は用事があって来たのだ。まあ、友達と遊ぶが一番の用事だけど。
なので、ベッドの上で休憩中の友人に声をかける。
ちなみに僕は床の上で壁にもたれかかりながら休憩中。
「え~。メンドいなあ……。んで、何?」
大山が眠たそうな顔で答える。
「操女の過去を調べてくれないか?」
俺が今一番気になっていることの調査を頼む。
「過去の浮気調査?」
「違うわ! 何でそうなるんだよ!」
「いや、だってあんな可愛い子がすぐ側にいるんだよ? 多分螺旋が不安になるのも当然かなと……」
「別に付き合ってないし」
僕には好きとかの感情はあまりないから分からない。恋ってどんな感情なのだろう?女の子見て鼓動が速くなったこともないし……。
「月無さんのこと好きじゃないのか?」
大山が聞いてくる。
「……うーん、多分好きじゃない……と思う」
少なくとも、まだ。
「……月無さんには付き合ってる人が……」
「詳しく聞かせろ。相手の顔と住所を特に」
「殺しに行く気か?……嘘だよ」
「何だ、良かった良かった」危うく殺人犯になるところだった。まっ、殺したことあるけど。
「あっ、レンと名前は……桜木さんが付き合い始めたって」
「リア充は殲滅しないといけないよな。用事ができたから帰るな」
「嘘だよ」
「おい、あんま嘘吐くなって。信用なくすよ?」まあ、殺す気はなかったけど。
「実はレイヤには付き合ってる人が……」
「そいつの特徴は? あとナイフある? ロリコンは何をするか分からないし」
「……………」
すげぇ残念そうな目で見られた。どうしてだろう?
「嘘だよ」
「クソ! 騙された!」
何でさっきから嘘つきまくるんだ!
「……本命は月無さんなんだろうなぁ。狂気の量が断トツだったし……」
「ん? 何か言ったか? よく聞こえなかったんだけど?」
さっきから大山の行動が怪しいなあ。そんな嫌がらせするタイプじゃないのに。
…………。
「って、はぐらかすなよ。操女のこと調べられないのか?」
「……はぐらかしたつまりはないのだけどね……。一言で言おう。」
「調べられない」
「……何でだ?」
『侵入者』でも得られない情報があるのか?
「謎が多過ぎるんだよ、月無さんには。まるで意図的に情報を消し飛ばされたみたいに」
「消し飛ばされる?」
普通に消されるとかではなく。というか、調べたことがあるのか?
「消し方が雑過ぎるんだ。あまりに強引だから、おそらく月無さんの能力について書かれた掲示板の一部が文字化け起こしているくらいだ。おそらく何かの能力が発動している」
「……操女には何かの組織が裏にいるのか?」
そんな壮大な感じになるとは思わなかったのだが。
というか能力者をもう既に5,6人は見ているが操女の立ち位置が微妙なのだ。
他の能力者の言葉。ちなみに操女が側にいる時。
「来るなああああああああああ!!!」
必死に逃げていった。足から火が出ていたから能力者と分かったが。
別のパターン。
「殺しに来たぜ。最凶の能力者さん。オレのス…、 グベェ!」
さらに、操女がいないパターン。
「ねっ? ねっ? 僕も仲間に入れてくんない? おれも君の友達の女の子がいれば死ななくても……」
突然操女に連れ去られていった。
以上、彼女の過去が気になった理由でした。
本当に何者なのだろう?
未だにどんな能力なのかも教えてくれないし。能力名すら聞いたことがない。
「ああ、多分裏にいるのは組織とかじゃないと思うよ。普通もっと上手に隠すと……と思う。いても少数精鋭か、よほど使われた能力が特殊だったんだと思う」
「そうか…」
「あと、掲示板に書き込んだヤツはもう死んでいることが分かってる」
「…………」
多分その中には僕を連れていこうとしたヤツもいたんだろうな。
「ちなみにオレも書斎ナントカって能力者に襲われた」
「って、おい!」先に言えよ!
「ちょうど月無さんのことをレイヤさんの件についでに調べた時だったかな……。ムチャクチャ強い……、というか別次元の強さだった」
「えっ? でもお前ってただ情報収集するだけの能力じゃ」
「罠だよ。パソコンの通販で手に入れた」
「ふーん」よほど強力な罠だったのかなあ?別次元とまで言うくらいだし。
「あり得ない程可愛い子だったなぁ……」
「紹介してください」
「無理。まあ、もういいけど」
……うちの学校の生徒って自分の命狙ったことのある相手に対して皆甘過ぎじゃないだろうか。
「じゃあ紹介できるじゃん」
「いや、前聞いたら本人が会えないとか言ってた」
「うーん」
残念だ。
「その後、あんなプラナリアみたいなとはキモくて会えないって」
「分裂はしないよ!」
「似たようなもんじゃない?殺された時のグロさ」
「…………」
否定……できない!
