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なんか変なことになった@  作者: 良正 儚
.
4/15

信第一章 始まり ぱあと3

これくらいのペースでいいのかな?

         ☆高蔵寺駅内 公衆電話前 PM 10:57


 プルルルル、ガチャ、

『死ぬ用意はできている?』母さんの声。

「えっ! 公衆電話で電話しているのに何で僕って分かった!?」

『知ってるかしら……』

「スルーか……」母親のターン的な。

『あなたの無謀な冒険のせいでどれだけ周りが振り回されたか……知ってる?』

「えっ? どういう……


『ヒント。ダーリンはあなたのことをちゃんと迎えに行きました』

 一瞬でそのことについての思考が終わった。

「まっ、まさか!」

『ええ、ダーリンが先生達にあなたのような豚が見当たらないと報告したことによって、現在先生達はあなたを探して走り回っているわ。かわいそうに。折角研修が終わってほっとしていたのに……』

「……………」オワタ。何もかも。終わった……。

 巡るめく走馬灯。……2秒で消した。マジメに心の底から見るのを拒否する。オエッ。

『今、どこにいるの?』上機嫌な声がマジで怖い。

「えっとねー、コンビーモゴモゴ!」楽の口を塞ぐ。

『あら、コンビニでジャン○とかサ○デーとか立ち読みをしていたの? 近くにいるのは悪いお友達?』

 遅かった……。

 もう……ダメだ。今日は体のどこを切れ取られ、どこを燃やされるのだろう。どんな拷問器具が出るのだろうか。

 何回死ぬかなぁ。

         ☆高蔵寺駅内 公衆電話前 PM 11:21

 結果。


 3211回死んだ。


 回想。

『今、高蔵寺駅にいるのね?』

「………はい……


 ガチャッ。

「さらば、地球。さらば丸日丘。僕の魂は普通に体ごと滅せられるだろうけど、みんなは忘れないでくれ」独り言。

「君、誰~?」

「死ぬ前から忘れられた!」

 一応幼馴染なのに! ちょっと酷過ぎませんかね!

「人生ヒサンだね~」

「……そうだな」

「飛び散ると書いて、飛散だね~」

「本当に文字通りな!」

 確かによく飛び散ってるよ、物理的に!

「もういいよ。とりあえず帰れるようになった。本当にありがとな。そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」一応心配。

「ただ厄介払いしたかったんじゃないの~?」

「違うよ。別に話してて普通に楽しいしな」

 本当に感謝している。多少心細かったし。

「まっ、いいけど~。……未だにメインヒロイン出てない小説ってありなのかな……」

「ん?」今変なこと言わなかったか?

「じゃ~ね~


 聞こうと思った時には既に楽は走り去っていた。

 ……あれを見る限り明らかに足遅いんだけどな……。

 にじゅっぷんご、あれっ?てがふるえてかんじがかけないや。

 ちょっとまって。

 ふう。よし止まった。(執筆経過時間3日)

 目の前にうちの銀色の軽自動車が止まった。

 ガチャ、ドアを開けながら、僕は

「すみませんでした……」

 いえ、本当に心の底から。

「黙りなさい。さっさとドア閉じなさい」

「はい……」

 くっ、こうなったら! ドアを閉じながら、

「あのさ、ジェット会の模試で学内順位2位だったんだけど!」

 早口で呟いた。これ本当。

「あっそ」

 エンジンかかりました。

 いつもは流しているアニメソングが流れてきません。

 沈黙。


 本当の地獄はこの先にあった。


 家である夜中(よるなか)薬局に着き、父と兄が現れた直後、

 ピ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ。

「ぎゃああああああああ!!! 誰かああああああああ!!!!」

 僕が力の限りに振り絞って出した声は誰にも聞こえることはなく……ピ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッということがありました

 こういうことすれば簡単に不死者を3000回以上殺せるよ!

