第五章 最弱不滅 ぱあと3
長引くなぁ……。
☆ 封印された闘技場内 PM 4:45
「面白いことやってますね」
操女を背負い投げしてから5分後に、いきなり後ろから声をかけられた。
シュン、
「危な!」避けるのが少し遅れてしまった。
ビュッ、僕の右手が操女の足で二分の一になり、
ドガアアアアアン。
またクレーターが1つでき上った。
ちなみに、アナザーコロシアムの土は10秒経つと元通りになる。
だから、僕は一度も足場をとられて転んではいない。
後ろを振り向くと、陰気なオーラを放つ男と高校生くらいの女子、身長3Mを超えそうな巨漢がいた。
「影と雷?」
何故ここに情報の残党がいるんだ?それとあの巨漢も情報残党か?
シュン、シュン、ダッ
「チッ」
さっと避けながら聞く。
「どうしてここにお前らがいるんだ!」
「いえ、神殺しの鬼女とあなたが闘っていると聞いたものでして。今日はあなたが死にかけのところを回収しようと思ってるんですよ。おっと」
ヒュン、
操女の手に一瞬で刀が現れて影に斬りかかるが避けられたようだ。
まあ、普通に殺意はアイツらに対して向かうよな。というか、
「殺っちまいな」
「外道ですね、あなた」
ガイン、
影は自分の黒いオーラを盾にして操女の刀を受ける。
ビキキキキキッパキ、オーラはもう限界に陥っている。
「後で殺し直しゃいいんだし」
まあ、僕じゃあ、あの3人、というか1人も倒せる気がしませんから。
「大体殺し直したら責任取れたとでも思っているのですか……?よいしょっ、と」
パリン、操女の刀が影のオーラを斬り裂くが、影には当たらなかった。その影は操女に対して手の平を向けている。
「思ってる訳ないだろ。やれるだけやって体裁整えただけなのは自分でもよくわかってる」
何をする気だ……? 基本的攻撃は僕の能力を少し受け継いでるんだから、殆ど無意味なはずだが。
「分かっているなら、いいのですが。さて、あなたの心を『影』みせてもらいますよ、『影喰い(シャドーエロード)』発動」
「……!?」操女の顔が驚愕を表す。
「ヤバい! 逃げろ、操女!」
とは言ったものの手遅れで。
操女の頭にまた角が生えてきていた。
「何しやがった! テメェら!」
「興奮しないでください。私はあなたがやろうとしたことを手伝っただけですよ?」
「オレはこんな風にやろうと思ってた訳じゃねえ!」
と僕の叫びを無視して、うずくまって頭を抱えている操女を指差しながら影が巨漢に言う。
「では狂さん。とどめをお願いします」
「…………」
「やめろおおおおおおお!!!」
僕は怒鳴りながら操女のところへと走るが、
「能力『狂天』発動」
狂と呼ばれた巨大な男が、僕が走り着く前にそう呟いた。
操女の体が橙色の光に包まれて、
「■■■■■■■■■――――――――――――!!!」
絶叫。耳が裂けそうなくらいの。
「では、御機嫌よう」影が言った。
バリバリバリッ、空中放電を起こした空間に情報残党の3人が包まれて、次の瞬間にはその空間ごと3人が消えていた。
☆ 封印された闘技場内 PM 4:34
「操女、僕を殺せ」僕は言った。
「え……?」
操女が何言ってるの? という顔をする。
「操女の殺意が溜まりに溜まって危険なことになっている現状をどうにかする方法は3つある。もちろん2人とも死なない前提で」
「……1つは分かるけど……」