「まあ、気にするな。二次元の嫁でも作れって」
「そんなフォローはやめてくれ……」
悲し過ぎる……。
大山はオタクである。流石にフィギュアとかポスターは集めてないけど、結構な量のライトノベルを持ってる。
キモオタという訳じゃない。
僕と大体同程度のオタクだろうか。
ただ違うのは、
『三次元の女子に興味はない』
ということか。後、二次元の嫁が何人かいる。
「まあ興味ないって言っても普通に話すくらいはするけど……」
一応社会適合者だ。
「一応って!? というか不適合者はお前だろ」
「ぐっ」
まあ、適合者だったら線路に飛び出したりしないか。
「あっ、そうそう。まあ、とりあえず本人に聞いても教えもらえないんだな?」
「あっ、うん」
全く。
「『殺神鬼』」
「えっ……?」
スレイヤー? 神を殺す鬼――?
「『殺神鬼』っていう能力名以外全くオレは掴めなかった。ただ名前からだと、……相当強いと思う……」
「…………」
「どう考えても神が作った能力にしては変だと思うけど……。まあロキがフザけただけだと思う。まあ、がんばれ」
「分かった」
とりあえず一つは情報を掴めた。
「本当にありがとう」
「どういたしまして」
本当にいいやつだなあ。
小学校の頃はこんなに仲良いヤツいなかったけど……。友達は1人が限界でよくいじめられてたし。
「あと、能力について色々教えて欲しいんだけど……」
「ああ、別に……」
と言ったところで、
バリバリバリバリバリ!
アニメとかでよく聞く、放電のような音が聞こえてきた。
「何だ?」
「これは……」
僕とポチは音がした方のキッチンを見る。
が、何もいない。
「一体……」と僕が呟いたところで、
「こんにちは。螺旋僻実君」
後ろから声をかけられる。
「「!」」
さっきまで誰もいなかったのに。
振り返ると、30代前半くらいの男と、高校2年生くらい女の子がベランダにいて、
「初めましてというべきでしょうか? ああ、それより自己紹介をするべきですね。情報残党の影と申します。以後お見知りおきを」
「……雷よ……」
口調は明るいが陰気なオーラを出しながら男が先に名乗り、女の子の方は不機嫌そうな顔でそっぽを向きながら名乗った。
影の方は黒ずくめのスーツ。顔には何も特徴がない。髪はオールバックで、なんとなくセールスマンっぽい。
対して、雷は顔立ちが整っていて美人といっていいのだが、不機嫌そうな顔がそれを台無しにしている。……ラノベに出そう……。
(まっ、ラノベなんだけどね)
気色悪い幻聴だ。病院に行くべきかな。
(…………)
「ポチ、この2人知り合いだったりする?」
「知る訳ないだろ。ていうか多分……」
「ご学友ですか? とりあえずそちらの方が言おうとしていることを失礼ですが、先回りさせて頂きますと、敵ですよ。僻実君を迎えに来たと言えば分かるでしょうか」
「……随分と婉曲表現使ってくるけど今から僕をさらっていろいろ怪しいことでもするんだろう?」
僕の能力『最弱不滅』、それを利用してあるものを生き返らすために。
「そうですね。怪しいと言えば怪しいかもしれません。私は今日ここに死ぬ覚悟を持ってまで行いたい怪しいことのために来ました」
「…………」
操女は今回、僕の希望通り助けに来なかったからこいつらは死ななかったのか。
「てっきりあの『殺神鬼』に殺されると思い込んでいたのですがね……。それについて何か存じていませんか?」
「知らないよ。知ってても教える義理はないしな」
とそこで、
「どうやってオレの罠を抜けたんだ?」
ポチが口を開く。
「えっ、罠って今日もかけてあるのか?」
僕と遊んでいる最中は危険だから外したのかと……。
「心配しなくてもお前には反応しないようにしてあるよ。」
「……ちなみにどんな……」
「ああ、入ると脳がトロける」
「怖え!」
「あと、アモルファスフィールドを展開しといた」
「……アモルファスフィールド?」
また、新用語か?
「ああ、アモルファスフィールドというのは手短に言えば闇元素を非結晶化するフィールドで、単金属元素と複数金属系の能力者の能力を強化させます」
影が説明する。さらに続けて、
「さらにそれが以外の系統でイオン結合元素系を除いた系統の能力者の力を減衰化させます。また、本来アモルファスというのは非結晶、つまり結晶という意味のクリスタルとは反対の意味を持つ言葉で、金属元素が液体になるまで熱した後急激に冷ますとできます。非結晶化つまりアモルファスになった金属は本来より張力に強く、酸などに侵されにくく、優れた磁気特性を持ちます。逆に非金属はもろくなり――」
「もういいよ! すごく僕にとっては興味深かったけど!」
僕は化学にそれなりの興味があるからちゃんと理解できたけど。
「ZZZZZZ……」
大山が状態異常だ。誰かカゴの実かラムの実持ってこい!
