信(じてください)第一章 始まり ぱあと2
前回ふざけてすみませんでした。
☆高蔵寺駅5キロ以内のどこか PM 9:34
「あの……」
スッ
そうですか。無視ですか。ナメてんじゃねぇぞゴルァ! じゃないっすか。ふーん、そんなことするんだ。一体何様ですか。小学校の頃に人には親切にとか言われなかったんですか。もしかして、御老体にしか優しくしないんですか。あなた熟女好きなんですか。老尊若卑主義なんですか。その幻想を僕の右手でブチ殺して――
「何? 独り言キモいよ」後ろから声をかけられた。
「キモい言うな!」
誰だよ、そんなこと言うの! 初対面の人に対して失礼な。
(お前が言うな)
ん? 今変な声が聞こえたような?
振り返って顔を見る。
「誰?」
普通に特徴無しの男の子。塾帰りだろうか。黒い大学鞄を持っている。多分中学三年か高校1年のどちらかだろう。
「ん……まあ別に俺のことはどうでもいいだろ。お前見たところ小学五年生くらいだけど。どうしてこんな夜遅くにこんな所にいるんだ?」
「……えっと迷子になっちゃって……」
本当に。
一体どこに高蔵寺駅があるのやら。
ちなみに後で知ったことだが丸日丘から高蔵寺駅まで最短距離で行っても3.9kmはある。
1度だけしか通ったことがなく、今が夜であるということから僕が迷子にならずに帰ることが絶望的だったのは言うまでもあるまい。
「どこに行きたいんだ?」いきなり男の子が訊いてくる。
「え?」
「いや、なんか訳ありそうだったし。警察に送ってもいいのか?」
「できれば、親に迷惑がかかるので、それはなしで……」
元々面倒かけないように歩いて帰っているのだ。警察から、お宅のお子さんが警察署にいるので即時出頭せよ、とかいう事態は避けたい。
もう大分遅れているから、充分迷惑かかっているだろうけど。
心配しているだろうか。
「で、どこに行きたいんだ?」
「……高蔵寺駅です。」
「ん。分かった。ちょっとこっち来い。」
「はい。」
20メートル程、目の前の男の子につき従って歩く。
すぐにコンビニに着いた。
「ちょっと待ってろ。」
「えと、はい。」
そのまま男の子……よく考えたら年上の人に対して男の子は失礼じゃないだろうか?
……少年にしておこう。名前もさっき教えない素振りをしていたようだし……。
その少年は公衆電話の前に立って話し出す。
プルルルル。
「あっ、もしもし、母さん? 俺だけど。……ちげぇよ! 今時オレオレ詐欺とかやるヤツいないから! キャーキャー言うなよ! そんなキャラでもないだろ! とりあえず塾帰りで変な小学五年生の男の子が迷子になっててさ……子供の声を聞かせろとか、俺は誘拐犯かよ! 違うから! 送ってあげるだけだよ! だーかーらー、地獄送りにする訳ねぇだろ! 駅だよ! え・き! 高蔵寺駅! ……今日のご飯は抜きだとかなんだよ! ショタコン記念日ってどんな記念日だよ! そこでサ○ダ記念日を引き合いに出すなよ! あんたとは天と地の差があいてるよ! …………人の飯に育毛剤かけんな! 殺す気か! ……ああ、もう! 切るぞ!」
ガチャッ
……………………。
楽しそうな家族だ……。そして、心の底からシンパシーを感じる……。
☆高蔵寺駅4キロ以内のどこか PM 9:39
「じゃ、今から送るから」なんか顔がげっそりしている。大丈夫かな。
「えと、ありがとうございます!」
「どういたしまして」そのまま歩き出すので、僕も一緒に歩き出す。
「名前を教えてくれませんか」
「いいよ。別にお礼とかは。」
「ショタ系のBL本を送りますから!」
「送んな。俺を一体どんな目で見てやがる」
「うーん……そっち系の人かな……?」
「俺帰るな。後は自力でなんとかしろよ」
「すみませんでした! だから進む方向を急旋回しないでください!」
「ちっ」
☆高蔵寺駅付近 PM 10:05
歩き出して30分後、
「あっ、ここは……」見覚えのある店だ。
「もうすぐ、高蔵寺駅だよ」
よし、このまま電車に乗って、…………………………………
電車に?
……つまり、定期券またはお金が必要だよな……
あっ! 今日、財布持ってねぇ!
合宿前に学校へ行く時は、親に送ってもらったし!
制服は家にあり、尚且つその中に定期券入れてる財布が入っている……。
―――――――――――――――――オワタ(lll ̄□ ̄)
つまり、そもそも最初から親を呼ばないと帰れない訳で、この名も知らない少年による手助けも何も意味が無かった訳で……!
くっ! 落ちつけ! 今のこの感情をこの少年に悟られてはいけない。こんな世界の全てに絶望した感情を表に出してしまったら心配かけることになる! できるだけ無表情だ、無表情に……!