 絶対真似しないでね。どうせ放送禁止用語だらけでほとんどピーッで見えないだろうけど。この小説 紙のムダ使いし過ぎだよね。

         ☆夜中薬局 2階 子供部屋 AM 1:29

「はっ」目が覚めた。

 なんかさっきまで現実世界を小説と混同していたような…。

 とりあえず体が精子と卵子に分裂してしまっているのでなんとかくっつけないと。

 よいしょ、よいしょ。

 ウ~ン、届いた。精子も全力出せばフローリングの床を3ミリくらいなら尾を使って移動できる。

 人生25度目なので少しは慣れた。

 人類の中でこんな経験するヤツ他にいないよな。

 よいしょっ、と。

 じゃあ、コレとコレ捨てて、うーん、まあ背に腹は変えられないから、

 コレも。

「よし、戻った」

 僕は中学校1年生の姿に戻っていた。

 解説

 僕の能力、『最弱不滅(ブレイクカウンター)』。

 これについて僕が分かっているのは、体が受けたダメージを無にする代わりに体が小さくなる。何故か着ている服まで小さくなる。

 体が小さくなるのは2パターンあり、

 1つは若返る。卵子と精子に分裂するまで攻撃を受けると若返る。

 もう1つは縮小化。今のところ0.5ナノまで縮んだことがある。限界があるかは不明。本当に元の姿のまま小さくなる。

 どっちになるかは攻撃を一度も受けてない状態からのランダム。

 そして、元の大きさになるには、      

         ☆12月23日火曜日。冬期補習日初日。 AM 8:19

「冬期補習って、……終業式した意味あるのかよ……」

 中学校校舎の出入り口へ向かう最中にそう呟いた。

「ああ~分かる分かる」

 どうやらそれを聞いてたらしい僕の友人かつクラスメイトの山内康史が言う。僕のこの学校で初の友人。やたらエロいのとよく分からん哲学を持ってるのが特徴。

「だよなー。だったら終業式を後回しにしろって感じだよな」

「そうそう」

 そう喋り込みながら下駄箱から学校指定の体育館シューズに履き替える。丸日丘中学校生徒は普段から校則により体育館シューズを履くことになっている。基本色は白で赤のラインが入っている。これは 1年生のみだが。

 1回生は赤のラインが入り、2回生は青のライン、3回生は緑のライン、4回生からはまた赤からという周期になっている。現在1年生である僕達19回生はルールに従いシューズに赤のラインが入っている。

 2年生は緑のライン、3年生は青のラインが入っているという訳でそれで上級生か下級生か同級生か分かるというわけ。

 僕と山内は下駄箱を通り抜ける。

 そのまま左に曲がり左手に階段が見える。

 喋りながら僕たちは移動していた。

 僕はよく1つのことに夢中になることが多く、周りがよく見えないことが多い。

 さて、今回僕は山内との話に軽く夢中になっていた。

 当然僕は階段の上の方から降りてくる女子に気づくはずがない。


 が、気づいた。


「「………………」」2人して、絶句。

 足が止まった。

 誰だろう。少しだけ見覚えがある気がするが。

 黒髪は少し短めに切られている。

 スタイルが良く、胸は中学生らしく控えめだが。

 身長は150センチ程だろうか。

 目が青い。

 そんなことはどうでもいい。

 顔がなんというか、……可愛すぎる。

 ありえない程に。気が狂いそうになるほどに。


 コチラを見てニコリとした。


 二人して失神しました。


         ☆丸日丘高校 本校舎 1階 保健室

「おお、ここは」目が覚めた。僕再びベッドの上。

「保健室だな」山内が続けた。隣のベッドからだ。

「あっ、目が覚めた。大丈夫?」

 保健室に二人いる先生のうちの一人に言われた。普通にオバさん。

「大丈夫です……。どれくらい寝てました?」

 今なら五年といわれても納得。

「ここに来るまでで5分で……、目が覚めるまでで1分ほどだったけど」

「「えっ!? 6分しか経っていない?」」

 ハモる。

「急いで教室に行った方がいいかしらね。遅刻になるわよ。

 時計を見る。8時25分。あと5分しかない。

 ヤバい!

「なんか安田君って子があなた達をここまで引きずってきたみたい。鞄は2つとも教室に持っていくと言ってたわ」

 おお、道理でホコリっぽい訳だ。

 安田、いつもは変な暗殺者紛いなことばかりしているから気づかなかったけど、いいヤツだったのか。友達なのに知らなかった。

「いくぞ、山内!」声をかけるが。

 隣には山内はすでにいなかった。

 アイツ、置いて行きやがった!