「そう。1つは簡単だ。現在どちらも不死の能力があるんだから僕か操女のどちらかを死なない程度の殺意で殺しまくるという方法だ」
「…………」
もちろん僕の結論としては却下だ。
何より僕は痛いのは嫌だ。だからと言って操女に任せる訳にはいかないし。一時的な物でしかない。
それと、
「1つ目の方法だといつか僕が『殺人鬼』になるからなぁ」
もちろん矛盾反応のせいである。まあ別になってもいいけど。
「それだけは……絶対に……ダメ……!」
操女が必至な表情で訴えてくる。
? 何だろう? 『殺人鬼』に思い入れでもあるのだろうか。
それとも僕に殺意の体内残響がかかるような超危険な能力を持たせて辛い 思いをさせたくないからだろうか。
何となくだけど、両方な気がした。
とりあえず1つ目は論外。
レンもやめさせてやれと言ってたし。
「2つ目は僕の過去戻しの応用だ。」
「……あっ、そうだね……」
つまり操女に殺意のない、もしくは少ない状況で体に一発拳を突き刺して時間を巻き戻す。
レイヤの時では簡単に小さくなっただけだし、生き返らせた時も単純に死体が生きてた時まで全身を巻き戻したが、実は一部分だけ戻すこともちゃんとできる。
極端なこと言えば全身をグチャグチャにされて、体が小学5年生くらいの状態で戻るところを右腕だけ小学1年生で体は中学生にしたり。刀身も柄もボロボロの刀を体に刺して柄だけを新品同様の状態にすることもできる。
もちろんそれなりに集中力が必要となるが。つかすごく疲労する。
操女の場合だけど殺意の量だけを昔の少ない頃まで戻すのと、操女を小学生の頃まで戻して、『殺人鬼』の闇元素と分離させるの2つのやり方がある。
レンが望んでいるのは多分この方法の後者だろう。
闇元素は人体に入って勝手に定着すると能力が自動で発動するようになると掲示板に書いてあったので、操女が僕と名古屋で会う数週間前まで普通に暮らしていた以上、操女の体に闇元素が入ったのは4年前のことだろう。
その前に戻せばいいのだ。
多分その闇元素はレンによって調整されて殺意以外の体内残響にされて操女か他の非能力者に埋め込まれるのだろう。
少なくとも情報を倒すためには『殺人鬼』が最適な能力だからな。
そして、3つ目の方法はレンに怒られるだろうが、
「そして、3つ目は―――――――」
伝え終え、操女が承諾した直後、殺意が抑えられなくなったのか全力で襲いかかってきた。目論見通りである。
情報の突然の乱入があるとは思わなかったが。
☆ 尾崎家の隠れ家 PM 4:44
「ねぇ~、レン」楽がモニターを見ながらオレに呼び掛ける。
「ん、何だい?」オレはその呼び掛けに即座に反応する。
まあ、一応モニター上では僻実と背負い投げくらった操女が全力で戦い合っているので楽の方を見ないで、モニターの方を見ている。正直楽の方を見ていたいが、――
「レンってヒガミンにアヤをどうして欲しいと思ってるの~?」
ギクッ、
「いや、普通に過去戻しで『殺人鬼』の闇元素を取り出して改良を」
「嘘」
「…………」黙るしかないな。~もないし。
「流石2300年の経験は嘘をつくのをとてもとっても上手にしたようだけど~、私には通じないよ~?」
「…………」
『極楽天使』をナメ過ぎたな。
しょうがない、ここは正直に……。
「本当は……」
「嘘」
「オレまだ何も言ってませんが!?」
そして嘘を吐く気すらなかったぞ!?
