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なんか変なことになった@  作者: 良正 儚
.
5/15

第二章 とある世界の決定事項 ぱあと1

やっちゃった。

第二章とある世界の決定事項


         ☆多治見駅 PM 6:17

 走る。走る。走る。

 全力で走る。

 駅の階段を一気に駆け登って左に曲がって直進、突き当たりを左に曲がって出口や1番線に向かう階段を駆け下りて直進、さらに右に曲がって改札を抜ける。

 駅から出たら駐車場に入り、フェンスに小さく囲まれた5段しかない階段を降りて、右に向かって駐輪場とデパートの間に挟まれた小道を走り抜けてから息をついて歩き出す。

 タッ、タッ、タッ。

 今日は体の調子が良いようだ。

 操女に会えたからだろうか。

 まあ、特別恋心を抱いている訳じゃないんだけど。

 それとも可愛いとか思うだけで恋なのだろうか。

 ま、いっか。今の関係壊すのは絶対嫌だし。

 操女は大胆な方だから好きなら好きと言ってくるだろう。

 ……まさかのヘタレだが仕方あるまい。モテない僕にとって話しかけてくれる女の子は餓死寸前に渡されたスープよりも貴重なのだ。

 タッ、

 息が楽になったのでまた全力で走る。

 今度は300メートルくらいで走るのをやめて歩き出す。

 小さな公園の横を通り、右手に線路の下を通るトンネルに入る。

 と、


「お前って能力所有者だよな?」


 待ち構えられていた。

「誰?」僕は足を止める。

 スキルハンドラー? 能力を扱う者って意味だろうか。直訳というか、安直だけど。初めて耳にする。いや、昨日のレイヤと名乗った女の子が言ってたから2度目か。

(安直って言うな!)

 はい、今は無視。……なんかなんとなくだけどこの世界の創造主に話しかけられているような気分……。いや、どんなだよって感じだが。

 目の前に立つ男は身長が175センチくらいの若い男だ。なんとなくだけど成人している感じがある。あとは特徴の無い緑の厚いコートに黒いズボン。手ぶら。顔はハッキリ言ってブサイクだ。少しチャラい。

 問題なのは――、

「『誰?』ねぇ。別に聞かせる必要もねぇから答えねぇよ」

「あっ、そうですか」まっ、それが普通だろう。現実だし。

「まっ、オレは目立ちたがり屋だから。そうだな、巷を絶対に騒がしたりはしない殺人鬼だよ。」

「…………」

 問題なのは目だ。今まで特に人の目などまともに見ていない僕でも見てすぐ分かる程に濁った目。

そして、自分が目立ちたがりとか認識している時点である程度の冷静な判断力を持っているのが分かる。

 何故僕が冷静な判断ができるかは言うまでもあるまい。

「とりあえず、一応聞いたけどオレはお前が能力者なのはもう分かってんだよ。反応を見るに、能力とかについてはちゃんと知っているみたいだな


「何の用だ?」何か勘違いしているようだが。能力者なんてのは知らん。でも『最弱不滅』がその能力のことだというのは容易に想像できる。

「殺させてもらう」手ぶらだったのに手に何故か縄が握られている。

 へぇー、殺人鬼と言うだけあって、目が真剣だ。

 きゃー、怖―い。……さてと、


「はい、お疲れ様でしたー。お先に失礼―」Uターンして全力疾走。


「!? 今の流れでそのセリフかよ! 他にも言い方とか無かったのか!?」

 はぁ? 空前絶後のKY野郎と呼ばれている僕に何言ってるの?