         ☆丸日丘中学校 北校舎 2階 1―C教室 AM 8:29

「ハァハァハァハァハァ……」間に合った。保健室は高校校舎だから遠いんだよなぁ。

 1年C組教室でまだ治まらない激しい呼吸をしながら自分の席に座り自分の鞄から必要な教材を自分の机にしまう。

 8時30分になった。

 ガラガラ、知らない美女が入ってきた。

 キャリアウーマンみたいな。なんでもできそうな感じ。

 彼女は自信満々に口を開いた。


「ガキ共、初めまして。澤田先生が出張で代理の香山日向(かやまひなた)だ。怒らせると2秒で死ぬぞ」


「「「「「最悪な自己紹介だ―――――――――!」」」」」

 5人程に一斉にツッコまれる。

「早速だが、それを実感させるために一人この3階から突き落とす」

『えええええええええ!!!!』

 クラス総勢35名の声。

「なんなら全員でもいいんだぞ?」

 笑いながら出たありえない脅迫。

『………………………………』

 と、そこで生徒達何人かが次々と立ち上がり、

「僻実、行け!」山内君。

「お前ならやれる!」加藤君。

「飛ぶっていうのはいい経験だぞ!」岩月君。

「死ぬんだ! 皆のために!」小林君。

「ゴミはゴミらしく宙を舞え」知らない女子。


「躊躇ないな、テメェら!」


 他人の命を簡単に売りやがった! 一人除いて僕が不死身と知らないのに。

 というか山内は友達だろう? それはなくね?

 …………。

「はい決定ー」香山先生の声。

「えっ!?」ちょっ、待っ――、

 ポイッ、


「ギャアアアアアアアアア!」グシャッ。


「私を怒らせるとこうなるんだぞ、分かったか?」上から聞こえる

 悪魔の声。

『はぁーい』クラスの悪魔共の声。


「うううう……」

 

全力で涙を流しました。10センチ元の姿のまま縮んだ姿の体で。

         ☆丸日丘中学校 北校舎 2階 1―C教室 AM 8:35

 ガララッ、教室に入る。

「螺旋僻実、遅刻と……」ボードに香山先生が書き込みしだした。

「鬼か!」自分で突き落としといてそれか!?

 こいつ教師じゃねぇよ! なんでこの現実に存在できるっていうんだ!

 まあ、不死身のヤツが言えるセリフじゃないけどね。席についた。

 僕の担任、澤田先生は理科の先生。そして、その代理である香山先生も理科。

 もうチャイムも鳴って1時間目は始まっているようだ。

 どんな授業をするのやら。

「さて、量子力学の表現形式となっている2つの力学を教えてもらおう。では、螺旋、答えろ!」

「無理だああああああああ!」

 できるか!

「それは高校、というより大学で学ぶことです!」続けて言う。

「そうか? では市原!」どうせ答えられる訳が……、


「はい、シュレディンガーの波動力学とハイゼンベルクらのマトリックス力学です」


「ええええええええええ!?」

 なんで!? なんで知ってるの!?