「ノリで、言って、みた、だけだよ~」
ふぅ、シリアスなことをすると疲れるらしい。じゃあ、するなよ。
「本当は『殺人鬼』をオレの能力にしたかっただけだよ」
情報を全て殺しきるために。
「……レンは、何度も何度も殺されたんだよね。来世に行くたびに好きな人もまとめて殺されたから……」
僻実に言った何度も関わったという記憶は、全て前世のオレやその好きな人が殺された記憶だ。
蜚廉。
中国の想像上の頭は雀で角があり、胴体は鹿で豹の文様があり、尾は蛇の鳥。
そいつが情報の一員に入ってた。まだ潰される前の情報に。
中国では、その鳥が喋るとは書いていなかったが、喋った。何か不思議な道具や味方のロキやニャルラトホテプの力でも借りたのかもしれない。
――私と同じレンと付く貴様は気に入らない――
たったそれだけの理由でわざわざオレを転生する度に殺しに来た。執拗に何度でも。オレが前世好きだった人も一緒に。
オレ以外にもレンと付く名前を持つ人間などいくらでもいるだろうに。
操女に殺してもらう最後まで、オレを殺す本当の理由は聞けなかった。
ただの気まぐれだったのかもしれない。
明確な理由があったのかもしれない。
どちらにせよもう情報は完全に滅びるまで復讐すると決めている。
だから、オレは情報をこの手で全滅させたい。何度でも転生して。例え、操女の能力を奪ってでも。
まあ、3つ目の選択肢を僻実が選んだせいでその野望は果たせなかったが。
「というか~、闇元素を改良して体内残響を変えるなんて技術はレンどころか~、レンの知り合いも持ってないでしょ~」
まあ、嘘を吐き過ぎてバチが当たったと思うことにしよう。
ゴメン、僻実。
☆ とある部屋 PM 4:48
「さて、こんばんは。影さん、雷さん、狂さん」
オレは、オレの部屋にいる情報3人に向かって言った。
「……何で、私の雷があんたの部屋に繋がっているのよ!」と雷さんが怒鳴る。
うるさいなあ。これだから三次元女子は。スイッチ付けて音量を調節できるようにならないかな。
「あなたは、確か螺旋僻実君のご友人の大山優さんでしたっけ? 何故、どうやって、私達をここへ呼び寄せたのですか?」と影さん。
「…………」狂さんは一言も喋らない。
「ははは。オレも一応友人関係を少しは大事にしてるんでね。その友人が大切なことをしようって時に邪魔をするっていうなら手出ししない訳にはいかないってことです。あと『どうやって』は企業秘密」
まあ、もう既に一回は螺旋に干渉させてしまったようだけど。
オレのやったあの道具がちゃんと役に立っているだろうか。
「? あなたの能力は『侵入者』と言って、ただの情報収集するだけの能力でしょう? そんな力でどうやって私達3人を相手するのですか? まさか死ぬ気なのですか?」
存在すら知られていなかった概念系の能力所有者の影使い。
訳の分からない、『殺人鬼』でも感知できない雷の能力者。
月無さんを暴走させた無言で巨漢の能力者。
3人とも凄く強そうだ。
「馬鹿だなぁ」オレは言う。
「?」
「友人とは言え、今年初めて会ったばかりのヤツを助けるなんて勝算が無かったらやる訳ないじゃん」
もう一つの戦闘が始まった。
☆ 封印された闘技場内 PM 4:48
背筋が冷えるような感覚。過去に感じたことのないレベルの。
常人だったらその場から全く動けなるような本能としての畏縮。
流石に殺意は感じ慣れているからそこまでの状態には陥りはしなくとも、この状況では大した違いはないのだろう。
「■■■■■■■■■■■―――――――!!!」
操女の意思はもう確実に飲まれている。
今僕を襲ってきていないのは、偏に飲まれ過ぎて周りを認識できておらず、結果
綾女の拳が地面を殴りつける。
僕は気化した。
☆ 封印された闘技場内 PM 4:50
「ありえねえ!!!」僕は叫ぶ。
というか、助けてっ、と叫びたい、心の底から。
操女による直接攻撃ではないので難なく5秒後に回復したら、アナザーコロンアムも無事では済まなかったようで……、というか次元の穴らしきものが発生しているんだが。
綾女の拳はもう既に核爆弾の威力を軽く超えている。
そして、叫んだ僕に気付いた操女は、
ニコォ、
極上の今まで見たレベルを遥かに超えたとても可愛らしい笑顔。
(作者からのお知らせ。主人公は死にました)
☆ 2月14日のこと
「おい、螺旋」大山に後ろから呼びかけられる。
「ん?」僕は普通に歩みを止めて振り向いた。
普通に大山がいた。
ここは、丸日丘中学校の南校舎と北校舎を繋ぐ渡り廊下。
高校校舎にある図書館に行くためには必ず通る場所。