「どうした? 顔が作画崩壊した漫画みたいになってるぞ?」
どうした、僕の顔筋。
「いえ、なんでもないです! いきなり着いたからちょっと戸惑っていただけです! 本当にありがとうございました!」
「まあ、いいけど……。とりあえず、もう自分で帰れるね?」
「はい! ありがとうございました!」
駅の道路を挟んで向かい側にある電気屋さんの前で立ち止まり、
「じゃあ、帰るね」
そのまま、今来た道を逆に辿って少年さんは歩き出す。
「本当に、ありがとうございましたー!」感謝を込めて手を振る。
少年さんはこちらを見ずに手を軽く振って帰っていった。
格好いいなあ。
☆高蔵寺駅周辺 PM 10:15
「さて……、どうするか……」
お金は無いから電車にも乗れないし、親に助けを呼ぶことはできない。
お土産用のお金を少し残しておけばよかったのに……。
もちろん、高蔵寺駅から多治見駅まで歩くのも無理。家に着く前に、日が昇る。
「おい」
じゃあ、どうしようか。友達もいる訳ないし、今から自動販売機の下やお釣りの所から10円玉を探すのもちょっと……。
「おい」
じゃあ、どうやって帰ろう? お店の人にすみませんって言って電話を借りるか? それもなぁ……。
「おいってば」
ガキッ、旋風脚が腕にクリティカルヒット。
「ぐおおお! 腕があああ!」
腕がいきなり外された。
たまらず、攻撃をしかけてきた相手を見る。
「…………」絶句。
さっきの金髪金眼の女の子がいた。
「おお、やっとこっち向いたか」
「…………」
麦ワラ帽子は元のままだがワンピースが真っ白になっている。
金眼はもう輝いてはいない。まあ、綺麗な瞳だし、比喩的な意味では輝いている。この際別にどうでもいいが……。
「何だ、じっと見て……まさか!?」
「まさかはない」
ロリコンではないのだ。年齢的な差としては5歳くらいだからセーフだと思うけど……。現在の僕は小学5年生だから3歳差だし。
というかムチャクチャ美少女だ。モデルとかそういうレベルを超えている。まるで人間じゃないような……。
「おら、なんか喋れ!」
ガキッ、
「グオオオ、足がああ!」足がローキックで折られた。
「とりあえず一つ聞きたいんだけどさー」
「喋れとか言っておいて、そっちのターンかよ……」
なんのいじめだ。まあ、いつものことだけど……。
「服までいっしょに復元するのか? ご丁寧にサイズまで合わせて?」
「…………」ウザいなあ。
まあ、いいや。ラグナレクって知ってるか?」
「えっ?」
ラグナレクって北欧神話の最終戦争か? たしか亜神ロキがミズガルズ蛇やフェンリル狼、巨人族なんかを率いて、至高神オーディンや豊作と平和の神フレイ、美と愛の神フレイヤ、雷神トールなんかと戦った戦争のことだったはずだけど……。
「知らないのか?」
「えっと、とりあえず神話の話?」
「それはちょっと違うかな。ムッチャ関係あるけど、能力者については?」
は?
「スキルハンドラー?」
「はい、その反応知らないね。分かった分かった。じゃあ 」
「説明してくれるのか?」
「帰ろっ、と」
「待て。ちょっと色々と待て」そこでその引きはないだろ。常識的に。
アヤ? ………………誰だろう?
「うん? 思いつかないか」
「候補が多すぎ」
アヤと呼べる対象が僕の知り合いに三人以上いる。
「お前、ここでなにしてるんだ?」
とりあえず、一番聞きたいことを聞いておく。本当に今すぐにでも帰ってしまいそうな様子だし。
「お前じゃない。レイヤだ!」
バキィ。
「ぐおっ、左肩がああ!」また砕かれた。
はやりなのか? 人に対しては常に暴力が基本とか? ヤバい! 完全に乗り遅れたかも! 別に遅れてもいいよ。暴力|(?)ダメ、絶対。
「それになんで僕を殺した? あとあのジョギングしてた男も…」
「ああ? スキルハンドラー見つけたら殺すのが当たり前だろ? まあ、意味を理解するのは随分先のことになりそうだけどなっ」
シュン、いきなり目の前から消えた。二度目だ。
でも消えたというより高速で上にジャンプしているようだ。下のコンクリートにヒビが入っているし。
……………………殺すのが当たり前か……。
どうやら相当僕の住んでいる世界というか日本はヤバいものだったらしい。
☆高蔵寺駅近くのデイ○ー内 PM 10:45
レイヤとの会話|(?)を終えて、僕はコンビニで時間を潰してしみた。
30分後、
「ジャ○プは日本の宝ですな……」読み終えた。でもどうしよう。
こんな状況でなければ、心の底から楽しめたのに。
ギィィィ
「ありがとうございましたー!」
店員さんのかけ声を後ろに僕はコンビニを出る。スマイルは0円。
☆デ○リー駐車場 PM 10:46
「ちゃお」
幼馴染の美少女に声をかけられた。コンビニを出た直後に。
「………………………」なぜだ。