「はっ? こんなの常識だろ?」と岩月君。

「嘘だ!」

「はいはい、ひぐ○しネタはもう古いから」レン。

「ちくしょおおおおお!」

「静かにしてくれる? このクソ虫」また知らない女子。

「………………」

 キツかった。本当にキツかった。

         ☆丸日丘中学校 北校舎 2階 1―C教室 PM6:08

 2時間目、3時間目、4時間目と地獄のような時間が終わった。

 おかしいな。普段はそれほど勉強嫌いじゃないはずなのに。

 もう放課後。人も教室の中にあまりいない。

 アスハバスが出発する時刻まであと20分。

 僕は机の上に突っ伏していた。もうダメっぽい。

 精神的にキツ過ぎた。

「おーい、大丈夫かー?」

 この声は……。

「おお……、レンか……」

「着実に死に向かってるな。おい」

 クラスメイトで幼馴染の尾崎蓮だった。僕の能力を知っているやつの1人。

「ああ、もうだめ……」


「なあ、螺旋?」また違う声、山内か。

「なんだ……?」

「1時間目のことは、 グベッ!?」

 バックドロップしといた。頭から山内が床に叩きつけられる。

「やり過ぎじゃ……」レンがなにか言ってる。

「いや~、友達に3階から突き落とされるとは思わなかったよ~」

 グリグリ、ガリガリ、ゴリゴリ、踏んづけとく。

「ああ、そうそう何でお前、朝走ってきたんだ? そこに転がってる山内もだけど……」

「ああ、そういえば!」

 あの女子は一体何者だろう。

 ゴンッ、山内の腹を吐いたりしないように殴る。

「ゴフッ」よし目が覚めた。

「なあ、山内! 朝に変な女の子いたよな!」確認。

「うん……? 変な女の子? あの川の向こうで鎌を振っている子のことか?」

 多分その女の子は死神だろう。

 はい、

 ゴスッ、

「ゲホッ、ゲボッ」

 あっ、そういやさっきまで胸が上下に動いてなかったな。

「そろそろやり過ぎなんじゃ……」レン。

「いや、コイツと友達のせいで皆から僕はエロ野郎と思われている節があるから大丈夫」

 山内の変態力をナメてはいけない。エロ知識がメッサ豊富で、僕まで誤解される。

「えっ……と、ゲホッ、ゴホッ、ああ……、いたな。顔の可愛らしさがあり得ないレベルの子が制服着てて、シューズに赤いラインが入ってたから……うちの同学年の子かなぁ」

「そうだよなぁ……。でも今まであんな子見たことなかったけど……。あ、そういや安田に感謝しないと、……言い損ねたな」

 教室を見渡して、いないようだからもう帰ったらしい。

「オレはちゃんと言っといたぞ」

 そうかい。

 なんか今日の安田の動きは謎だなあ。僕達を助けたりすぐ帰ったり。

 いつもは普通に致死レベルの悪戯仕掛けてくるのに。

「とりあえずムチャクチャかわいい女の子がいたから見蕩れてたら遅れたのか?」

 レンがとりあえず聞いた情報を整理している。

「「いや、こっち見てニコッと笑いかけられたと思ったら、失神してた」」

 こんな長文がハモる日が来るとは思わなかった。

「失神!? なんだよ、2人して一目惚れか?」

「うーん……」山内が唸る。

「なんか違うような……」

 少なくとも心臓はドキドキしてなかったよな。

 ああ、そういえば、

「ところで、レン」

「なんだよ」

「昨日楽に」とここまで言った直後、

「なんだとおおおおおお!」レンが叫んだ。

「いきなりなんだよ!」うるさいわ!

「うるさい!」と山内。

 周りの人間もムッチャヒいてる。自分の劣等感が強くなるので、なかなか言ったりしないが、レン、 尾崎達は美少年なのである。

 背が高く、眼光は鋭いが人懐こい口調。剣道二段。基本的にクール。

 というか少し悟りきった空気があり、異様なまでに女子に人気がある。告白も数十回はこの学校で経験したとか。僕と正反対だ。

 そんなヤツが全力で叫ぶ様子。

 ヒく以外の選択肢が全く見つからない。

 そもそもこんなに叫んだ理由は、

「はいはい、楽のことが好きなのは分かったから黙れ」

「これが落ち着けるかあああ!」

 違う所から女子達の「ええぇぇぇぇ!!!」金切り声が聞こえた。

 モテるなぁ。

「とりあえず、何があったか今すぐ言え! さっさと言え! 言わなきゃテメェにナノの1000分の1の世界を見せてやる!」

「?」山内はクエスチョンマークを出している。当たり前。

「落ち着けって」

 ゴスッ。鳩尾を抉るように、打つべし。

「グハッ」

「とりあえず昨日会った。それだけ」

「なんでだよ! 楽ちゃんは神山女子中だろ! 昨日合宿中だったオレ達の帰宅途中になぜ会えるんだ!」

「知らないよ。『エターナルフリーダム』っていう通り名だけあるよな」

 本当に。レゾンデートルを違う意味で考えるべきだ。

「そんなに好きなら告白すればいいのに」

「したわ! 卒業式の日に! フラれたけどな!」

「えっ?」

 まじで? そんなこと恥ずかしくてできるかってドナられるパターンじゃねぇの? ドナ○ドのウワサ~的に。

「ちなみに何て言ったんだ?」

 過去の記憶を探るに脈がない訳ではないはず。

 フラれて……というより勘違いされたんじゃ……。

「好きだ、付き合ってくれ」

 おお、直球だ。勘違いする余地が全く無い。

 とか思ってると、


『えええええ!? おまえら付き合ってるのか!!』

 

