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なんか変なことになった@  作者: 良正 儚
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14/15

第五章 最弱不滅 ぱあと4

ラストバトルですよー。

     ☆ 封印された闘技場内 PM  5:32

「はっ」

 目が覚めた。

 何だ、今の生々しい夢。…………というか夢じゃない?

「…………ラル……」

 心配そうな可愛い顔が僕を見下ろしている。

 操女か……。……ん? なんで顔がそんなに近く見えるんだ? それに妙に後頭部が心地いいんだが。

 …………。

 

 操女に膝枕されていた。

 

(何だと……! コイツ許せん、マジ死ね!リア充爆発しろ!!!)

 幻聴、今はマジ黙れ。

 というかテメェが書いたんだろうが。…………? 何を言っているんだ僕?

「……あのね……、ラル……」

 操女がすごく言いにくそうに口を開く。

「何でしょうか?……操女さん?」

 決して後ろめたいことがある訳ではない。

「一体、何を願ったの?」

「………………いやぁ、……あの、……その……」

 すごく言い辛いと言いますか……。

     ☆ 尾崎家の隠れ家 PM 5:33

「ねぇ、何でヒガミン生きてるの?」

「…………さあ?」さっきまでずっと操女にぐちゃぐちゃにされてたのにな。

     ☆ 不明

●逃げられた―――――――――!!●

     ☆ 不明


●願いを聞きましょう●


 ……こういうパターンって小説だと願ったら負けだよな。

 まぁ、既に死んでるからいいんだけどさ。

「操女の体内残響を……、あっ、ごめん、今のなし。」

●…………?●

 これって、大して意味ないような気がする。どうせ操女は何回か人を殺してしまうだろう。これから先も情報なんかに襲われたりする訳だし。それに、世界滅亡のトリガーが僕やその友達にかかっているなんてマズいだろ。

 だったら、


「狂った世界を元通りにして、みんな能力者じゃなかったことにしてください」


STORY ERROR


「は?」

 目の前の全てがその言葉で埋め尽くされ、いつの間にか気絶していた。

 目が覚めたら操女が側にいたので、どうやら生き返ったらしい。

     ☆ 作者の独り言

(そんなことになったら物語にならないからね)

     ☆ 大山の家 PM 5:34

「うーん、此岸花は一時間で生き返るって話なのに15分くらいで生き返ったってことは、『最弱不滅』がうまく発動しなかったのかな」

「余所見とは余裕ですね」

 影さんの出してきた黒いオーラを1ミリ単位で避けて、

「はい、そうですけど?」

「っ!!」

 うまくいくと思ったんだけどな。

     ☆ 封印された闘技場内 PM 5:34

「……私ね、……」

「……はい、……」お互い正座して向かい合いながら、僕は操女の次の言葉を待つ。


「殺人衝動が今もあるんだけれど……」


「…………」

 やっぱりか。どう考えてもあれは僕の願いなど聞こえなかっただろう。

「失敗したってことか……」

「うん、そうみたい……、だから…」


「逃げて…。もう、こことは違う世界に……。もう、どこも安全じゃない…。今、精一杯抑えてるから……早く……」


「…………。あのさ、」僕は口を開く。

「…………?」

「昔っから、僕ってさ、失敗ばかりしてたよな……」

「そう、だね……。そうだけど、早くここから……」

 僕は構わずつづける

「そんな僕をさー、いつもいつも周りの誰かが最後には助けてくれたんだよ」

 それは例えば、家族。例えば、幼馴染。例えば、友達。例えば、先生。例えば、世界。

 僕の世界。

「…………」

「迷惑かけてばっかで、ロクに恩なんて返したことなんてないのに、だぜ?そりゃ、ちょくちょく僕のこと殺したりするけど、それだって全部、全部僕のせいだし。そうなると分かってたうえでの自分勝手だ。しかも、今回もしぶとく生き残らせてもらってる」

「…………」

「その中にちゃんとお前は入ってる。今まで何回命を救われているんだろうな。数えたらきっとお前のこと意外、何も見えなくなっちまうかもな」

「う……」

「大事なものが足りてない、人として間違っているとか何とか言ってるけどさ、結局それって、ただの心配の言葉じゃん。こんな僕をだぜ? 優し過ぎだろ。甘やかしすぎ」

「…………」

「……だからさ、あんまり辛いのはごめんだ。何せ今時の温室育ちで、自分の世界ねどこを棄てるなんて絶対無理なんだよ。不満は吐いて捨てる程あるが、褒め言葉も吐いて捨てる程あるんだ。そんで、そんな感想はここからお前が欠けるだけで、もう成り立たないの。言いたいこと分かるよなー?」