 図書館でも行こうかなー。もう飯抜き決定だし。

 どうせ僕の母さんのことだ。信じる気など絶対湧かないだろう。

 自業自得だけど。

         ☆多治見市図書館 PM 6:25

 追いつかれなかった。

 そのまま本の中の世界へと潜り込み、時間を忘れ、状況を忘れ、僕の存在を忘れた頃、図書館の閉館の音楽が流れ出した。

 それでも読み続けていたので、図書館の人に注意され、その後殴られた。最終的に目潰しされて、やっと自分を思い出した。

 ……最近自分が化物に思えてくる。深くは考えないことにした。

         ☆多治見市図書館 PM 8:10

「あのさ、殺人鬼さん? 後にしてくれない?」

 今日も精子と卵子に分割させられてしまう。もしかしたらナノの100000分の1の世界を見させられるかもしれない。

 現在時刻8時3分。多治見図書館の閉館は8時だ。もう中学生が外を出回っては絶対いけない時刻。

 今度の殺人鬼さんは帰る道の途中の、デパートの駐車場と駅前の駐輪場に挟まれた小道で現れた。

「やだね。今日は人を殺したい気分なんだよ」


「あっ、そうそう。人はもうまずここには来れないぞ。よっぽど騒がしいことでもしない限り、人のちょっとした意識に介入してここを通りたくないと思わせるんでな」


 ポケットから手の平サイズの黒い機械を出して僕に見せる。

「まあ、オマエの能力がどんなモンかは知らねぇが、」


 男は左手を僕に見せつける。


 手の平から縄が生えて、僕に向ってすごい速さで飛んできた。


「!?」バッっと、避ける。

「オレの『縄絃終結グレイプニル』は強いぜ」

 ……僕の他にもこんな異能を持つヤツがいたのか……。操女もか?

 とりあえず、この男は僕に対しても表現したように、能力所有者らしい。推測だけど。

 縄が男の左手に吸い込まれだす。そして残り45cmくらいの長さになると吸い込みが止まり、縄の端が男の右手に握られる。

 そして、縄を僕に対して見せつける。

「今日はテメェが獲物だ」


 ニヤリと笑う。

 ……プチッ。

「……なあ」

「あん? 何か言ったか?」

「ウザいなぁ、アンタ」笑って僕は告げる。

「……なんだと」相手の声に怒気がはらむが気にしない。

「さっきから鬱陶しいんだよね。本当にマジウザい。お前のせいでもう確実に飯抜きなんだよ、分かる? 分かる訳ないよね、その悪そうな頭じゃあ分かんないか。ごめん聞いちゃって。この後僕は5000回殺されるよ? 一生アンタは経験することはないだろうけどピ――ッされたり、ピ――ッとかされたりするんだ。いやあ、分かんないか? そうだよね、ごめん。あっ腹立ったの? 腹立たせてんの分かる? あっ、また聞いちゃった。許してくれとは言わないよ。まあ、その程度で殺せたりはしないよ。だからそろそろやめたら? 縄で攻撃するの。ふーん。まあさっきから色々なバリエーションで攻撃しているね。その頭でよくここまで考えついたもんだよ。誉めてあげるよ。まあ、全部無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄だけどね。ん?どうかした? 疲れたの? そこの自動販売機で飲み物買ってきてあげようか? トロピカルジュースなのに苦いヤツ。あっ、お金が無かった。君と違って色々と大切なことに僕のお金は消費されているんだからまあ、なくて当たり前だよ? アンタみたいな超大馬鹿野郎には一生分からないだろうけど本を買うのに使っているんだよ。活字見たら二秒で倒れそうなアホみたいな顔だしね。何? 反論するの? じゃあ『さすが』って漢字で言ってみて? 『青菜に塩』の意味が分かる? はい、その顔わかんないんだよね。はい、バカ発見―。ハイハイ、分かりやすくキレ過ぎ。単純にも程があるよ。もういいから黙らせてあげる。ハイ、ドーン」

