説明
説明回なのでセリフ中心。
「ーーーーまずはこの世界についてだ。」
そう言うとアリエラは二枚の白紙を取り出すと、一枚目に円を二枚目にはそれの半分の大きさの円を描いた。
「この世界は三つの大陸に区分されている。最初に人間が住む大陸『オルデゥア大陸』。」
一枚目に描いた円の左側に半月になる数日前の状態の三日月を描いた。
「オルデゥア大陸は三つの大陸の中でも二番目に大きく、人間や獣が住む恵み豊かな大陸だ。オルデゥア大陸で最も勢力が強いのは……レイナー?」
「『ガルランド帝国』ね。」
レイナーの答えに満足したのか若干嬉しそうな表情でアリエラは頷きながら三日月の3分の2ほどをペンで塗り潰した。
「今塗り潰した範囲がガルランド帝国の領地だ。この帝国は勇者召喚もやっている。魔王軍と小競り合いを繰り広げているのもこの帝国だ。
次は今私達がいる大陸『マカドーラ大陸』。」
アリエラは残った円のスペースに周りの線から離して一回り小さい大きさで円のスペースと同じ形を描いた。
「マカドーラ大陸は魔族、魔物が縦横無尽に生息し、魔王によって統治されている。狗零、現魔王は?」
「え~っと……『マルゲリータ三世』だったっけ?」
狗零の回答に全員がずっこけた。
「……そんな魔王がいるなら見てみたいよ。『ヴォーティウス・ヴァルヴァント』だ。自分と戦う魔王の名前ぐらい覚えたらどうだ?」
「ハハッ、ワロス。」
「「「真面目にやれ(しろ・やりなさい)。」」」
三人が狗零を見る目は完全に呆れていた。
「……もういい。次にいこう。
そして三つ目の大陸がこの余った小さな島『ギニャー島』と天に浮く通称天界と呼ばれる島『パルレイ島』を合わせた『シャンドラ大陸』。」
アリエラは円の右端に余った小さな円と二枚目の円をペンで塗り潰した。
「ギニャー島にはパルレイ島に繋がる唯一の道、天空の塔が建てられているだけで何もない。パルレイ島には神々、天使、天人等が思い思いのままに生きているらしい。こればかりは実物を見たことがないのでな。」
そう言いながらアリエラは足跡で描いた地図をしまった。
「ーーーーさて、次は勇者などといった存在についての説明だ。
勇者や魔王とはな、天界に住まう神々がつくりあげた言うなれば神々を代表する者達の総称だ。
勇者が光を、魔王が闇の神々を代表して激突するーーーーいや、言い方が悪かったな。勇者が陽の神々、魔王が陰の神々を代表する。
勇者と魔王が戦い、どちらが勝利するかでこの世界の数年間の陰陽の傾きをはかった。つまりは大規模な占いだった。」
淡々と喋るアリエラの表情は先ほどとは違って無表情。それが狗零達に言いようのない不安を与える。
「……『占いだった。』ということは今は違うのね?」
そう尋ねたのはレイナー。それにアリエラは静かに頷いた。
「ああ。現在は人間と魔族の両方が原初の目的を見失い、ただお互いの領地を侵略せんがために争う。そして人間達は異世界から勇者を召喚するという禁忌さえ犯しはじめた。
はっきりと言おう。この戦争にどちらが勝利しようとも何も変わらない。」
アリエラの言葉に狗零達三人は力強く頷いた。
「どちらが勝利しようとも何も変わらないのであれば、第三者が勝利することで変える。
私の作戦はこれだ。私達が直接魔王と人間を打ち倒す。」
次の瞬間、狗零達の表情が驚愕に変わった。それほどまでにアリエラの作戦は有り得ないことだったからだ。
それと同時に狗零はアリエラの言いたいことを理解した。
「だが、魔王は私が打ち倒さなければ意味がない。何故ならお前は勇者だからな。お前が魔王を倒すわけにはいかない。故に狗零、お前に問おう。
お前はお前の味方だった人間に、その剣を向けられるか?」
混沌に包まれた奈落の果て、ソレは静かに目覚めを待つ。ソレが求めるものは生贄。自らを降臨せしめんとする愚者。
そしてまた、ひとりの愚者が扉を開ける。
ソレはたった独りで歓喜に震えながら舌なめずりをする。
目覚めは、近いーーーー