「失敗ばかりの僕が自分のために世界へ汚名返上だ。必ず成功させるからお前が僕をもう一度殺せ」


「でも……、ラルは……!」

「はいはい、じゃあ、操女さん、これなーんだ?」

 僕は金色の栞から数冊の本を出す。

「え……、それは私の……」

「BL本だ」さっさと僕は正解を言う。

 ちなみに、これはその中でも操女が特に大切にしていた冥界にあったヤツだ。

「何で……、それが……」

「…………」僕は操女の言葉に答えず、


 栞からライターを出して燃やした。


     ☆ 封印された闘技場内 PM 5:38

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 怖いよ! 誰か! 誰か助けて! ヤバい! 本当に死ぬマジでこれは死ぬ!

 やらなきゃ、よかった! やるにしても、もっと、もっと違う手段があったはずなのに!

「ごめんなさい! ごめんなさい!」必死に謝るが、

「■死■消殺■■■■落■■―――――――――――――!」

 謝罪の言葉どころか僕自身をかき消す咆哮。

 比喩ではなく本当によく僕の存在そのもの蒸発させる。

 現在の状況。

 操女さんはもう消滅したコロシアムの中央で地球そのものを壊そうとしているかのように刀を振り回して暴れて半径200キロのクレーターやら時空の穴なんかを作りながら絶賛咆哮中。

 頭には鬼らしい角、髪は輝くような銀色で、瞳は真紅に変化している。

 眼光だけであちこち破壊し、周囲の空気は真空化していて、下手にどころか上手く近づいても死ぬんじゃなくて、消滅してしまう。

 これじゃあ、はっきり言ってどうしようもない。操女の体内残響をなくせない。

「どうすりゃいいんだ……」このままじゃ死ぬに死ねない。

 と、そこで、


「手伝ってほしい?」


 背後から幼い声をかけられる。この声は……、

「レイヤ!?」

 振り返るとそこにはやはり前見たのと同じ白いワンピースと麦藁帽子の女の子。

 ギラギラした金色の瞳とつややかな肩口に切られた金髪も懐かしい。

 会うのはもう、3ヶ月ぶりだ。

「よーっす」

「どうして……、こんなところにいるんだよ!」

「アヤとヒガミ助けたいんだったらここ行けって、お前の友人らしいオオヤマがメール送ってきたんだよ」

「…………」大山、友達甲斐あるなぁ。レンとは大違いだ。

 ありがたい。……だけど、

「危険だ。帰ってくれ」できるだけ無愛想に言って怒らせて帰らせよう。

「却下」

 メキョッ、顔面にレイヤのひざがのめりこんだ。

「…………!」その場で悶え苦しんでいると、

「で、オレは何をすればいいんだ?」

「…………」逆らう気力がわかない。

 つか、喋れねぇよ。お前のせいで。

 バキッ、

「右腕がああああああ!」

「喋れんじゃん。さっさと言え」

 勘弁してください。

「…………、とりあえず、操女のところまで連れてってくれないか?」

「はいよっ」レイヤは僕の胸倉を掴み、

 そして、投球フォーム。……ん?

「連れてってくれと言ったのであって、投げ飛ばしてほしいとは一言も言ってねぇ!!」

「えぇ――――――」

 ……コイツいない方がいいんじゃないだろうか。

「お前空気操れるんだから空くらい飛べるよな?」

 もしかしたら、連れてきながら飛べないのか。そもそも飛べないのか。高所恐怖症は治ったと言ってたけど。

「それくらい楽勝に決まってるだろ」

 ドガッ、バキッ

「左腕があああああああああ!」

 コイツいちいち僕の体を破壊しなくちゃ気が済まないのか。

「痛みを知れ」

「ぺ○ンかよ! ナ○ト読んでるヤツしか分かんねぇよ!」

 ガシッ、背後から掴まれる。

「じゃ、飛ぶぞ」

 いきなり言われたので、返事も反応もできずに、


 背後からの突風になす術もなくぶっ飛ばされた。

 

     ☆ 封印された闘技場内 PM 5:52

「し、死ぬかと思ったわ!!」

 悲惨な状態から普通の飛行といった感じの安定感が出たところで文句を言った。

「うっせぇ、落とすぞ」

「すみませんでした」プライドなどとうの昔に捨てたわ!