 全力で男の股間を蹴っといた。

 失神した。というか悶絶死したかもしれない。

 ふぅー、休まず口を動かしたんでのどが渇いたなあ。


パチパチパチ。


 後ろから拍手された。振り返って拍手の主を見る。

「誰ですか?」

 とりあえず見た目は普通のサラリーマンだ。何か用だろうか。

「見せてもらったよ。まさかの能力を使わずに自前の力だけで勝つなんて珍しいこともあるもんだ」

「…………」どうやら普通ではないらしい。臨戦態勢をとる。

 というかなんかハンサムなので見ただけでイラッとする。

「どうしてあんなにたくさんの自由自在に動く縄を全て避けられるんだい?」

 いや、あなたも毎日、幼馴染に殺されればできますって。嫌でもな。……とは言わないが。

「あなたは、この変な殺人鬼の知り合いですか?」

「いや、ただ通りかかったので興味が引かれたんだよ。まあ、少し君と話がしたくてね


「もう時間なんで、帰らせてもらっていいですか?」

 そろそろ7000回は突破するかも。

「そういう訳にはいかない」


 ザクッ、


「ゴフッ」僕の口から蛇口を全開にしたかのように血が大量に出る。

 目の前の男がいつの間にか僕の背後に来たのに気付いた時には首を半分まで切れ込みを入れられた。多分ナイフだろう。

「『瞬間移動テレポート』だよ。じゃあね。君のおかげで二億円手に入った


 と言って男は去ろうとする。

「何するんだよ」

 まあ、普通に5秒後には全回復なので呼びかける。

「……何!? 何故生きている!?」おお、驚いている、驚いている。

「さあね」

「ちっ、もう一度」男が消える。

 ガシッ、男の手を僕が掴む。弱いな。能力内容から考えたら普通だけど。

「はい、残念」

「くそっ! こんなのは想定外だぞ!」

 一生懸命腕を動かそうとする。掴まれた腕の先には思った通りナイフが握られていた。

 さてと、

「ぎゃああああ助けて! 変態がいるー!」

 僕は叫んだ。

「一体いきなり何を叫んでいる!?」サラリーマンの男も叫ぶ。

「この男が僕の貞操を狙っているんだ! 男の僕に対して! 助けてー!」

 なおも僕は叫ぶ。

 警察が来てコイツを捕まえれば親に怒られないで済むかもしれないからだ。

 成功確立は2%しかないが。

「やめろおおおおお!」暴れだした。無駄なのに。

 ナイフを持っているから完全に銃刀法違反確定だしな。

 そうして近くにある交番から警察官が来るのを待つ。すると、


 目の前に女の子が着地した。


「え?」

 というか操女だ。

 そして、僕が何かを言う前に彼女は、


「その男の人と寝るの!? ラル!」


 メチャメチャキラキラした瞳で僕に言った。いつも語尾は…とかなっているのにそれすらなくなっている。声もいつもよりずっとデカい。

「寝るか! というか何故ここにいる!?」


「えっ……、えっとそれは……」

 いきなり声が小さくなる。

「それは、ラルをス……、じゃなくて、び……、でもなくて……」

 確実にストーカー、びは尾行だろう。犯罪だし。


「そうだ! 視姦してたんです!」


「結論が最低だ! 確かに直接的な犯罪じゃないけど! 嘘だ! こんなヤツと幼馴染だった覚えはない!」

「えっ……? 視姦って見守るって意味じゃないの…? カナちゃんは凄くいい言葉ベスト10に入るって……」

 ……あの女……。いい度胸だ。後でシバく。

「なあ、オレはもう帰っていい……ゴフッ」

 鳩尾を思いっきりブン殴ってサラリーマンを失神させる。

「この後、ベッドインですか?」また操女の目がキラキラしている。

「しないよ! お前は僕にどうなってもらいたいんだ!」

さっぱり僕にはわからないよ!

「えっ…、ビー……じゃなくて、ボーイズ……じゃなくて……」

 確実にビーはBLでボーイズはボーイズラブだろう。

 なんかしばらく会わないうちに幼馴染が腐女子化していた。

 怪力を除けば、お前が一番マトモだと思ってたのに……。目から塩化ナトリウムが……。


「その人を熱くて黒くて硬くなる棒で……」


「お願いだからそれ以上言わないでぇぇぇええええ!」

 聞いた僕が悪かった!

 というか、顔輪真っ赤にしながら無理に言うなよ! そして、僕に対して哀しそうな顔を見せるなよ! 腐ったのはよく分かったから!

「ちょっと君達、そこで何をしている?」

 遅ればせながら警官がやってきた。

「邪魔しないでください! ラルと大事な話があるんです!」

 ドン。操女腕によって警官の人がブッ飛ばされた。

「うわあああ!」

 警官は、骨が砕けるんじゃないかと思わせるような音を立てて背中から叩きつけられた。

 僕は、一応呼吸と心臓の鼓動を確認しておいた。生きていた。失神しているらしい。かわいそうに……。僕はいつもその程度で済んでないけど。

「で、ベッドインするんですか…?」

「しねぇよ! もういいから、何しに来たか教えろ!」

 用件聞いて家に着いたら寝るから! 涙を流しながらな!