「ZZZZZZZ……」
雷さんはベランダで寝てますよ。なんか時々バリバリッて音がしてるんですけど、いいんですか。
「すみません! 私としたことが話し過ぎたようですね。早速本題ですが、螺旋君、」
「私たちと世界を壊しに行きませんか?」
☆大山の家 PM 1:57
「嫌だね」
……良かった即答できた。まだ壊れきってない。僕の世界は。
「……あなたの日常を失礼ながら見せて頂きましたところ、ほぼ日常的に大変辛い思いをなさっていると私は思ったのですが……」
「それは全部自業自得って分かってる。辛いかどうかは僕が決める。お前が決めるな」
理解ができないけど。あくまで知識でだけど。
多分理解できないことこそが僕のおかしいところなんだろう。
そんなんだから、僕は……。
「では強引に連れていくことにしますが、よろしいですね?」
ちょっとだけ回想してしまっていた。
いけない、今は目の前のことに集中しないと、
「よくないって言っても、結局は僕の意思なんて無視だろう?」
「ええ、そうです。では、」
影の腕が黒いオーラに包まれる。
「光を貫け『影踏み(シャドーイーター)』」
「グフッ」
来たと思った時には、既に黒いオーラが僕の心臓を貫いて抜かれていた。
それでもまだ自分の胸の中を生き物が這い回っているような不快感。
「…………あっけないものですね。まあ完全回復以外の効果は全くない能力ですからね」
「…………」
「まあ、影と光は表裏一体です。影が光より遅い訳がありません」
そりゃ避けられる訳がないよな。だって光を見て避けられるヤツなんてマズいない。
「おい、ポチ! 起きろ! 起きないと……」
もう既に回復した体で大山の体を揺する。
「長○由希ちゃんだー。待って――――」
ダメだ、こいつ。早く何とかしないと。
「起きないとこのベランダから突き落とすぞ」
「うおおぅ!?」
大山がやっと起き上がる。
「おい、この二人から逃げる方法を教えろ」
「知らないよ! というかオレ達友達だよね!? けっこう恩がある相手に対して、その態度はどうかと……」
なんだ、そんなこと気にしているのか。
「安心しろ。僕はお前の価値は情報しかないと思っている」
「お前はオレの友達じゃない!」
「情報は友達だろう?」
「そういう意味じゃなく、単純にオレのことを利用できるかどうかでしか考えていないってことだろ!」
「違う」
「そうなのか……」ホッとしたような顔を見せる。
「使い捨てられるかどうかだ」
「影さん雷さん、コイツ連れてっていいです」
「ありがとうござ……」
「ごめんなさい! 僕調子コいてましたああ!」
土下座しました。
☆大山の家 PM 2:12
「まあ、とりあえず私達はここまでで帰るとしますよ」
いきなり影が当たり前かのように言う。
「……えっ?」どうしてだ? 一回攻撃しただけだぞ?