周りに偶然なのか人が誰もいない。
2月14日。騒動から逃げるために図書館へ向かっていたところで大山に呼び止められた。ちなみに、今は休み時間でも放課後でもない。授業が成立していないのだ。
「何か用があるのか? 一緒に図書館行こうってこと?」
言ってみて気づくが、普通に失礼な聞き方じゃないだろうか。
それに気分を害した様子もなく、大山は
「いや、ちょっと渡すものがあってね」
…………。
まあ、絶対あり得ないのだが、今日は2月14日でヴァレンタインだからチョコを渡されるのかと思ってしまう。
ちなみに大山は性別はちゃんと男です。顔は女装しても大丈夫な感じの女顔だが。
絶対違うだろう。
「最近よく渡し物されるなあ」
今朝は操女と楽に不吉なものを渡されたし、ちょっと前には四次元栞をアクマに渡され、レンからは……を渡され、香山大魔神からは毒薬を渡すと言って無理に飲ませれ、次は大山か。
「んで、渡す物って何だ?」
「これ」大山はポケットから何かを取り出す。
チョコだった。チョコレイトはめ・い・じの板チョコだった。
「…………」
「受け取れ」
…………。
どうしろと!? 正直め・い・じを入れ替えてい・じ・めにしたい!
神よ! 愚かなる私にこれの対処法の知恵を!
「何か勘違いしてないか? まあ中身を見ろって」
「……チョコじゃないよな?」
チョコはホモと変換してもよい。
「そんな物渡す訳ないだろ。ちょっとしたカモフラージュ」
「ふぅん」
中から出てきたのは――――――
☆ 封印された闘技場内 PM 4:36
「そして、3つ目はコレだ」
僕は@と書かれた札から大山から渡された曼殊紗華の花を取り出した。
「それって……、普通の花じゃないの?」
「うん。まあ、僕も最初そう思ったんだけどね。どうも仏教の想像上の花である四華のうちの1つらしいよ」
詳しいことは知らないが。
確か法華経という仏教の一派の考えで、その法華経が説かれた時天から降ってくる花の1つとか。
「んで、この曼殊紗華は見る者の心を柔軟にするんだとさ」
そっちの方はどうでもいいけど。
「ラルと1ヶ月前に見かけた浮浪者の男の人が絡み合ってるのが見える……」
「柔軟になり過ぎだ! そんなことマジメな顔して想像しないでくれ! というか謝れ!」
まあ、冗談言い合えるだけいいけどさ。
さっきまで殺されかけてたし。
「ごめんね……」
「なんでタイミング良く謝れるかな……」
というかBL妄想と殺そうとしたことのどっちを謝ったんだろう?
「BLはともかく、殺そうとして本当にごめんなさい…」
涙を流しまくっているところ悪いけど、BL妄想については謝ってくれないんだな……。
流石にKYの俺でも今回ばかりは言わないけど。
「……その花をどうするの…? 何か特殊な効果でもあるの…?」
「彼岸花っていうのは曼殊紗華の異称だよね」
「……え? あっ、うん…」
いきなり質問の答えとは思えないようなこと言われたから戸惑ってしまったようだ。
「彼岸っていうのはこの世とあの世の間にある河の向こう岸の意味を表し、つまり彼岸花は死者の花ってこと。死人花とも幽霊花とも呼ばれている」
「・・・そうだね」訳が分からないまま僕の言葉に答える操女。
さっさと答えを言おうか。
「この花は死者を生き返らせることもできるっていう意味。使い捨てだけど」
「…………!」
操女は見開く。
それはつまり、操女がこの後、僕を殺しても1回は生き返らせることができるということだからだろう。
さて、
「操女、これを君が持て」
「え……? 私が……?」
「当たり前だろ? 死んだら僕には使えないし」
嘘だけど。
大山からの説明では、他者にこれを使うことはできないし、死んだ時に、それを持っていたら生き返るということだから。
「だから、今から1回、僕を純然たる殺意を持って殺して」
「…………」
「僕の能力はポ、大山の話によると死ぬ時に1つ願いを叶えられるそうなんだ。死なない以外のね」
これは本当。ちなみに、その花持っていたら発動しない。
「そうなの……?」
「最弱不滅の漢字はともかく、ブレイクカウンターの横文字は死を数える(カウンター)という意味は、一応ロキのおフザケっていう訳じゃなくて、その能力所有者が人生で死んだ回数に相応しい願いまで叶えられるからだってさ」
まあ、寿命によって死ぬことができるから成立する能力だ。
「分かった……。ラルは私のために1回死んでこの状況を変える願いをする気なんだね…」
「ああ」流石、神山女子生徒。頭の回転が速い。
そして、彼女の返答は、
「……嫌です……」
はっ?