 下は暗闇しか見えない穴だらけで、落ちたら二度と帰れなさそうだ。

「オレまでアヤのところまで行かせて何をさせる気なんだ? 返答次第じゃ、殺す」

「お前、助ける気あるのか……?」

 やるって言うなら、何でも覚悟しているくらいの気概がほしい。

「あの目で直接見られるだけで、こっちは即死なんだぞ。当たり前だっつーの」

「まぁ、そうだけど。……そうなったら僕が死んでも生き返らせるから心配するなよ。嫌ならさっき言った通り、危険だから帰っ……、ん? どうかしたか? 顔赤いぞ?」

「…………うるせぇ」

 そう言ったきりレイヤは黙り込んでしまった。風邪かな?

 うーん、ここでトキメいたのかと聞けば、確実に死は免れまい。

 まぁ、どうせこの後、本当に死ぬんだけどな。

「とりあえず、あの次元を切り裂く刀を操女から奪い取ってくれないか?」

 それさえクリアすれば、操女の攻撃を普通に受けて死ぬだけだ。

「ふーん、それだけでいいんだな?」

「ああ」多分だけど。

「まぁ、ちょうど良く目標も決まったことだし、」

 操女の姿が間近に見える。


「いっちょ、戦闘ものがたりを始めるか」


 僕とレイヤの体が操女に向かって急降下しだす。それに合わせて僕も口を開く。


「ああ、今度こそ終幕にしてやる!」


     ☆ 封印された闘技場内 中央 PM 5:56

 …………いつの間にか近くに1人の人間と1体の神がいる。

 …………殺そう。

     ☆ 封印された闘技場内 中央 PM 5:56

 ガインッ!!


 僕とレイヤが操女の目に入った瞬間、彼女の刀が固く透明な風壁に激突する。

 操女は特に何が自分の邪魔をしているのか考える様子もなく狂ったように刀を振り回す。

「その風壁は簡単には壊れないぜ、アヤ」

 レイヤはその目をギラギラと強く輝かせながら言う。

「とはいえ、」

 ガンガン! と常人には目に見えないくらいの刀による連撃。

 そのうち、ピキッ、パキッとヒビが入るような音。

「『殺神鬼』にはそんなにもたねぇか」

「割れてきてるんだけど……」

「気にするな。予想通りだ」

 シュン、と音がすると隣にいたレイヤがいつの間にか操女の背後にいて、空気の弾丸を放つ。

 操女は咆哮しながら、振り向き際に刀を振るう。

 それを見越してか、レイヤはまた高速移動で操女の死角に移動して風による一撃を放つ。

 操女とレイヤの高速で行われる勝負はすぐに僕の目には追えなくなり、時折2人のどちらかが一瞬見えるだけになる。

 …………ツッコみたい……。

 直後、バリンと音を立てて、おそらく僕を守っていた風壁が割れた。

「ごめんなさい僕何も言ってませんドラゴ○ボールかよ! ってツッコみたいなんて思ってませんそんな超人バトルは無理です助けてください」

 慌てて命乞いしてると後ろから声がかかる。

「おい、ヒガミ」

「レイヤ!? 大丈夫なのか?」

「ああ……、言われたとおり……刀は奪ってやったぞ……」

 息はキツそうだが、どうやら無傷のようだ。

 レイヤの右手には大きな一振りの刀が握られている。

「後は……、頼んだぞ……」

 操女は、レイヤに蹴り飛ばされたのか、降下中のようだ。

 本当に、お前は、……

「よくやった!! ありがとな!!」

 レイヤは薄く笑ってから、

「本買うの……、今日だからな……」

 そう言ってレイヤの姿が消える。

 そう言えば、今日は土曜日だったな……。もう3ヶ月も経ってんのに今更だな……。

 まっ、いいけど。どうせ、これから死ぬからもう会えないし、本屋にも行けない。

 操女が僕の姿を見つけたらしい。

「■■失■■■■終■■―――――――――――!!!!」

 それに、僕はこの怪物を終わらせないとな。


「終幕だ」


 その真紅の瞳が、僕を射抜き、


 ブシュッ


 僕の胸を操女の腕が貫いた。

 それでも僕は1つの言葉を呟く。

「発動、『最弱不滅』」


 僕は、死んだ。


     ☆ 不明

●何だ。また来たの?●

     ☆ 大山の家 PM 6:00

「ちぇっ、逃げられたか」

 俺――大山優は呟いた。

 床も壁も血に染められた自室で。

 血の川がベランダの方へと流れている。

 その大量の血に俺の血液は1滴も含まれてはいない。

 まあ、これでしばらくは手を出せないだろう。

「…………掃除が大変だなぁ……」

 この部屋で、俺自身を除いて唯一血で汚れていないノートパソコンを開いてインターネットに繋げる。

「オークションとかで確か200円で掃除用のアイテムが売ってたような……」

 サラーッと眺めているうちに思い出した。


 あっ、もう買ってた。


 もう1つの戦闘も同時に終結した。


つ、かれた……。

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