「黙れよ! ありえないから!」と僕。

 会話の流れちゃんと聞いてただろうが! つか、どこから出てきた!」

 一気にクラスメイトが10人弱から20人強に増えていた。

 本当、お前ら何者だよ。

 女子の中にキラキラと太陽の光を反射する鋭利なものを持ってるヤツとか、顔を真っ赤にしてBLとか呟いてヤツまでいるし。

「で、何て答えられたんだ?」

 あとは可能性としては低いがレンが思い込みによって楽のセリフを勘違いというのがあるが……。

「遊びたいことがいっぱいあるので却下~、だってさ」

「…………


 自由だなあ。

 ふと、時計が目に入る。5時27分。

「ヤバッ、バスがあと3分で出発する! じゃあな!」

「……じゃあな……」なんか哀切を漂わせているレンと、

「じゃあなー」普通の様子の山内。

 僕はすぐさま教室を出て、階段を下りて渡り廊下を渡った先にある階段を駆け降りて、右に曲がって下駄箱から靴を取り出して履いてバス駐車場まで走った。

         ☆高蔵寺行きアスハバス内 PM 5:30

「ふぅ……、セーフ。ハァ、ハァ……」バスの指定座席に座る。

「お前、相変わらずだな」隣に座る人から声をかけられた。

「ああ、矢野先輩ですか、ハァ……。……なんか用件でもあるんですか?」

 あだ名はヤノケン。

「いや、特にねぇけど……」

「そうですか、じゃあ本読みますね」

 活字が僕を呼んでいるので。

「なあ……


「なんですか? 殺しますよ?」本の邪魔をするなカス。

「平然と人を殺すとか言うなよ! 先輩相手に!」

「いや、そもそも先輩としての威厳が全くないですから。他の下級生達にもナメられてますし」

「うっとうしいよ! 知ってるし!」

「じゃあ、読みますね」図書館で借りた泥音!というほのぼの系の軽音部の小説である。女の子4人が メインの話。アニメ化したんだっけ。

 特にウリさんの異様なまでに濁った音で、け゛い゛お゛ん゛ぶつくろうー、というセリフに他の三人がドン引きするシーンが面白かった。初めて読んだ時何か大切な物を失った気がするが。

「もうオレは何も言わねぇよ……。というか言えねぇよ……」

 矢野先輩が何か言った気がするが気にしない。

 僕は本が好きなのである。

 あっ、ビジネス書とか六法全書とかは勘弁。

         ☆高蔵寺駅 PM 5:38

 バスから降りる寸前、心に血の涙を流しながら鞄に本をしまう。

 一緒に降りてきた人の中に僕を見て笑った人がいたような気がするが、いつも通り気にしない。

 そして、コンビニでサ○デーやマ○ジンを一通り立ち読みしてから、家で設定されている門限のバス出発時刻から50分後に間に合う多治見行きの普通列車に乗った。

 そして、疲れていたのか、本を取り出す前に眠ってしまった。

         ☆多治見行き電車内 PM 6:03

(読書の皆様。大変長らくお待たせしました。メインヒロインの登場です)

「……ん?」

 眼が覚めた。どうやら寝ていたらしい。

 なんか変な声が聞こえた気がするが。

 まっ、気のせいだろう。

 少し時計を見るが、寝ていたのは2、3分くらいだ。

 高蔵寺駅から多治見駅まで普通列車だと12~13分かかるから後7~10分くらいで着くようだ。

と、そこで目の前に女の子が立っているのに気がついた。

背は155センチ程度。手足はすらりと長い。中学生にしては出るトコが出てる。

黒と茶が綺麗に混ざった髪は長く、ストレートで、瞳は茶色だ。

顔の造形はとても整っていて、柔らかで大人しそうである。

とても懐かしい。神山女子の制服を着ているのは初めて見たが。

僕の顔を見ながら微笑んでいる。

「……操女(あやめ)か?」ボンヤリした頭で聞く。

「あっ、……ラル、起きたの……?」涼やかで柔らかな声。

月無操女(つきなしあやめ)。僕の幼馴染だ。僕の能力についてはよく知っている。僕よりもと言っていいだろう。ラルというのは螺旋を音読みした螺旋を英訳するとスパイ「ラル」から。