操女はとても辛そうな顔をして言った。
「何でだよ!」
どうしてそこで断るんだ! まさか僕の嘘に気づいたのか?
「私は……もう人を…、ラルを……殺したくないの…。例え後で……生き返る……なんて言っても……」
「ぐっ、でも昔からよく殺してたんだし……! 今さらそんなこと言うなよ!」
僕みたいな疫病神は今ここで死ぬのが一番良い。
読みたい本とか友達とか未練はあるけれど、そんなことよりも僕がいなくなった方がずっとみんなにとってマシなのは分かってるんだから。
僕がここで死んでも全て自業自得なんだから。
お願いだから殺して欲しい。
「そんな……こと簡単には……割り切れないよ……。ごめんね……。私が……ここは死ぬべきなんです……。こんな殺して殺し過ぎた私に…………。今更救いなんて……、あるべきじゃないから……」
…………。
「うるさい!」
僕は怒鳴った。
「ひぅ……!」
そして、操女は黙りこくる。
「それだったら昔の天皇だろうが将軍だろうが、外国の王様の方がずっと殺してるよ! オレなんて、確かあの情報達に誘拐されたらあるもの復活で世界崩壊だぞ! 1回死んだ方がいい経験になるわ! それに!」
僕は操女の両肩を思い切り掴む。
「はいぃ…!」
「その能力を持ってんのはお前の責任じゃないし! 実際みんなの役には立ってはいるんだ! オレなんかクソの役にも立たない能力だ! ちっとくらい暴走したからって、楽もレンも責めたりなんか1度もしてねぇよな!」
「…………」
「いいからオレを信じて1回殺せ! それでお前の暴走はほぼ確実に消えるんだろ! また会えるんだから心配するな! いいな!」
「…………はい……」
まあ、信じろとか言っといてまた会えないという嘘を吐いてるんだけど。
「んじゃあ、今度こそ、」
僕は立ち上がって操女から5m程距離を取る。
離れ際に曼殊紗華を操女の髪に引っかかるようにして差す。
いつか操女の命を救ってくれ。
操女も立ち上がる。
その瞳が真紅に変化し出すのを見てから、僕は言う。
「戦闘を始めよう」
☆ 大山の家 1月17日のこと PM2:24
「絶対に殺すという概念の能力っていうのは本当なのかな?」
オレ――大山優は、自室で目の前に初対面の月無さんに言った。
「…………そうです……」
「ふうん。体内残響が殺人衝動なのも本当かな?」
続けて聞く。
「はい・・・」
「じゃあ次に、」
オレは一旦そこで言葉を区切り、
「――――――――――――というのも本当かな?」
「…………知りません……」
おや、
「自分のことになのに?」そんなことあるのか?