「そうですか…。残念です…


 はい、そうです。まったく残念だとは思わないが。

         ☆多治見駅周辺 PM 8:39

 とりあえず2人(殺人鬼&サラリーマン)を近くのトイレにあった掃除用ホースでがんじがらめにして閉じ込め、失神した警察官を交番にいた他の警察官の人に任せた。殺人狂共は明日回収しよう。

 ちなみに、操女に肩車してもらい、殺人鬼の厚手のコートを着て大人に変装した。よくバレなかったもんだなぁ。警察官の人たちが操女によって気絶させられた警察官に目をとられている間に逃げて職務 質問から逃れたからだと思うが。

 操女は僕を肩車しても全く足がフラつかず、ガッチリ固定していたので倒れた警官の人を抱えるのは それ程難しくなかった。

 もちろん重かったが。

 高校生でやったら犯罪だったな。中学生だからこそできた技。

         ☆歩道橋 PM 8:46

 普通にその後、変装を解いて、邪魔なコートは道端のゴミ捨て場にあるゴミ袋に捨てて僕の家に向った。

 操女の家は色々と特殊なので、特別今帰らなくちゃいけない訳ではないのを知っているので、僕と操女は普通に僕の家まで一緒に歩くことになった。

 あと、ここで僕は操女の家まで送る必要は全くない。操女はジャンプすれば15秒空中を舞って家に着くのだ。

 甲斐性を持ちたくても持てません。

 そして歩きながら操女は喋り出す。

「ねぇ、ラル…」

「何だ?」BLの道に引き摺り込もうとするなら今すぐ逃げるぞ。

「何で、私が失踪していた間のことを聞こうとしないの…?」

 おおっ、そこでそれを聞くか。

「うーん、まあ、小説の主人公の真似だよ。単純に僕から見てもそっちの方が格好いいし」

 操女が聞いて欲しいと言うなら聞くけど。

「そっか……」

 クスリと笑う。……非常に可愛らしい。

 そして、少しの間二人とも黙る。

「あのさ、操女」今度は僕から話しかける。

「いいんです…。聞きたいことは他にたくさんあるよね……」

 図星。何でいきなり初対面のヤツからいきなり殺されかけなければいけないのかとか。

「ラル、今から凄く胡散臭いことを話しますね…」

 ……、幼馴染からいわれるセリフじゃねぇ。

 沈黙していると操女が口を開く。


「この世界には神がいます……。えっと、怪物とかそういうものも含めて…」


「…………」まあ、自分にこんな変な力がある以上、六信四疑で。半信半疑の変化版ね。

「疑われるのが普通ですよね…。とりあえずいると思って対応してください…。お願いします…。」頭下げられた。

 なんで操女って、不規則に口調が丁寧語になるんだろうなー、とか考えながら、

「うん、まあ信じるよ」

「ありがとう……」

「続けて続けて」実際、駅から家までそんな距離ないしな。

「それでね、この場合の神っていうのは様々で、北欧神話や日本の神話、クトゥルー神話だけじゃなくて昔話やお伽話だって含まれるの…」

「……分かったよ」この世界、節操が全くないな。

「神はね、人が生まれた瞬間に生まれたんですけど、中には人が生まれる前から存在するのもいます……」

「はい?」

 いきなり矛盾が発生している。

 ……今まで読んできた小説を参考にしてと、つまり、

「人が何らかの定義で生みだした想像上の物は実在化するってことか?」

「うん…。条件とかはあるけど……」

「んでもって、化物とかを含めた神の中で人間が考えた設定の中に人が生まれるより前に存在していたというのがあれば、例えその場で生まれた神でもずっと昔から存在していたということになるってことか?」

「はい…。神には時間概念が無いのが多いから……」

 まあ、その神を生みだした人間の妄想自体にも時間は関係ないしな。

「なんとなくの予想だけど、その神達が僕達人に対して一つずつ能力を分け与えているってことか?」

 操女が言いたいのはそれなんじゃないだろうか。

「いえ…、全然違いますよ……?」

 まさかの丁寧語による完全否定だった。違うのかよ。

「ラルは最終戦争ラグナレクについてレイヤからちゃんと話を聞きましたか…?」

 やっぱり友人だったのかよ。

「詳しくはアヤにでも聞けば? とか言われたけど」

「えっ……? 何でそんなに慣れ慣れしくなってるの……? まさか……?」 

「どうかしたか?」いきなりブツブツと何言ってたんだ?