「元々私達は先に『殺神鬼』と出会うとばかり予想していたので、『最弱不滅』対策をしてなかったのですよ。だから螺旋君の再生力を試しただけで、もう今日は十分です」
「…………」
「それに、―――不確定要素もあることですし」
影は大山をチラリと見た。
「では帰りましょうか、雷さん」
「うっさい……。分かっているわよ」
いつの間にか目を覚ましていた雷が、宙に手をかざす。
ビリバリビリッ! と音がして空間に人1人が通れるくらいの幅の光を放つ雷(?)が現れ、2人組はその中に入っていく。
「さようなら」
と影が言いながら顔を雷に引っ込めると、最後にビリッと音がしてその光が消える。
どうやら完全にこの場から消えたようだ。
「…………」
僕がなんと言えばいいか分からない感情を持て余しながら黙っていると、
「なあ、螺旋」
ポチが声をかけてきた。
「ん? 何だよ」
「影さんの能力って影のオーラを飛ばす、それだけだったよな?」
「えっ……、そうだけど……」
そんなに改めて聞くようなことか?確かに大山その時寝ていたけど。
「…………」
そして、そのまま考え込み始め、
「遊びにきてもらったところ悪いけれど、1回帰ってくれるか?」
「えっ? まあ、いいけど」
「少し調べなくちゃいけないことがある。悪いけどオレの口からは能力についての詳しい説明はできない」
「…………」
何かとても大切なことを調べるらしい。目が真剣だ。
それなら、
「分かった。帰るよ」
「ごめん。……あっ、そうだ」
「どうかしたか?」
「お前、今日パソコン使える? 能力についての掲示板を紹介するよ」
……確か、福祉センターの中高生スペースでなら……。
「うん。できるよ」
「じゃあ。ロキズノートでググって。一番上に黙示録っていうページがあるからそこにアクセスすると真っ白なページになる。次に左クリックで全部選択を押して、コピーして、それをヤフーの検索欄に入力してエンター、そのページの一番下に謎のページってサイトがあるのでそこをクリックすると掲示板」
「長っ! メンド臭っ!」
「仕方ないだろ。政府は定期的にパソコンを検閲して能力に関するサイトを消していくんだし」
「なんでだよ……」
んな、メンド臭いことしている暇あったら好景気になるような努力しろよ…。
「……うん、まあ分かったよ」
「掲示板にはパスワードを入れなきゃいけないから199574と入力すればいい」
僕は遊びに行く際に持ってきていた鞄から白い紙とペンを取り出して、大山の言った手順をメモった。
まあ、ゲームもできたし、いっか。
「じゃあな。色々ありがとう」
僕は言いながら靴を履く。
「ああ。じゃあな」
大山の声を聞きながら僕はマンションの一室から出た。
☆大山の家 PM 2:22
螺旋が去った後、
「はじめまして、かな、月無さん」
オレはパソコンを操作しながら呟くように言う。
キッチンの影から月無さんが現れる。オレはパソコンから目を離す。
「……お邪魔してます…。ラルの……幼馴染の月無操女です…」
あずあずと言っているが、完全な不法侵入なんだけど。
「オレは大山優。螺旋とは友人です。ふーん、アイツ、ラルって呼ばれてるのか」
そのうち呼んでみるか。呼びやすい。
「ええ……知っています……。友達の友達といった関係ですよね…」
「まあ、その友達には一度殺されかけてるんだけどね」
喋り方特徴的だなとか思いながら、ちょっと皮肉を言う。
「……ごめんなさい……。止めたんですけど……」
本当に申し訳無さそうなそうな顔をされた。
とりあえず本題に移ろう。
「君って本当はいつも通り情報の影さんと雷さんを……、殺すとは言わないまでも戦闘不能にするつもりだったんだよね?」
「……どうして分かるの……?」
操女さんは驚いた様子で聞いてくる。
「隠しているようだけど少しだけ息が荒いし、私服が湿っているようだから。気付いた時には大分慌てたんだろうね」
「……よく気付くみたいですけど、そもそも何で私がいることに気付いたんですか……?」
うーん、そこからか。
「まあ、パソコンで大量の能力者感知システムを手に入れてるからかな。そうでもしないと俺みたいな非戦闘系能力者は死ぬしかない。25回も襲われていればある程度の勘が身に付くしね」と、そこで間を置いて、
「あの雷さんには全く通用しなかったようだけど」
感知システムが反応しなかった。
「……だから私も気付けなかったんでしょうね……」
おそらく雷さんの使った雷は能力とは全く関係のない物なのだろう。影さんはどうやら普通の能力所有者だったようだけど。
でも、影さんは影さんで一癖も二癖もあるようで。
「影は概念系の能力所有者ですね……」
「……そのようだね……」
存在しか確認されていない系統の能力者。
おそらく『影踏み』は影という概念そのものを操るのだろう。
……光は飽くまで光子という素粒子だから操ることが、影というのは光が当たらない時にできるだけで、物質ではない。
だから、影さんはそのまま「影」という概念を使って攻撃してくる。
「あれは、相当強いな……」
……情報残党は思ったよりヤバい集団らしい。
「…だから、殺すしかできなかったんですけどね…」
月無さんは少し寂しそうな顔をする。
「わざわざラルがあんなことしなくていいのに…」
…………。ちょっと水を差すようだけど仕方ない。
「ずっと気になっていることがある」
「……何ですか…?」
「オレは螺旋に頼まれたレイヤさんの調査で月無さんのことを調べることになった。これはもう螺旋には言ったけど全然情報を掴めなかったよ。オレの『侵入者』を使ってもね」
「…………」
「そもそも『殺神鬼』という能力名が曲がりなりにも神であるロキが付けるようなものじゃないし、情報に恐れられる程の能力者なのに情報を隠しきれるはずがない」
「…………」
そしてオレは続ける。
「これは螺旋には隠していたことだけど、『殺神鬼』が、」
「…………」
「絶対に殺すという概念の能力っていうのは本当なのかな?」
読んで頂いてありがとうございました。
続きも読んでいってください!