「なんでここにいるんだ?」一番の疑問。

「えっ、えっと……、冬期補習の帰り…」

「なんでだ? お前すごく頭いいのに」

 はっきり言っちゃうなら楽より下だが。努力家と天才の差という感じに。

 でも、コイツの性格上サボるとかまず絶対にしないし、それなりに要領もいいはずだ。

「えっと、全員参加だから……」右上の方に目を向けている。僕はそこにいないのに。

「ふーん、マルヒと同じなんだ……」マルヒとは丸日丘のこと。

 別にいいけど。

「楽はいないのか?」

「いないよ…」何故そこは即答なんだ。

「……なあ」

「うん……?」首をかしげている。かわいいなぁ。

「最後に会ったのは小学6年生の修学旅行だったけど元気にしてたか?」一応聞いておこう。深入りはしないように。

「……うん…」嘘は吐いていないようだ。

「そっか、良かった」なら、問題は無い。

 操女は去年の10月18日に修学旅行の京都で失踪した。

 そして、今年の1月30日に家の神社に帰ってきた。綺麗な服のまま。

 本人によると知らない男に攫われてやっと解放されたとか言っているが、嘘だろう。

 僕は全く信じていない。

 まあ、代わりに何をやっていたかなんて想像もつかないけど。

 神山女子の受験を合格したのはともかく、そのあとは小学校に登校しなかったのは不思議だ。卒業式も不参加。

 それまで一日も休まずに来てたのに。

「なあ、操女」

「…うん…? 何…?」

「8歳くらいの金髪金眼の女の子の知り合いっているか?」

 アヤなら操女も含まれるはずだ。

「えっ…………? キ○ショット、アセロラ○リオン、ハート○ンブレードさん…?」

「意外とラノベ読み込んでる!?」そしてパロディーネタはやめろと言った。

 まっ、どっちでもいいか。どうやらあの物騒な金髪の女の子の知り合いではないらしい。

 いいことだ。

 その後は、雑談。レンの告白とか神山女子での生活とか。

 さて、時計を確認。

 電車が多治見に着くまであと2分か。

 周りも確認。

 僕らから離れた所に1組の居眠り中のサラリーマンがいるのみ。

 僕は鞄から筆箱を取り出した。

「…………?」操女がいきなり何をしようとしているのか分からないといった顔で見つめている。

 そして、僕はインクを使い切った赤ペンを取り出し、操女から3メートル程距離をとる。

「ねぇ、どうしたの…? ラル…?」

はい、ピッチャー、螺旋。

  僕は操女に向けて全力で赤ペンを投げた。

 まあ当たっても大して痛くはないだろうけど。

「きゃっ…!?」

 

 赤ペンが音も出さずに粉々に砕けた。


 操女の拳で。

         ☆3年前 三毛田(みけだ)小学校 トイレ前

「ちょっ、やめてよ!」

 昔の僕の声。小学4年生の頃。

「おら、いけ!」

 確か、ともや君だったと思う。

 僕は全力で足を廊下に押し付けていた。

 背中を押して女子トイレに押しこもうとするいじめに対する対抗策。

 まだ殴るとか蹴るに抵抗感があった時だ。

 そして悲劇が起きる。この時、抵抗感が完全に消えた。

「うわっ!」

 足が滑った。

 女子トイレの横開きのドアのレールの段差に引っかかり、僕の体が前のめりになって中に入ってしまう。

 ガララ、僕をすぐさま出てこないようにするためだろうか。すぐさまドアが閉まる。

 そして僕が倒れ込んだ先に操女がいた。

 ビックリして目が見開いている。

 あっ、と思った時。


 ドグシャッ、僕の顔面が操女の腕に貫かれて、体が千切れた。


         ☆多治見行き電車内 PM 6:11

「……………なんでやったの……?」

 ちょっと哀しそうだ。目が少し潤んでいる。……かわいいなぁ。

「いや、ごめん。久しぶりに会ったから……」

 危なかった。普通に電車が揺れてうっかり僕が操女に触れたらまた殺されていただろう。

 僕は過去に何度も操女に殺されている。数え切れないほどに。

 ありえない程に怪力なのだ。

 厚さ5センチの鉄板を拳で簡単に貫く。

 高さ20メートルの建物の屋根に飛び乗れる。などなど。

 まあ、多分僕と近い能力者というやつなのだろう。

『まもなく多治見~、多治見~、お客様は…………』

 アナウンスが流れ出した。

「あっ、もうそろそろだな」

 座席から立ち上がり鞄を背負う。

「うん…」

 いそいそと操女も鞄を肩にかけて立ち上がった。

 一緒に出入り口の前に立つ。

「……ねぇ……」


「うん?」

「今日も走るの…? 駅構内で…」

「今日もって……、前にも見たことがあるのか?」

「えっ…えっと、目立つから…。たまに走っているのを見かけるし…」

「うーん。まあ、門限あるから。本屋やコンビニにできる限りの時間を使って寄り道してるし」

 そして間に合わなかったたりして飯抜きにされる。

「……まあ、がんばってね……」

「うん、ありがと」

 プシュー、多治見駅に到着した。

 ピンポン、ピンポンと音を出しながらドアが両側に開く。

「じゃあな!」

 軽く手を振って、一気に僕は走り出し、駅の階段を登る。

「うん、じゃあね……」

 こっちを見て、笑いながら操女が手を振っているのが見えた。

やっとメインヒロイン出せた……。

読んでくれてありがとうございました。

続きも余力があればお読み下さい。

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