「……はい…」
そうか。違うじゃなくて、知らないと来たか……。
まあ、いいや。とりあえず、
「んで、螺旋とはいつ殺し合うの?」
オレは聞いた。
「どうして……それを…?」
「ちょっとした予想だよ。そのうち殺意が止まらなくなるんじゃないかと思ってね」
それに、おそらくオレの予想では、アイツ以外目の前にいる人外の暴走を止められるヤツはいないだろう。
「当たりです…」
「なら、オレはその時に備えて何か螺旋にあげた方がいいかもね。というかアイツ殺す気なのかな? 月無さんは」
「殺しません!」
いきなり怒鳴られた。…が無いから少しビビった。
「まあ、それならいいよ。予言能力でそれは決まっていることなんだよね?」
「はい……」
予言されたことなら仕方はないか。
ああいう能力は何々する、までは言うけど、結果は何々であるとまでは言わないからなあ。神が人のあんまり運命を切り開かれたら困るとか言って。
古○梨花ちゃんが泣くぞ。
まあ、精々援助しておこうか。
あっ、そうだ。アイツに押し付けられた曼殊紗華でも押し付けとこう。使い方によっては役に立つだろう。
アレは半径5キロ以内の人間をまとめて殺す此岸花だったけ。
螺旋には黙っとこう。一応は1時間後に生き返るんだし。
☆ 不明
●おやおや、珍しい。あの不死の能力者がこんなところに寿命でもないのに来るなんて●
「ん?」
声が聞こえる。
というかここはどこだろう。
どこを見渡しても真っ暗というか真っ黒なんだが。
本当に何も見えない。自分の体すら見えない。
●あんまり深く考えるなよ。所詮作者の都合で適当に作られた空間なんで●
また聞こえた。
「ここはどこなんだ? というか適当にって……」
僕が言う(?)と、
●記憶が混乱しているのか? まあ、どうでもいいけど。ここはどこかと言えば、……そうだね……。どこでもないが、一番正しいかな●
「は?」
言っている意味が分からない。
●まあ、理解しなくても別にいいよ。強いて言うなら紙としか言えない。上でも中でも下でもないけど。どうせ訳が分からないなと思って納得するように、君の作者が設定しているから無駄か●
「…………」
理解はもうとりあえず放棄しよう。
どうして今ここにいるのか過去を振り返る。
一番最近の記憶では操女と戦って……、
「もしかして……、僕は死んだのか?」
思いついたことをそのまま言ってみる。
●ああ、うん。それで合ってるよ●
すげぇ、あっさりだな。おい。
「操女がすごく可愛く笑ったところまでしか思い出せないんだけど……」
●そこらへんのことは知らないけど……。まあ、がんばって思い出せば?●
「…………」
淡白だ。
しかし、死んだら無になって何も考えられなくなると思ってたけど、こんな変な所に行くことになっているのか。
「あっ! 僕の願い叶えてもらってるのか分からない!」
死んだ数に比例して叶えられることお度合いが決まっていると聞いてるけど、操女の体内残響は無くなったのだろうか?
●ああ、そこは心配しなくていいよ●
「何でそんなこと分かるんだよ!」
つか、聞き損ねまくってたけど、
「お前は誰だ?」
●お前呼ばわりは酷いな。初対面なのに●
「……あなたは誰ですか?」
●オレはお前らが全と呼ぶものだ。あるいは一……●
「ハガ○ンファンなのはよく分かったからまともに答えろ」
●ははは。すまないね。ギャグ好きと設定されているから。まあ一言で言うなら、●
「何だ?」
例のごとく設定とかの言葉については無視。
●願いを叶える者だよ●
「…………」
●そして、私はまだあなたの願いを聞いていない●
「…………」
●あなたの願いを死からの逃避以外の全てを聞き入れましょう●
「…………」
●どれだけの途方もない願いでも、どれほどのくだらない願いでも叶えましょう●
「…………」
●夢も希望も絶望も状況も正義も悪も感情も感動も衝動も正解も間違いも力も過去も現在も未来も概念も時間も空間も生も死も原因も結果も法則も矛盾も世界も異世界も幻想も色彩も音色も匂いも味も感覚も絶対も相対も究極も最強も最弱も最善も最悪も最初も最終も刹那も永遠も生きとし生けるもの全て、死にとし死せるもの全て、それらを包む何もかもを一度だけ変えてあげましょう。あなたはそれに合うだけの死を見てきた。感じてきた。学んできた。臨んできた●
「…………」
●願いを聞きましょう●
僕は願った。
次回クライマックス!