「おやおや~、どうしたのかね~? ヒガミン? 嫌なことでもあったのかい~?」
「……なぜお前がここにいる?」
「愚問だね」
「……そうだな」
こいつになぜそこに存在してるいとか聞くのはムダだ。
「てへっ♡皆のアイドル涼宮ハ○ヒさんだよ!」
「いつからスニ○カー文庫の人気作品の主人公になったんだよ!」
「それは禁則事項――(以下自主規制)」
「パロディーネタ連発すんなよ! そんなんで人気出るか!」
いや、そもそもここは現実なので作品とか関係ないんだけどね。
「……大体、本当になんでここにいるんだ? お前神山女子中の生徒だろ? スケジュールとか知らないけど、普通に考えても冬休みだし、最近連絡なかったから僕が研修に行ってたのも、レンに聞いたりしないと知らないはずだ。ましてや、僕がここにいる事情なんて……」
とそこまで言って、
「教えんよ~ワトソン君」遮られた。
「誰がワトソンだ。どこから出したそんな服」
というか今瞬きして目開いたら既に茶色のコートと帽子とか着ているんだが。今さっきまで普通の私服で手ぶらだったのに。
「どうでもええじゃないか~、ええじゃないか~」
「目の前で物理法則をいともたやすく壊されてどうでもいいとかいえるか」
「君の『最弱不滅』も似たようなというか、もろ壊してるじゃない?」
「…………」
『最弱不滅』。さっきの不死身の能力。受けたダメージの分だけ体が小さくなり、完全回復する能力のこと。周りの人、って言っても知っているのは両親と従姉妹と幼馴染三人だけだが、とりあえず知っているヤツはそう呼ぶ。
一体誰が呼ぶようになったのやら。名前からしてなんとなくダサい。
(死ね)
「誰だ!? 今、何かいったか、楽!」
「言ってニャいよ~?」
幻聴か?
……ヤダなぁ……
しかしまあ、
「次は神山女子の制服か?」
「当たり~」
早い。今ちょっと目を話しただけなのに。
デザインは人気が高いんだよなー。どうでもいいけど。
なんとなく、誰かさんのために、頭の中でコイツの紹介を一通りしておかなければいけない気がしたのである。
桜木楽。僕の幼馴染。
甘い思い出は全く無い。勘違いしないで欲しいだが僕はアニメや小説、漫画の主人公のように鈍感ではない。コイツが僕、というか周りの男性に対して恋を抱いてないということはちょっと見ればわかる。告白されまくっても全拒否。
普通に茶髪。タレ目。ツインテール。中学生にしては少々胸がなさ過ぎるように思えるが全く気にしていない。前に、
「貧乳はステータスですから!」と公言していた。バカだ。
ただし、メチャクチャ頭がいい。神山女子中は頭が悪くても入学できる所ではないのだ。
そしてメチャクチャ美人である。それは間違いない。
それ以前の問題を大量に抱えているが。
「まあ、ヒガミン困っていらっしゃるけど大丈夫! 次元の穴を開いて3光年先まで一っ飛び!」
「死ぬわ!」そしてそこは僕の目的地じゃ絶対にない!
いや、性格じゃなくてさ。通りの名の方なのである。
通称『エターナルフリーダム』。誰だ、この名前付けたの、と問い詰めたいような通り名。神出鬼没でやりたい放題だから、らしい。
例えば、
僕を面白半分で富士山の崖から突き落としたりとか。
富士登山は僕の家族ぐるみで楽は参加していないはずなのにねー。
本当になんであいつあんな所にいて、あんなことしたんだろう? もう二度と静岡県を出られないかと思ったよ。ハハハ。
「ところでワトソン君」
「…………なんすか」逃げ出したいんだけど。どうせ追いつかれるが。
「帰る方法が分からないのかね?」
「……まあな」なんで知ってるかは聞いても教えてくれまい。
「何かわすれていることはないかね」
「……さあな。忘れてることだらけだが?」
本当に。いつも忘れてばかりだ。どうでもいいことも。本当に大切なことも。
「そのキャリーバッグには何が入っている?」僕のバッグを指さす。
「えっ? 普通に旅行用の日用品と勉強道具だけだけど」
「おやおや、お金はないのかい」
「ねえよ」全部お土産代に費やしたしな。
「山内君にカツアゲして奪った金があるだろ」
「ねえよ! 人聞きの悪いこと言うな! 今思い出したけど、貸した金を利子0で返してもらっただけだよ!」
そういや、違うポケットにしまってたな。
「確か丸日丘の校則にお金の貸し借りは禁止と……」
「なんで、お前はそんなになんでも知ってるんだろうね……?」
本当に。そろそろ腕が勝手に動き出しそうだ。
「なんでも知らないわよ。知ってることだけ」
「いつ羽川さんになってんだよ。殴るぞ?」パクリはやめろって言ったよな?
そろそろ拳を痛めないようにタオルを巻いておこう。
「とりあえずその金を使って親に電話したら?」
「そうだった――!」
ダッシュダッシュ!
読んでくれてありがとうございました。