「いや、何でもないです…! 気にしないでね…。とりあえずこの場合のラグナレクは本来の内容とは全然違います…!」

「へぇー、どんな風に?」

 元々のラグナレクは確かフレイヤとオーディンの気まぐれによって発生して最終的に大戦争となり、最後は炎の国ムスペルスヘイムのスルトの持っていた炎の剣によって天地は炎上して滅びたというヤツだが。

「……ここで言うラグナレクというのは主に神が無理に作った認識仮想空間で起きた方のことです…」

「ちょっと待って。いきなり不思議ワードが飛び出したんだけど。認識仮想空間って何?」

 そんな物読んだこともないぞ。

「え……、あっ! ノート持ってます…?」

「あるけど……」まあ、学校帰りだから。ずっと背中に鞄を背負ってる。

「えっと……、あと筆記用具を…」

「分かった」

 鞄を手頃な所に置く。ゴソゴソと探し出し、渡す。

「ていうか、今夜だけど字とか書けるのか?」いや絵かもしれないが。

「大丈夫です…。私は夜目がきくから……」

 ついでに下敷きも渡す。

「ありがとう……」

 サラサラと書いていく。

 30秒後、

「できました…」

「どれどれ?」街灯の方へ行って見てみる。

 可愛らしい女の子っぽい絵で説明されている。簡単に概要だけ言えば、

 まず、本来世界は、最近の漫画とかでよく見聞きする平行世界の構造、縦の線画様々に分岐する図を保っていること。

 次に、神や化け物なんかは本来存在してはいけないものなのだけれど、昔からちょくちょく人と関わったりしたこと。

 そして、そんな時に神が関わらなかったという特殊な世界線が生まれて、それを認識仮想空間と呼ぶこと。

 つまり、その神が関わっていた時期を、神がいなくなった瞬間にその認識仮想空間に置換することができるということ。

 例えば、神が関わったおかげで勝った戦争は、認識仮想空間になって自力とか運で勝ったことになる。

 こんな感じ。

 読んだ感想。

「つまらん」

 ポイと捨てた。

「うぅ……、そういうことしないでよ……」

「マジ泣きしないで。ゴメン! マジでフザけ過ぎました! 許して!」

 丸日丘、というか僕の学年の生徒の影響を受け過ぎた。反省。拾う。

「うん、分かった……」上目遣いで微笑まれた。

 ……うわっ、一瞬操女に襲いかかろうとする僕がメチャハッキリと見えた。

 ヤバかった……。過去に約200回以上操女に殺されていなかったら絶対抱きついていただろう。確実に操女に殺されるので抱けたとしても顔面貫かれて2秒が限界だったと思うが。

「まあ、ようするに神様が禁忌に触れないように作った辻褄合わせの世界が認識仮想空間ってことか?」

「うん…、理解が早いね……」

「全部本による知識だからな」よく母さんにムダ知識とか言われるが。

「本題に戻るけど、ラグナレクによってほとんどの神は死んで、認識仮想空間を無理に作ったせいで、 この世界は矛盾に満ちた世界になってしまったの…」

「えっ? 別にそんな満ちているって程じゃあ……」

 現に自然界の法則は基本的には守られている。

「その後、私も名前を知らない神によって整理されたんだって…。とりあえず、無理に作った認識仮想空間でオーディンとかフレイなどの神が死んだはずなのに生き返って、逆に辻褄が合わなくなったの……」


「ふーん。結局どうなったんだ?」

「あるものが生まれました」

「あるもの? 何だそれ?」

「あるものは全てを絶対に殺すことができましたし、絶対死なないというものでした…」

「…………」

「その後、全ての神が力を合わせて封印したの……。実際そうしなかった場合は、確実にこの宇宙は無かったことにされたはずです……」


「えっ? いくら何でもそれは……」


「あるものにも時間という概念は存在しないですから、最初からこの世界にいたことになります…」

「なるほどねぇ」まあ、理解はできる。

「神の中に予言したものがいて、そのあるものは、今から200年後にとある人間の手によって殺されるということが分かりました……」


「人が? どうやって?」絶対死なないんじゃ……?」

「さぁ…? 分からないけど……」


「アバウトだな、神なのに……」


「そして狂った認識仮想空間ではロキが巨人やフェンリル、ミズカルズ蛇を率いてあるものの封印を解こうとした戦いが最終戦争ラグナレクということになったの……」

「へぇ」ロキは悪戯の神と呼ばれているが、そこまでするか?普通。

「そのロキの作った一団を後に情報と(ブラッド)呼んだの……


「えっ? なんでそこで漢字に横文字付けるんだ? おかしくない?」

「私も知りません……


「そう……。んで、どういうこと? つまり、能力使って神のお手伝いしろっていうことにでもなったのか?」その戦いに僕も巻き込まれるとか?


