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出会い

 松明の不気味な明るさに照らされた廊下を四人の男女が歩いていく。先頭を歩くのはこの城の主のアリエラ。

 彼女のすぐ後ろを歩くのは白い鎧とマントに金色の髪と瞳の青年。その腰には見ただけで業物と判断できるほどの片手剣をさしていた。

 彼について行くのはアリエラと同じように黒い尖り帽子とローブを着て、先端に青い宝石を装飾した杖を持っている。水色の髪に透き通るような青い瞳が特徴的な女性だ。

 もうひとりは白い長髪を頭の後ろでリボンで結んだポニーテールに紅い瞳。白のシャツと赤い長ズボンという格好をした女性。

 四人は会話することもなく歩き続け、やがて廊下の突き当たりにある部屋の扉を開けた。


 アリエラは部屋の奥に鎮座する玉座に座ると、ようやく口を開いた。


 「ーーーーさて。はじめまして、といったところかな?私がヴァレン城の主のアリエラだ。」


 その言葉を聞いて青年が一歩進んで声を出す。


 「俺は藤村(ふじむら)狗零(くれい)。この世界に召喚された勇者だ。一応だけどな。」

 「一応……?」


 狗零の発した言葉にアリエラは疑問を抱いた。疑問に思ったのなら即座に尋ねる。これが彼女の性である。


 「役に立たないっていう理由で見捨てられかけているんでな。……まっ、魔王討伐を今までしようともしなかったから当然の判断だが。」

 「ほう。」


 続いてアリエラと似たような格好の女性が喋りだす。


 「私は狗零のパーティーの魔法役のレイナー・キィ・フォルス。狗零の召喚に立ち会った縁で仲間になったわ。

 私のこと、貴方ならご存知じゃないかしら?」


 レイナーの問いかけにアリエラは詰まることなく答える。


 「ああ。『氷河の魔女』の噂は魔王軍でも有名だからな。私はそこまで気にはしなかったが、相当だな。魔王軍と自軍の隊一つ丸ごと凍結するとは……。」

 「……あれは私の黒歴史ね。」


 アリエラの返答に気まずそうな表情でレイナーは呟いた。

 彼女が沈黙した後、最後の女性が口を開く。


 「……(くれないの)(ほむら)。“幻獣種”『不死鳥』の生き残りだ。」


 焔の言葉にアリエラは一瞬だけ驚きの表情を露わにした。

 “幻獣種”とは亜人と呼ばれる生命の一種であり、『竜』『麒麟』『鬼』といった伝説上の魔物の血を引く獣人のことだ。しかし、“幻獣種”はその希少性から人間達の狩りによって『竜』以外は滅んだと伝えられている。その『竜』も絶滅寸前とのことだったが、よもや『竜』以外の種族が生存していたなど思いもしていなかった。


 「……驚いた。まさかこの目で“幻獣種”を見れるとはな。」

 「わたしが人間共に捕まらなきゃ見ることはなかったんだろうね。」


 そう言いながら懐から煙草を取り出してくわえて火をつけようとしたところでアリエラが制止の声を上げる。


 「すまないがこの部屋は研究室も兼ねていてな。煙草は遠慮願いたい。」


 アリエラの言葉を聞いて焔は慌てて煙草をしまった。


 「……悪かった。」

 「いや、説明しなかったこちらにも非がある。気にしないでくれ。」


 素直に謝る焔にアリエラは若干戸惑いながらも返事を返す。

 狗零はその様子をじっと見ていたが、アリエラの方に向き直ると再び口を開いた。


 「……で、俺達がここに来た理由だが。直結に言う。このーーーー」


 そこで狗零は一呼吸間を空けて次の言葉を発した。


 「ーーーーこの戦争を終わらせたい。協力してくれ。」



 歯車は廻りだした。止まることはなく、壊れるまで廻り続ける。

 ーーーー賽は投げられた。

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