「いえ、とっくの昔に情報の勝ちで終結しました。」


 ……はい?

         ☆大原川のほとりの道 PM 8:50

「じゃあ、情報っていう集団はー」

「はい、普通に封印を解きました…」

「じゃあ、何で僕ら生きてるんだ?」

「実は、とある1人の能力者によってそのあるものは殺されたの……」

「えっ……」

 ここでいきなり能力者が出るのかよ。起源は結局何なのかが分からないぞ。

「あるものの死骸はロキによって回収されたの…」

「ん? ロキ死んでないのか? というかそのあとある一人の能力者は情報のヤツらを殺そうとはしなかったのか?」

「巨人族だけ襲いかかってきたので、たくさん殺したらしいけど……。後はもう殺そうと思えなかったみたい…」

「何者だよ、ソイツ」

「さぁ……。アオちゃんに聞かされただけだから…」

「アオちゃん? 誰?」

「新しい友……達…? あっ、そうそう……、ロキはその後、落ち込んで引きこもりになってニートらしく日本のオタク文化にハマっちゃって…」

「ちょっと待て」

 いや、もうマジで。何をいきなり軽い感じで言っているのか分からない。

「…………?」

「不思議そうなところ悪いけど、ロキは一応神なんですけど、ニート化するってどういうことだよ!」

「オタクになるのに人間も神もないんだよ」

「いいセリフだけど、ゴメン。ちょっと受け入れ難いです」

「そうかな…? イザナギノミコトもゼウスもアキレスも現在オタクだよ…?」

「…………」ああ、何か神様としての威厳が全く感じれない……。

「アテネさんも天照大神さんもフレイヤさんも今じゃ立派な腐女子だよ!」

「何だよ、立派な腐女子って! そこだけ誇らし気に言うなよ!」

「ロキはオタク文化から人に対してとある悪戯をやってみることにしたの…。同じ自宅警備員のクトゥルー神話のニャルラトホテプと一緒に……」

「…………」なんかあまり聞きたくなくなってきた。

「回収したバラバラのあるものの死骸を日本中にバラまきました…。人には見えたりしないように……」

「まさか……」

「まさかです…。その死骸に宿っていた力が人に宿った時、その人間は能力所有者になります……」

「…………」

「具体的に言うなら、あるものの死骸の力はこの日本中の元素に取り込まれて…、その元素を闇元素というんですけれど、それが人の体に入っている時だけに力が発現します…」

「えっと……、つまり、僕が操女にも体の中にその闇元素っていうのが入っているのか? さっきの殺人鬼やサラリーマンも?」

「そうです…」

 そうだったのかよ……。

「実際、それだけじゃロキの望むゲームにならないから…、能力者、又は神が能力者を殺した時、一億円を与えることにしたの…。それぞれの時代の価値勘に合わせてだけど…」

「あっ、だからさっきあのサラリーマンも二億円って言ってたのか」

 納得。でも、何でこんな突然なんだろう。

「いつもは私が、代わりに相手してたんだけど、いざという時のために今日……」

 ふうん……。

「ありがとな」まあ、できれば今日やるのはやめて欲しかったが。

 殺戮記念日って僕のカレンダーに記されることになりそうだし。

 でも本気で感謝。

「…………」なんか操女が顔を真っ赤にしてオロオロしだした。可愛いなあ。

「どうかしたか?」

「えっ…!? えっと、怒らないの……? 殺人鬼と会わせたんだよ……?」

「それも僕を思ってやったんならいいよ。どうせ僕は死なないし」

 むしろ、わざわざ今まで守ってくれたことの方に感謝だ。

「……うん……。あっ、着いちゃ、……着いた……」操女が道の先を見て言う。

「? そうだな。じゃあ、そろそろ別れるか」

 ちょっと名残惜しい。この先の地獄を考えると。

「あと、ラルの『最弱不滅』とか『網絃終結』とか能力者とか情報とかの名付けは全部ロキのセンスだよ…」

「うん、分かった」……そうだったのか。

「じゃあね…。また、そのうち…」

 シュン、操女が目の前から一瞬で消える。多分自分の家までジャンプしたのだろう。

 …………。『最弱不滅』か……。

 やっぱダサいな。

(プチッ)

 僕は今一瞬聞こえた変な音を不思議に思いながら、もうシャッターを閉じた僕の家である山中薬局に設置されているインターホンを押す。

 ピンポーン、ガチャッ

「母さん?」

『入れ』

「はい……」

 ガチャ、インターホンが切れた。

 家にある二台の車の脇を通る。ここはフェンスと挟まれていて幅が30センチあるかないか。で、奥には玄関が右手にあり、奥の方には庭がある。

「ふぅ」

 意を決し、僕は玄関から家に入る。


「ぎゃああああああああああああああ!!」


 後で、この悲鳴は家の完全防音をもってしても半径300メートルの範囲で響きわたったということを知った。

 多治見市民の中で通報が無かったのはありがたいと思うべきだったろうか。心がさめていると嘆くべきだろうか。

 しかし、ナノの百億分の一の世界は本当に見たくなかった。

         ☆夜中家 子供部屋 PM 12:25

 今思ったのだがあるものの死骸の力を持つ能力者があるものを殺したというのなら、それは自滅じゃないだろか。しかも、どう考えても典型的タイムパラドックスが発生してる。

そのとある能力者があるものが生きている時に存在しているのは、ロキが時間という概念もなく、日本の大昔からあるものの死骸をバラまいたからだろうか。

 さて、そんなしょうもない、終わったことを考えるのとは無関係に僕は操女と初めて会った時のことを思い出していた。夢を見ているんだから仕方ない。

 どうやっても、ころころ変わってしまう。

 ……少しここで昔の話をしよう。

 僕は4年前の小学校3年生の頃に電車に轢かれて明確にこの能力を意識するようになった。公式では間一髪避けたことになっているが。

 実はこの事故、完全に僕が悪い。

 何かの映画の影響で電車をなんとか避けるというのを真似た訳である。失敗したが、公式の記録では成功なのだが、そもそも成功も失敗もない。

 もちろん親にバレて、親が僕に対して世間でいう拷問をするようになったのは、ここらへんが原因である。あってすぐではないし、直接的な原因でもないけれど。

 僕は小学生時代のことをほとんど覚えていない。というか、中学校生活でだって今日のような大事なことを教えてもらった時のこと以外はまず覚えていられない。

 無駄な記憶を僕はすぐ捨ててしまう。

 まあ人によっては、無駄な記憶なんてないと怒り狂うかもしれないが、僕にはどうしようもないことである。

 そして、そんな残っている数少ない小学生の頃の記憶。

 日付は分からない。ただ、僕が電車に轢かれてから約2週間後のことだ。


 それは人の殺意を知る物語。


         ☆4年前 名古屋のどこか

「う……、どうしよう……」

 僕は迷子になっていた。

 軽く涙目。

 完全に自業自得だったはず。もうどんな原因だったか覚えていない。

 まあ、いつも迷子になるのは僕が道で見かけた本やゲーム機に気を取られて置いていかれるのが原因なので多分それだ。

 ……僕はバカなので、こういうことをいくら失敗しても直せない(今でも)。家族関係が険悪になったのもここらへんが原因である。

 よく分からないまま幼い頃の僕は歩き続ける。

 足が痛いし、疲れたという感じ。午後の日差しもキツい。多分、三時くらいか……。

 とそこで、


「…………ぐすっ………………、うぅ…………」


 女の子の泣き声が聞こえた。

 僕の左側にあるトンネルの奥から聞こえてきた。

「誰かな……」

 僕はトンネルの中に入った。

 自転車が大量に不法駐輪されている。

 トンネルはとても短く奥まで見ても誰もいない。

 僕はその時どうしてだか幽霊の存在を最初から考えない子供だったので、特に怖がることもなくあちこち探しまわった。

 単純に、心細かったから仲間が欲しかったんだと思う。

 そして僕は女の子を見つけた。

 いや、見つけてしまった。


 真っ赤な服と白銀に輝く髪を持つ少女を。


 自転車の奥に隠れている女の子に僕は呼びかける。

「……泣いているの?」

 その女の子は、声をかけられるとは思っていなかったのだろう。

「えっ……?」

 驚いた様子でこちらを見る。

 その女の子の瞳は黒色だった。

 が、

 その目は見る間に真紅に染まり――、


ラノベかどうか自分でも不安。

読んでくれてありがとうございました。

続きも余力があればお読み下さい。

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